
スマートフォンから配信でき、Live2Dモデルでなくとも一枚絵だけで配信ができる手軽さと、イベントなどによるある種の競争風土など、YouTubeなどで活動するVTuberとは少し異なる独自の文化圏が形成されてきたVTuber配信アプリ『IRIAM』は、2024年にサービス開始から6周年を迎えた。この節目を記念するリアルイベント『ミライトパーティ2024~グランドフィナーレ~』が、1月12日に開催された。
【画像】イラストレーターたちから募った美麗な記念イラストたち
IRIAMにとっても初となるリアルイベントは、選抜されたライバーと、そのファンにとっての晴れ舞台となった。本記事では、普段はYouTubeで活動するVTuberを中心に追いかけている筆者の「初見の感想」も交えつつ、イベントの様子をお伝えしていく。
■6周年記念施策のフィナーレは満員御礼 展示や寄せ書きなどコンテンツも豊富
『ミライトパーティ2024~グランドフィナーレ~』は、IRIAMの6周年記念施策「IRIAM Anniversary Project ミライト」の締めくくりとして開催されたリアルイベントだ。IRIAMにとっても初となるリアルイベントであり、総勢13名のIRIAMライバーが出演するステージプログラムがメインコンテンツとなる。
会場の品川インターシティホールは満員御礼。ホワイエには出演ライバーたちのスタンドや、イラストレーターから募った記念イラストなど、様々な展示が見られた。中には、ユーザーが自発的に贈ったフラワースタンドもあり、記念施策のフィナーレにふさわしいビッグイベントをお祝いするムードが各所にあふれていた。
来場者がメッセージを残せる巨大ボードも。訪れた人が、今日に向けた思い思いの声を記していた。
興味深いものとして「アクスタフォトスポット」があった。アクリルスタンドを設置して撮影するための小規模ブースだ。推しのアクリルスタンドを持参するケースも考えられそうだが、中には現役ライバーが自身のアクリルスタンドを持参し、会場に来たことを示すために使うのでは……とも考えられた。今どきな来場者向けコンテンツと言えよう。
このほか、新規発表コンテンツ『IRIAM FRIENDS』のガチャコーナーも設けられていた。IRIAMのマスコットキャラクター・しらすの仲間としてデザインされた、マスコットキャラクターブランドのようで、来場者は来場特典のコインでアクリルチェーンのガチャを回すことができた。バーチャルタレント以外のキャラクターIP展開をおこなう流れは、ホロライブにて『もちぽよちゃん』が先行しており、一つの流れが生まれつつあるのを感じた次第だ。
開始時刻の15時に、MCの案内とともにイベントがスタート。基本は着席での鑑賞だが、ステージに面する箇所のみ参加自由なスタンディングエリアとなっていた。相当数の来場者が開幕から詰めかけており、フェスイベントならではの熱気も現場には宿っていた。
■定番の歌ステージから出張配信まで 個性豊かなライバーたちの晴れ舞台
本イベントは複数のプログラムで構成されている。目玉となるのは「ミライトステージ」。選抜ライバーたちが、5分間の時間制限の中で自分らしいステージを作り上げる企画だ。
ライバーはIRIAMの画面に映った状態で、ステージ上のスクリーンに登場した。そしていずれも、自身のステージパフォーマンスはIRIAMにて配信しており、ライバーだけでなく配信のリスナーもパフォーマンスに参加しているのが大きな特徴だ。
パフォーマンスの内容も多岐にわたった。晴れ舞台の定番である歌唱が多かったが、カバー曲を歌う人、この日のためのオリジナル曲を制作してきた人、弾き語りも実施する人、サプライズでLive2Dモデルをお披露目する人など、それぞれの晴れ舞台を作り上げていた。
その一方で、「普段の配信の延長」を見せるライバーも。たコンセプトを決めた定期配信の出張版を行う人だけでなく、小細工なしの“ストレート雑談”をあえて行う人もいた。
各ライバーのステージは、運営とも相談の上で決めていったものだそう。ステージの定番に縛られず、ライバーが自分らしさを見せる上で最善なパフォーマンスをともに考えようとする姿勢には、初見ながら感心させられた。
「ミライトステージ」以外には、ライバーたちによる対戦型企画や、IRIAMにて年間で多く歌われた楽曲を複数人で歌うステージなども実施された。対戦型では、サムネ作成やモノマネ歌唱、「会場に10人ぴったりいるお題集め」など、配信者としてのクリエイティブや対応力が問われるお題が登場し、会場を大きく湧かせていた。また、演技かどうかを見極める企画には、ステージ出演ライバー以外のIRIAMライバーから寄せられた映像が問題として登場するなど、多くのライバーに光を当てようとする意気込みも感じられた。
さらに、1年を通して様々な実績を積み上げたライバーを表彰するコーナーも設けられた。様々な部門が見られたが、「毎日配信したライバー」部門は実に265名もおり、その全ての名前が紹介されていた。また、配信に貢献したリスナーを表彰する部門も用意されていたのは、IRIAMのカルチャーならではだと感じた次第だ。
イベントの締めくくりは、年間で最もIRIAMで歌われた『ファンサ』の歌唱となった。金テープも派手に舞う中、IRIAM6周年を祝う舞台は大盛況のうちに幕を下ろした。
■ライバーとリスナーが生み出すコミュニティが作る熱量
筆者は普段、YouTubeやTwitchで活動するバーチャルタレントと、『VRChat』を中心に活動するタレントやクリエイターを観測しているため、IRIAMライバーはほとんどが初見だった。その上で感じたのは、総じてトーク力と瞬発力が高い人が多いことだ。ユーザーが手軽にアクセスできる分、離脱も手軽なスマホ配信アプリ環境で、切磋琢磨を続けた人だからこそ得られる"現場への対応力"には、正直舌を巻いた。
同時に、IRIAMライバーに「コミュニティ」の概念が強く存在することも興味深く感じた。イベント中では配信者と視聴者の総体を「コミュニティ」と称していたが、リスナーを表彰する部門があったことからもわかる通り「ミライトステージ」は配信者だけでなく、ギフトの演出で配信を盛り上げる視聴者もまた「配信の場」を作り上げており、ともに手を取り合っている様子が非常に新鮮だった。無論、これらはいわゆる投げ銭なのだが、YouTubeのスーパーチャットよりも、Twitchのハイプトレインに近しいものを感じた。
そして同時に、『IRIAM』そのものも巨大な配信者コミュニティであるように感じられた。「会場に10人ぴったりいるお題集め」で「ライバーとして今回来場した人」という問いに対し、複数人の手が挙がったのがその証左だろう。配信という行為が、世間よりも身近にある人たちが集まる場所が『IRIAM』なのかもしれない。
こうした特性を持つプレイヤーたちを、運営サイドも大事な存在と捉え、密にコミュニケーションを重ねながら生み出したのが『ミライトパーティ2024~グランドフィナーレ~』なのかと、門外漢の身で感じた次第だ。主流のVTuberカルチャーとは異なる「バーチャルな配信者とファンの世界」が、たしかに育まれていると感じるイベントだった。
なお、イベントの様子はアーカイブが残されている。気になる方はこちらも確認いただければ幸いだ。
(文・取材=浅田カズラ)

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