
住宅価格は上がり続け、今や一戸建ては高嶺の花。そんな時、土地代を支払わずに家を手に入れられる話が舞い込んだとしたら、どうでしょうか。今回は「二世帯住宅」に住むという条件で、憧れのマイホームを手に入れた主婦の「思わぬ後悔」をご紹介します。
明るく優しい義母から「二世帯住宅」購入の提案
松本えりこさん(仮名・39歳)は小学校5年生と2年生の子ども2人を育てる主婦。時短勤務で9時から16時まで働き、帰宅後は子どもの世話や家事をする、多忙な日々を送っていました。
子どもが熱を出したりしたときに、夫は自分以上に多忙、実母は遠方に住んでおり頼ることは難しい状況でした。そんなときに快く手助けをしてくれたのが、義母の真理子さん(仮名・67歳)です。
車で10分ほどのところに住む義母は「暇だから、いつでも頼ってね」と快く面倒を見てくれ、えりこさんは日頃から感謝していました。世間で言われるような“嫁と義理の母の争い”などとは無縁で自分はラッキーだと考えていたのです。
そんな折、えりこさん一家と義母・義父が外食に出かけたときに、こんな提案をされました。
「もしよかったら二世帯住宅で暮らさない?」
話によれば、義母と義父が住む家は築35年以上経ち、リフォームを考えているとのこと。それでもいいけれど、二世帯住宅に建て替えれば子どもの手助けももっとしやすくなるし、自分たちもこれから年をとっていく中で不安が減る。そんな内容でした。
夫の和人さんは「悪くない話だと思う」と言います。確かに子どもの面倒も見てもらいやすく、老齢に差し掛かった親に何かあっても駆けつけやすい。それに、今は2LDK・60平米ほどの賃貸マンション暮らしで、男の子2人の成長で手狭に感じていたところでした。
えりこさん夫婦の世帯年収は800万円ほど。子どもの教育費にもお金がかかることを考えると、買えたとしてもマンションが現実的。戸建ては難しいのが実情です。
ですが、田舎の広い戸建てで育ったえりこさんは戸建てに住みたいという密かな夢を持っていました。義母と義父の土地に二世帯住宅を建てれば、土地代をかけずに戸建てに住む夢が叶います。
話し合いの結果、二世帯住宅での暮らしに同意したえりこさん夫婦。価格は5,000万円ほどで、1,800万円を義母・義父が負担、3,200万円をえりこさん夫婦がローンで返済していくことになりました。
上下分離型、玄関を共有する「一部共有型」で、それぞれの家庭の生活空間は区切られており、快適そのもの。
「こんな家で暮らせるなんて幸せ」
最初はそう思っていたのですが……。
常に義母の気配が……わずか1年で後悔
二世帯住宅に暮らしてわずか1年後、えりこさんは後悔していました。良好だった義母との関係性が、あまりに近くに住んだことで変わってきたのです。
お互いのプライベートを守るために一部共有型タイプにしましたが、子どもの面倒を見てもらうこともあるため、お互いの家の鍵を持つことにしました。
すると、義母は毎日えりこさんの家に来ては、夕食をすべて作って届けにくるようになりました。そこまでしてもらう必要はないと何度伝えても、「たくさん作ってしまったから」「えりこさんは仕事で大変だろうから」と、やめてくれません。
また、家の中を見渡しては「洗濯物が溜まっていた」「ティッシュが切れていた」と、あれこれ世話を焼くのです。さらに「このお皿使いやすいから」「タオル、新しいの買っておいたから使ってね」と、趣味に合わないものを家の中に持ち込まれるなど、ちょっとしたことの積み重ねが、えりこさんには大きなストレスになっていきました。
休日に寝起きの状態でダラダラしていると、ふいに義母が現れるので落ち着くこともできません。常に義母の気配がする……それが、想像以上に精神的な負担になっていました。
人によっては「いいお義母さん」と捉えるようなことも、できるだけ自立して生活したいと考えるえりこさんにとっては過干渉でしかなく、押しつけがましいと感じるように。
前の距離感がちょうどよかった、この先ずっとこれが続くのか……。
義母からすれば善意なのでしょう。ですが、最近はきつめの口調で対応してしまうことも増え、義母との間に不穏な空気が流れることも。夫に相談しても「なにがそんなに嫌なの、甘えればいいのに」と理解してもらえず、自己嫌悪に陥っているとか。
二世帯住宅の落とし穴に注意
事情はさまざまですが、二世帯住宅に住んで後悔したという話は決して少なくありません。距離が近づきぎたことで相手に対する感情が変わることもあり得るでしょう。
親が土地を持っている場合、土地代を払わずに戸建てに住むことができるというメリットはあるものの、いざ「この暮らしが嫌だ」と思っても、2つの家族が住んでいるがゆえに売却がスムーズにいかないというデメリットもあります。
二世帯住宅の購入時には、メリットとデメリットをしっかり把握し、慎重に決めることが大切だといえそうです。

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