バック・トゥ・1897年!時を戻そう。第一次世界大戦がはじまる前、日本では明治時代のこと。フランスリヨンでは雪の積もった日、大人たちが本気で雪合戦を楽しんでいた。

 人々は素手で雪玉を持ち、男女問わず笑いながら思いっ切りぶつけ合っている。その時撮影された映像が、最新のAI技術で修復されカラー化したことで、鮮明によみがえった。

 見どころは自転車でやってきてターゲットとなった男性だろう。

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フランスの市民たちによる大人の雪合戦

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  この雪合戦の様子は今から128年前の1897年フランスリヨンで撮影されたものだ。撮影したのは、フランスの映画発明者で「映画の父」とも称される、リュミエール兄弟[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%A5%E3%83%9F%E3%82%A8%E3%83%BC%E3%83%AB%E5%85%84%E5%BC%9F]だ。

 リュミエール兄弟の映像作品は、が日常のワンシーンを記録した「ドキュメンタリー映像」が多く、「雪の戦い」[https://en.wikipedia.org/wiki/Bataille_de_neige]と題されたこの映像は、現存する最も古い雪合戦の映像のひとつとされている。

 オリジナルの約1分の映像はモノクロの無声映画だった。

 だがそれが、現代のAI技術「ディオルディファイ(DeOldify)」により2020年にカラー化・高画質化され、さらに再生速度の調整を加えることで、当時の人々の動きが鮮明によみがえった。

 映像では男女入り乱れて雪玉を投げ合っているのが見て取れる。最初はふざけ合っていたのだが、次第に本気度がアップする。

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 一番の見どころはそこに自転車に乗った男性が通りかかる場面だ。

 雪合戦をしていた人々が一斉に自転車男性にターゲットを絞る。四方八方から雪玉の攻撃を受ける自転車男性はついに転倒してしまう。

 自転車男性は、その後慌てて逃げ去ったのだが、大人の雪合戦はまだまだ続いていく。

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 リュミエール兄弟は、映画の歴史において欠かせない存在だった。彼らが発明したシネマグラフ*は、写真撮影・映像撮影・現像・上映のすべてが一台でできる画期的な機械だった。この発明が、映画が一般の人々に広がるきっかけとなった。

 しかし、当時の映画技術はまだ発展途上で、特にフレームレート(1秒間に表示される画像の数)が低かったため、現代の映像と比べるとカクカクして見えることが多い。

 とはいえこの映像は今となっては貴重な資料だ。こうした記録があるおかげで、現代の私たちは19世紀末フランスの日常を知ることができる。

 以下がオリジナルの映像である。

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 リヨンの人々は当時珍しいカメラを向けられているのを知って、いつもより張り切っちゃったのかな? それとも、雪合戦をするように頼まれた一般市民たちだったのかな?

 いずれにせよ貴重なワンシーンである。

 1897年明治時代の日本では、大日本帝国憲法の施行から8年、本格的な近代国家へと進み始めた頃で、世界が急激に変化していた時期だった。

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