
この記事をまとめると
■マツダ新世代ラージ商品群の第1弾「CX-60」は乗り心地や変速ショックに課題があった
■3列シート版となるCX-80ではサスペンション改良などでCX-60でのネガを大幅に改善
■マツダの新世代ラージ商品群はまだ始まったばかりであり長い目で進化を見極めたい
CX-60登場直後に囁かれた乗り心地の粗
クルマ好き、マツダファンならご存じのように、マツダの新世代ラージ商品群の第一弾となるミッドサイズSUVのCX-60は、FRレイアウト、電動パワーユニットのマツダ初のe-SKYACTIV PHEV、直列6気筒ディーゼルエンジンに電動化技術M HYBRID BOOSTを組み合わせたe-SKYACTIV Dなどを引っさげて、2022年9月に華々しくデビューした。
しかしながら、マツダとして初チャレンジの部分も少なくなく、操縦性は驚くほど正確でファンだったものの、デビュー当時のとくに乗り心地に関しては決して褒められるものではなかった。具体的には、突き上げが強く、ぎこちなく、路面からのショックをダイレクトに伝えてくるものだったのだ。
さらに追い打ちをかけるようにトルコンレスのATの変速ショックが過大で、運転していて、乗っていて、突っ込みどころ満載の新型車でもあったのだ。もちろん、FRレイアウトや直6エンジンに興味津々でいち早くCX-60を手に入れた一般ユーザーからの改善を求める声も大きかったと聞く。
そして、国内におけるマツダの新世代ラージ商品群の第2弾、CX-60のホイールベースと全長を伸ばし、3列シート化したCX-80が2024年10月に登場したわけだが、そのとき、大きな話題になったのが、CX-60のウィークポイントを解消できたのか否かだった。
CX-80では原因を洗い出し徹底的に対策
マツダとしても、CX-60の失敗を繰り返すことはできない。そこでまず、サスペンションスプリングの硬さ、ショックアブソーバーの減衰力不足をCX-80では解消。具体的にはリヤのスタビライザーを外し、スプリングを柔らかくし、ショックアブソーバーの減衰力を高めることで乗り心地の改善を行ったのである。
結果、ディーゼルエンジンモデルの乗り心地は劇的に向上。とくに非ハイブリッドのXDモデルは前後席ともに穏やかな乗り心地となり(60kg重いハイブリッドは車重増に対応してスプリングレートを高めているので依然としてやや硬めの乗り心地だ)、登場時に巷で囁かれた乗り心地の粗さは見事に解消。それは2列目席でも同様だ。速度を上げるほどにフラットになるところも褒められる。
しかも、8速ATの変速もじつにスムースになり、CX-60の初期型で見られた変速ショックは、いまや昔である。このあたりは、開発陣の意地というところだろうか。
ただし、CX-60の売りであったステアリングのシャープさ、意のままの操縦性、挙動はやや後退。しかしながら、マツダが打ち出しているつながりある操縦性は、たとえば山道などではしっかりと実現されていて、スムースな走りを、車格、ボディサイズに見合ったドライバビリティとして達成しているように思える。
とはいえ、2210kgもの重量級になるPHEVモデルになると、高速走行時の段差やうねりに対してフワフワとする収まりの悪い乗り心地が顔を出すことがある。マツダのクルマはG-ベクタリングコントロールによっても「車酔いしにくい」ことでも有名だが、CX-80のPHEVは例外かも知れない。
ところで、CX-60も2024年12月の商品改良において、CX-80にならい、スプリング、ダンパーの変更を中心にサスペンションのセッティングを見直し、操縦安定性と乗り心地を向上させている。
また、電動パワーステアリングやAWDなどの制御最適化や騒音・振動への対策を織り込み、静粛性まで高めているのである。
マツダの新世代ラージ商品群はまだ始まったばかり。これからさらなる改善が見込まれ、もう少し長い目でその進化を見極めたいところではあるが、CX-80の素のグレードとなるXDモデル、CX-60なら2024年12月以降の商品改良後のモデルであれば、FRレイアウト、直6エンジンの魅力をしっかりと味わえるはずである。
いずれにしても、CX-80、CX-60を購入予定なら、仕様による走りの差が少なくないため、なるべく多くの仕様に試乗して納得できる1台を選んでほしい。

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