昨年2月に神奈川県相模原市の自宅で両親を殺害したなどとして殺人と窃盗の罪に問われた少年(16)の裁判員裁判は2月6日、横浜地裁(吉井隆平裁判長)で証人尋問があった。

事件後に少年に聞き取りした専門家は「適切な処遇が選択されればかなりの効果がある。失われた児童期、思春期を再構築することが必要だ」と見解を述べた。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)

●元家裁調査官への証人尋問

この日は証人として、元家庭裁判所調査官で大学名誉教授の男性が出廷した。

証人の男性はこれまで、情状鑑定で少年に計13回面会したといい、事件に至った背景や両親との関係、少年に今後必要な対応について考えを述べた。

男性は少年の両親について、「父と母で虐待のタイプが少し違う」と指摘し、「母は殴る蹴るといった暴力はないが、愛情を与えることを少し怠っていた」と説明。

少年の生育歴が事件に与えた影響については、「児童期に受けた虐待的経験が犯行に大きな影響を与えている」と話した。

●「少年院の方が密度の濃い処遇」

裁判では、少年を少年院送致などの保護処分にするか、少年刑務所で服役させるかが争点の一つになっている。

これについて証人の男性は、少年の立ち直りに向けては「事件が重大であることを受け止められる自己をつくることが重要だ」とし、そのうえで「心の専門家からの手助けが絶対に必要だろう」と話した。

少年院と少年刑務所の違いに関しては、「少年院の方が密度の濃い処遇をしている」「少年刑務所では被告人と同年齢の人はおそらく少なく、グループワークなどをするとしても限界がある」などと説明し、少年院の方が少年の更生につながる可能性が高いことを示唆した。

●検察官は少年の証言の信用性を追及

少年が受けた虐待の実態をめぐって、今回の裁判では両親が亡くなっているため、少年の証言が大きな鍵を握っているといえる。

検察官はこの日の証人尋問で、証人の男性に少年の話の信用性を判断するための質問を投げかけた。

少年は母について「よく酒を飲んでいた」と話していたが、現場検証調書では自宅の冷蔵庫に酒が1本も入っていなかったことが確認されたという。これについて問われた男性は「知りません」と答えた。

また検察官は、事件前に少年がコンビニで万引きしたことについて交際相手に事実と違う説明をした可能性があることを質問すると、男性は「嘘をついたとすれば、それは相手のことを思いやった嘘だと思う。被告人が打算で嘘をつく印象は持っていない」と述べた。

2月10日に論告

起訴内容によると、被告人の少年は当時15歳だった2024年2月10日、自宅で父親(当時52歳)を刃物で多数回突き刺し死亡させ、その後帰宅した母親(当時50歳)も首を絞めたり刺したりして殺害した。

また、事件前の2月6日と同10日に相模原市などのコンビニ2店でおにぎりやペットボトル飲料などを万引きしたとして、窃盗罪でも起訴されている。

2月10日に論告が実施される予定。

相模原・両親殺害16歳少年 証人の元家裁調査官「児童期の虐待的経験が犯行に大きな影響」