
アメリカ、イリノイ州で凍えるような寒さが厳しい冬の朝、1匹の犬が必死の思いで見知らぬ人の家に助けを求めにやってきた。犬は裏口で鳴きながら、ドアを開けてもらえるのをじっと待っていた。
家で留守番をしていた娘たちは犬の鳴き声を耳にし、監視カメラ映像でその存在に気がついた。母親に電話で相談し、ガレージの中に入れてあげることにした。
犬は氷点下の寒さに耐えきれなかったようで足は凍傷寸前だった。この家の人ならきっと助けてくれるという犬の直感は間違っていなかったようだ。
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見知らぬ家の前で助けを求めた犬
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犬が現れたのは、アメリカ・イリノイ州のイースト・セントルイスにある民家だった。犬はピットブルの雑種のオスで、しばらく極寒の街をさまよっていたのだろう。寒さに震え、助けを求めるように鳴き、裏口のドアをじっと見ていた。
この家に住む母親は仕事中だったが、留守番をしていたティーンエイジャーの娘たちが犬の存在に気が付いた。
娘たちは「犬が中に入れて欲しそうにしているの。この犬を助けてあげるにはどうしたらいいの?」と母親に電話で相談した。
母親は、娘たちにガレージを開けて中に犬を入れる許可を出した。彼女たちは犬に毛布やタオルをかけ、温かい食べ物を与え、自分たちの飼い犬のオモチャを差し出した。

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保護施設が救助に向かう
娘たちは母親の指示通り、動物保護施設、ゲートウェイ・ペット・ガーディアンズ(Gateway Pet Guardians)[https://gatewaypets.org/]に連絡した。
連絡を受けたジルさんとそのチームは、すぐに少女の家へと向かった。犬はとても清潔で、立派なハーネスを身に着けていたことから、元々は室内で飼われていた可能性が高いと考えられた。
ジルさんらは犬を保護施設へ連れて行き、一晩ゆっくりと休ませることにした。
翌日、犬は施設のスタッフたちと一緒に過ごすことになり、彼らに「アドビ」と名付けられた。
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ジルさんは「アドビは本当にフレンドリーでとても良い子。私たちに感謝している様子だった。暖かい場所で、誰かに見守られていることがわかって安心しているようだった」と振り返る。

ジルさんによると、アドビはもしあと1日か2日発見が遅れていたら、命の危険にさらされていた可能性があったという。
寒さが厳しく、地面は雪と氷に覆われており、アドビが暖を取る場所はほとんどなかった。
保護されたとき、彼は激しく震え、足先や顔は赤くなっており、凍傷の一歩手前だったという。
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長年動物保護活動をしているジルさんでさえ、「今まで見た中で、これほど寒さでダメージを受けた犬を見たことがない」と語っている。

迷子犬?だがマイクロチップもタグもなし
アドビの様子から、ジルさんは「きっと誰かに飼われていた犬が迷子になったのだろう」と考えた。ハーネスも付けていたし身ぎれいなうえに、彼には野外で生き抜く本能的なスキルがまったく見られなかったからだ。
保護施設では、飼い主を見つけるためにあらゆる手段を尽くした。
アドビにはマイクロチップも身元を示すタグもついていなかったため、チラシを作成し、地域の迷子ペットの掲示板やSNSで情報を拡散した。

飼い主が現れず、新たな飼い主を待つことに
だがそれから数日経っても飼い主からの連絡はなかった。もしかしたら極寒の中で捨てられた可能性もある。
そこでジルさんたちはアドビの未来を考え、新しい家を探す方向で動くことにした。現在は、一時的に預かってくれる仮里親、もしくは永遠の家族になってくれる里親を探している。
ゲートウェイ・ペット・ガーディアンズは、「アドビは本当に愛らしい犬で、その大きな頭と魅力的な表情は誰の心も溶かしてしまう」とコメントしている。
「アドビは真のサバイバー(生存者)よ。彼がこれから新しい家で幸せに暮らせるよう願っている」と、保護施設のスタッフは語る。
アドビがなぜあの家を選び、じっと助けを待っていたのかはわからない。でもその選択は正しかった。それが自身の命を救う結果となったのだから。
アドビの第二の犬生はこれからだ。暖かい家と優しい人々に囲まれた幸せな家族と巡り合える日が来るよう、心から願っている。
ピットブル系は何かとトラブルと関連付けられ敬遠されてしまうこともあるが、きちんと飼い主が愛情をもってしつければ、やさしい心と強い力で、家族のために尽くしてくれる。

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