
小正月(1月15日)、各地でどんど焼きが行われました。どんど焼きは、お正月飾りなどを持ち寄って燃やすことにより、無病息災などを祈る習俗です。地方によって呼び名は違いますが、今でも広く行われています。
記者の地元でも、どんど焼きが行われ、地域の人たちが集まるネットのコミュニティには、現地の写真が投稿されていました。
その中で気になったのが、「なぜか国旗が」という写真を投稿した人の発言でした。確かに写真には、燃える炎の中に、小さな日の丸が見えました。「思想的なもの」「気分が悪い」という人もいれば、「古くなった国旗は、ゴミに出すよりもどんど焼きで燃やすことが多いです」という人もいました。
日本の国旗だけでなく、世界各国や地域の旗は、大切に扱われています。外務省の公式サイトにも、「国旗は国の象徴であり、国旗に敬意を表することは国際社会の基本的なマナー」と明記されています。
しかし、一方で汚れてしまったり、古くなってしまった国旗の取り扱いについては、あまり知られていません。どうするのが望ましいのでしょうか。
●破損、汚れた国旗はマナー違反まず、記者の地元のどんど焼きで焼かれていたという国旗ですが、写真をよく見ると大きな布ではなく、小さな紙製のようでした。正月飾りについていたものではないかという指摘もあり、思想的なものという感じはしませんでした。
外務省の公式サイトには、「国旗の取り扱いの基本」として、「破損、汚れた国旗の掲揚」「雨天・日没後の掲揚」「国旗と団体旗の併揚」は原則として行わないとしています。これ以外にも、複数の国旗を掲揚する場合はどうするのか、卓上に国旗をどう配置するのかなど、細かく定められています。
こうした国旗に対する取り扱いは、法律で定められているわけではありませんが、「国際儀礼」(プロトコール)と呼ばれており、国家間の儀礼上のルールとして用いられています。
こうしたプロトコールが基本となり、一般の人にとっても、「破損、汚れた国旗の掲揚」はマナーに反すると知られています。
●お焚き上げで処分するのがマナー一方で、古くなってしまったり、破損や汚れのある国旗についてはどうしたら良いのでしょうか。外務省の公式サイトなど、公的機関で情報発信しているところはないようでした。
そこで、日本の国旗をはじめ、世界の国旗の製作を手がける東京製旗株式会社(東京都墨田区)に聞いてみました。同社は1937年に創業した老舗で、国旗を作り続けてきました。
「国旗について公的機関からの処分推奨方法は聞いたことがありません」
そう話すのは、小林達夫社長です。ただし、こうも教えてくれました。
「神社やお寺にお焚き上げで古い国旗の処分をお願いするということが、一般的なマナーのひとつとされているようです。お焚き上げの代金は、神社の場合は『初穂料』または『御焚上料』、お寺の場合は『お布施』と記載して特別に奉納するようです」
記者の地元であったように、どんど焼きでお焚き上げされることもあったようです。どれが「正解」かはわかりませんが、小林社長は「国旗に敬意を持ち、丁寧に取り扱うことは大切です」と言います。
外国の国旗であっても、日本の国旗であっても、最後まで丁寧に扱いたいですね。
●もしも国旗を損壊したら?なお、プロトコールやマナーとしてだけでなく、国旗の取り扱いには一層の注意が必要です。
外国に対する侮辱を目的として、外国の国旗を燃やしたり破ったりした場合、刑罰に問われる可能性があります。刑法92条に「外国国章損壊等罪」が定められており、2年以下の懲役または20万円以下の罰金となります。
日本の国旗については適用されませんが、他人が所有する日本の国旗をライターで燃やした事件で、器物損壊罪(刑法261条)などに問われた裁判例はあります。
器物損壊罪は、3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料となっていますので、場合によっては「外国国章損壊等罪」よりも重くなる可能性があります。

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