
日本初演ミュージカル『ヒーロー』が2月6日より幕が上がる。
トラウマを持ちながらアメコミ漫画家を目指す主人公のヒーローが別れや周りの人々との交流を通して奇跡に気がついていく、心温まるオリジナルミュージカルだ。
初日を翌日に控えた2月5日に行われた囲み取材とゲネプロの模様をレポートする。
漫画家志望のヒーロー・バトウスキーは父親と二人暮らし。ウィスコンシン州のミルウォーキーに実家のコミックショップで働いていた。実は、高校卒業の際に起こったある出来事がきっかけで心が折れ、前に進めずにいたのだ。そんなある日、高校時代のガールフレンドのジェーンと再会。当時は気持ちがすれ違っていたが、誤解を解いた2人は再び仲を深めていく。さらに、勇気を出して出版社に送った自身の漫画に契約の話が舞い込む。順風満帆の幸せな日々がこのまま続くかのように思われたが……。

ゲネプロ前の会見には主人公のヒーロー・バトウスキー役の有澤樟太郎と、ヒロインのジェーン・フォスターをWキャストで演じる山下リオ、青山なぎさが登場した。
まず、初日を控えた今の気持ちを問われると、「リハーサルも追えて、ゲネプロ前なんですけどやっと実感が湧いてきた」と有澤。
「緊張してるんですけど、しっかり稽古できましたし、なにせ演出の(上田)一豪さんが素晴らしいです」と力を込める。これまでにも上田と仕事をした経験がある有澤だが、「こういう人間ドラマを描く作品というのがやっぱり一豪さんには合っていて。ミルウォーキーの話ということで、自分たちに馴染みのないような習慣や雰囲気を全身全霊で伝えてくれています。不安だったところも、むしろ楽しみにさせてくれるというか。そういう稽古場作りを今回やってくださった」と振り返った。
ミュージカルには3度目の出演となる山下は「今までファンタジーものが多かったので、こういう等身大の現代ものは初めて」と言い、「難しいな、と思う部分も多かったんですけど、有澤さんがおっしゃる通り、一豪さんがいい稽古場作りをしてくださったので、2ヵ月の稽古期間は長いと思っていたんですけど、あっという間に明日初日で。とにかく楽しみつつ、いい作品になると思っているので頑張りたい」と意気込みを見せた。
そして、今回初めてヒロイン役を務める青山。最初はすごく緊張していたと言い、「稽古場でガチガチだったんですけど、本当にカンパニーの皆様が優しくて。私がどこに行ったらいいんだろうって顔をしいてたら積極的に話しかけてくださったり。それこそ演出の一豪さんもおもしろい動きをしながら、いろいろ私に教えてくださったことで、心がほぐれて、楽しく稽古をすることができました」と振り返った。

また、公開されているムービー「That’s My Kryptonite」にちなみ、3人に弱点を問う場面も。
まず、青山は「寒さに弱い」と回答。「真冬の稽古ということもあって、いつも稽古場では多分誰よりも暖かい格好をしつつ、さらにカイロを体のいろんなところに貼っているぐらい、寒さに弱いです」と明かした。
山下は「ミュージカル」と答え、有澤や青山を驚かせた。「やっぱり映像の畑の人間だと思ってるので、自分にとってはいつも挑戦だと思う。だからお仕事の中ですごく弱点だなって思ったりします」。ただ、「大丈夫、毎回克服していますから!」と力強く付け加えた。
そして有澤は「影響されやすいところ」と回答。「弱点でもあり、いいところでもあるんですけど、うまくいかないな、と思ったときは落ち込むし、逆に楽しいときは明るくなる。分かりやすいのでちょっと隠していきたい」とはにかんだ。
最後に観客へのメッセージとして、有澤は「本当に自信作になったと思っています。個性的なキャラクターも多いんですけど、みんな自然体で役に入れるように稽古を重ねてきました。僕もヒーローとして最後に救われる話にもなっています」と自信を見せ、「前に進みたくても進めない人はたくさんいると思うんですけど、前向きになれる作品だと思っていますので、ぜひご来場お待ちしております」とアピールした。
人が支えられ、前を向く物語

舞台上はセットもポップだが、有澤が「人間ドラマを描く作品」と言っていたように、ネガティブな様子にハラハラさせられることもあれば、俯き、立ち止まりそうになる様子も描かれている。特に、主人公・ヒーローはどこか自分のことを諦めているような様子が見受けられた。それが、父親のアル(佐藤正宏)やいとこのカーク(寺西拓人/小野塚勇人)らに励まされ、背中を押され、少しずつ前向いていく。


また、ヒーローとジェーンのどこか甘酸っぱさが感じられる恋の行方が気になる一方で、カークとスーザン(宮澤佐江)の情熱的な恋からも目が離せない。相対するような恋の描き方がまた物語を加速させている。


漫画家志望だというヒーローを現すかのように、作中のあらゆるところに絵やマンガが演出に組み込まれているところも興味深い。
俯きがちだったヒーロー。このまま、全てがうまくいく。そう思えた矢先に降りかかる困難にどのように立ち向かっていくのか。
平凡な人生のように見えて、山も谷もあるヒーローの人生。ぜひその様子を見守ってみてほしい。




取材・文:ふくだりょうこ
<公演情報>
ミュージカル『ヒーロー』
脚本:アーロン・ティーレン
作曲・作詞:マイケル・マーラー
翻訳・訳詞・演出:上田一豪
出演:
ヒーロー・バトウスキー:有澤樟太郎
ジェーン・フォスター:山下リオ/青山なぎさ(Wキャスト)
カーク:寺西拓人/小野塚勇人(Wキャスト)
スーザン・シュミッティ:宮澤佐江
ネイト:吉田日向/木村来士(Wキャスト)
アル・バトウスキー:佐藤正宏
テッド:田村良太
カイル:西郷豊
木暮真一郎 高倉理子 髙橋莉湖
日程:2025年2月6日(木)~3月2日(日)
会場:東京・シアタークリエ
チケット情報:
https://w.pia.jp/t/musical-hero/

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