
この記事をまとめると
■大阪オートメッセ2025が開催中
■モデリスタのブースにスポットを当てた
■一風変わった謎の展示がなされている
モデリスタは「概念」の展示に挑戦!
トヨタカスタマイジング&ディベロップメントが展開する「MODELISTA」は、トヨタ車のカスタムを手がけるブランドです。
今や世界で屈指のメーカーであるトヨタ・グループの一員としてふさわしいクオリティの製品を生み出すメーカーとして、昨年の展示では「上質・洗練」というメインテーマを表す「五感に響く機能」という演出を込めたブースづくりが印象に残っていますが、今回の展示はその延長という予想を大きく外れて、これからのMODELISTAの指針を象徴する“概念”の展示をおこなっていました。
■ “新化”を表す“胚”ってなんのこっちゃ?
その“概念”が込められた展示物は、一見してまるでオブジェという存在感の、「MODELISTA EMBRYO(モデリスタ エンブリオ)」と名付けられた立体モデルです。
複雑な曲線と面で構成されたその立体モデルは、MODELISTAのこれまでのブランドイメージを表す「洗練と上質」というワードをベースに置きながら、その概念を具体的なカタチに落とし込んだものだそうです。
この一見して“ややこしそう”な概念やブランドのイメージを解説してくれたのは、この「EMBRYO」の取りまとめをおこなったデザインクリエイトグループ主幹の古長さん。
この造形にどんな概念が込められているかというと、そのイメージは「GEOMETRICAL organic」というキーワードで表されるとのこと。
「GEOMETRICAL」は幾何学的という意味で、「organic」は有機物の、有機的なという意味です。硬質な幾何学的造形と、それと相反する生物の暖かみや柔らかさを感じる有機的な造形を一つのイメージに融合させているそうです。
そしてその言葉から連想する形状をまずは平面のスケッチで表現。いろいろな方向からアプローチしたさまざまなテイストのスケッチを、今後のMODELISTAのデザインの象徴としてふさわしいかという評価基準で選別を行い、ひとつのイメージに落とし込みました。
この段階で、キーワードが表す相反する要素をひとつに融合するという考えを左右非対称のデザインで象徴させるアイディアが生まれたり、安心、安定したいという気もちを裏切る意外性というスパイスを利かせるディティールを入れ込んだり、またはザックリとえぐって間接照明を埋め込んだり、あるいはモデルの底面からテーブルにイメージを投影させるなど、メンバーから出た有力なアイディアを立体モデルの造形に加えたり、逆に削いだりすることで、よりイメージが伝わるように造形をブラッシュアップしていったとのこと。
そうしてできあがったのが、今のMODELISTAからの“新化”を表す立体モデル「EMBRYO」というわけです。
今後はこの立体モデルをデザイン構築のベースに据えて、デザイナーの内にあるそれぞれのイメージを具体化する際のガイドラインとして活用していくそうです。
ちなみにこの「EMBRYO」の展示モデルは、よく見る「お手を触れないでください」の表示はなく、むしろ直に触れてその触感でも造形のおもしろさを感じてほしいとのこと。
会期中にこの記事を見た人は、ぜひ触れてみてください。
トヨタbZ4Xでケーススタディ
■「EMBRYO」の「GEOMETRICAL organic」という概念を実車に落とし込む試みを「MODELISTA CONCEPT ZERO」で実践
さて概念を立体モデルで表現する「EMBRYO」が完成しましたが、この段階ではまだ、実際のMODELISTAの製品のイメージと結びつけるのは難しいでしょう。
そこで、その概念をより具体的なカタチで見てもらうため、トヨタの「bZ4X」をベース車として、実際の製品デザインのケーススタディをおこないました。
こちらの「CONCEPT ZERO」は、先の古長さんと同じデザインクリエイトグループの主任を務める久世さんがデザインの取りまとめを行ったそうです。
その久世さんに、「EMBRYO」の概念が明快に現れている部分について教えてもらいました。
まずはサイドスカートの形状がポイントで、大きくV字を描きながら前から後ろに跳ね上がるキャラクターラインに注目。
ライン自体はエッジが効いていて硬質な印象ですが、その両側の面はなめらかな曲面で構成されています。
このラインは、セオリーを優先させるならボディのプレスラインに沿った形状にしますが、そこをあえて外すことでアクセントとしているそうです。外しながらもまとまりを保っているのは「EMBRYO」の存在も効いているのでしょう。
こういう線や面、角Rなどの意図的な変化は全体にちりばめられていて、触れてみたくなる造形に仕上げられています。
そしてもうひとつのポイントが、前後のバンパーに埋め込まれた、明滅を繰り返す動きのあるイルミネーションです。
これはまさに「EMBRYO」で表現した左右非対称の具体例です。アウトラインを非対称にすると異質な感覚を覚えてしまう傾向が高くなってしまうため、さりげなく中のパターンを非対称にデザインしています。
そしてこの「CONCEPT ZERO」は内装にもその概念由来の仕掛けが仕込まれていました。助手席のドアを開けてダッシュボードの面を見ると、バンパーに埋め込まれたパターンがあしらわれていました。これは淡い雰囲気を感じてもらうため、自ら発光するのではなくプロジェクターで投影する方法を採っています。これも「EMBRYO」で採用しているアイディアです。
■2つの展示物を引き立てつつ、ブランドの“新化”を感じさせるブースの演出
今回のMODELISTAブースでは、主役の2つの展示物のほかにも、「上質・洗練」や「五感に訴える」という基本テーマが感じられる演出を各所にちりばめているというのもポイントです。
たとえば頭上に設えられた大きな丸い面の照明は、ただ明るく照らすのではなく、柔らかく明滅を繰り返し、明るさの変化を演出しています。これにより展示物の陰影に変化が出て面の表情が変わるのを楽しめるでしょう。
また、ブースに足を踏み入れたときにフワッと心地の良い香りがするのに気付く人がいるかもしれません。これはMODELISTAの「上質・洗練」をイメージしたアロマが数カ所に仕込まれていることによる嗅覚に訴えかける演出で、この柑橘系とスパイシーなウッド系のアクセントが印象的な香りは、「#0 URBAN OASIS」と名付けられたオリジナルだそうです。

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