
親にとって、どんな子どもであっても自慢の対象。さらに誰からも「エリート」といわれるような子どもだったら、どんなに鼻が高いでしょう。そんな自慢の子をもつ親には、誰にも知られたくない秘密があることも。
年金15万円・65歳の未亡人…今なおパート勤めを続ける理由
地方の田畑が残る郊外、37年前に建てた戸建てに住んでいる後藤裕子さん(仮名・65歳)。
――ここら辺は古い集落で、近所の人はみんな知り合いという感じです。亡くなった夫が相続した土地に家を建てたのが37年前。もうずいぶんと古くなってしまいましたね
3年前に4歳上の夫が亡くなり、現在は遺族年金と自身の年金、合わせて月15万円ほどを受け取っています。持ち家でひとり暮らしではあれば十分暮らしていけますが、現在もパート勤めを続けています。
結婚後、仕事を辞め、家庭に専念していましたが、再び仕事を始めたのは、ひとり息子の智司さん(仮名・38歳)が中学生のとき。教育費の足しにできたらと思ったことがきっかけでした。
【高齢者に聞いた「希望年齢まで働き続けたい理由」】
1位:働くことで健康を維持したいから…57.8%
2位:生活を維持するために収入が必要だから…47.6%
3位:働かないと時間をもてあましてしまうから…39.9%
4位:将来の年金生活が不安だから…39.7%
5位:仕事を通してやりがいを得たいから…35.8%
6位:働くことで社会に貢献したいから…26.6%
7位:趣味などに充てる資金を得たいから…25.2%
8位:体力的に限界の年齢だと思うから…24.9%
9位:仕事を通じて友人や仲間を得ることができるから…24.3%
10位:仕事を通じて成長していきたいから…21.4%
※出所:株式会社パーソル総合研究所『シニアの就業実態・意識調査』
――息子は小さいころから勉強だけはできたんです。近所からは「神童」なんて呼ばれるくらい。大学では東京の大学に行きたいというから、お金が必要だなと思って
その後、智司さんは無事、希望していた東京の国公立大学に合格。さらに国家公務員試験に合格し、いわゆる官僚になるという、まさにエリート街道を歩んでいきました。
――当時は「こんな田舎から官僚が出るなんて」と評判になって。私も鼻が高かったです
近所の噂「ひとり暮らしなのに、買い物の量が半端ない…」
「後藤さんちの息子さんは優秀で、東京で官僚をやっている」
このような話は、このあたりでは集落一体で知れ渡っていること。たまに働いているスーパーでも客から「東京の息子さん、元気?」と声をかけられるほどだったといいます。
そんな後藤さんに新たな噂が立っていることを、後藤さん自身も感じていました。
「後藤さんの旦那さんは亡くなって、いまはひとり暮らしのはず。それなのに買い物の量が半端ないのはなぜ……」
そんな噂話に「たくさん作って冷凍しておくの。そのほうが家事も楽だし」と返していた後藤さん。しかし本当のことと教えてくれました。
――実は息子が帰ってきていて、自室にずっといるんです
体調不良で一時的に帰省していた智司さん。そのまま仕事を辞め、ほとんど自室からも出てこない生活を1年ほど続けています。しかし、そのことを近所に住んでいる親戚にも話していないのだとか。
――ここは話がすぐに伝わるような田舎です。おひれがいっぱいついて、噂話がひとり歩きしちゃう。37歳になる息子が官僚を辞めて引きこもっているなんて、恰好のネタじゃないですか。ただでさえ体調が悪いのに。息子の状態をこれ以上悪化させたくないんです。絶対知られたくないんです
業務過多が遠因となり、メンタルヘルス不調に陥った智司さん。休職というカタチでいったん仕事から離れ実家へ。そのまま回復することなく、退職しました。
人事院『公務員白書 令和5年度年次報告書』によると、令和4年度、精神及び行動の障害による長期病休者数は5,389人。全職員の1.92%にあたります。またこの5年の推移をみていくと、人数は3,818人から1,500人ほど増加し、全職員に占める割合は1.39%から1.92%と大きく増えています。増加の一因とされているのが長時間労働で、上限を超えて超過勤務を命ぜられた職員の割合は他律部署*では77.7%となっています。
*他律的業務(業務量 、業務の実施時期その他の業務の遂行に関する事項を自ら決定することが困難な業務をいう。)の比重が高い部署。他律的業務の比重が高い部署以外の部署を自律部署という
ひとり暮らしと思われていますが、食事は2人分必要。だから後藤さんは「あれっ、ひとり暮らしのはずなのに、あんなに必要?」と思われる食材を買い込んでいるわけです。
――きちんとしたところに相談をしたほうがいいとは思うのですが、本人がまだそういう段階ではないようで……今は見守ることにしているんです
[参考資料]

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