
今年4月からの年金額が確定となりました。額面は増額となりましたが、物価高騰分を加味すると実質は減額となります。限られた収入のなかでやりくりするしかない年金生活者は、さらに苦しい生活を余儀なくされそうです。
令和7年…年金増額も実質目減り。年金生活者、ますます窮地に
先月、厚生労働省が発表した令和7年度の年金額。今年4月からの老齢基礎年金は前年から1,308円増えて月6万9,308円。またモデル夫婦*2人の年金額は前年から4,412円増えて月23万2,784円でした。物価や賃金の上昇に伴い、3年連続の引き上げ。しかし物価や賃金の伸びよりも低く抑える「マクロ経済スライド」と呼ばれる仕組みにより、引き上げ率は賃金の伸びより0.4%低く抑えられ1.9%。実質年金減となりました。
*40年間平均的な賃金で会社員として働いた夫と専業主婦の世帯
働き方が多様化していることから、初めて、平均的な賃金で会社員として働いた場合の支給額や、自営業として働いた期間が長い場合の支給額も発表となりました。
【多様なライフコースに応じた年金額】
■厚生年金機関中心(20年以上)の男性
…3,234円増の月17万3,457円
■国民年金(第1号被保険者)期間中心(20年以上)の男性
■厚生年金機関中心(20年以上)の女性
…2,463円増の月13万2,117円
■国民年金(第1号被保険者)期間中心(20年以上)の女性
…1,127円増の月6万0,636円
■国民年金(第3号被保険者)期間中心(20年以上)の女性
それによると「会社員+専業主婦」という、以前であれば多かった夫婦で年金月23万円強であるのに対し、昨今、主流になりつつある「共に正社員として働いている夫婦」であれば、年金月30万円強が目安となることがわかります。
どちらにせよ、年金増額分が物価上昇分を超えることはなく、実質目減り。年金生活者の生活は、さらに困窮することが確実となりました。
そんな状況に憤りを隠せない西村博さん(仮名・79歳)。
――ただでさえ少ない年金が減るなんて……どうやって生きていけというんだ
年金を受け取るタイミングで判明「あれっ、ちゃんと保険料を払っていない!?」
西村さん、年金は月10.3万円ほど。家賃4万2,000円のアパートに住んでいますが、年金だけではとても暮らしていけず、警備員のアルバイトを10年以上も続けています。現在の時給は1,280円。1日8時間、週5日勤務。月収は22万円強となり、年金と合わせると十分暮らしてけます。
――この年になると働くのも辛い。仕事なんて辞めたい。でも辞められないのよ、あんな年金じゃ
正社員で働いてきた人であれば月17万円の年金が受け取れる……これが平均的なモデル年金ですが、西村さんが受け取っている年金は月10万円。その差はいったい?
実は西村さん、30~40代にかけて働いていた会社で年金保険料を払っていない(天引きされていない)ことがあとで発覚。すでにその会社は倒産していて、どうすることもできなかったといいます。
――ほかに天引きされているものはあったから、何もおかしいとは思わなかった。年金をもらうときになって、保険料の納付期間が240ヵ月しかなくて。「自分は40年以上サラリーマンをしてきたのに、あれっ、おかしい……」となったんですが、すでに会社はないし。泣き寝入りするしかなかった
年金保険料の納付に対して、いまよりも緩かった時代。また自身の老後に対しての興味も薄く、将来の年金に対して無関心という人も珍しくなかった時代です。もし将来の年金に対して関心が高ければ、年金保険料を払っていないことに気が付いたかもしれない……そんな後悔をしたところで、年金が増えるわけではありません。
――今の若者たちにいえることは、年金に関心をもちなさい、ということですね
80歳を前にして、働く選択肢が狭くなっていることを感じるという西村さん。
――警備員のバイト、来年は更新しないといわれているから、職を探さないといけないんだけど、「次、80歳」というとダメだね。「年齢不問」と書いてあっても年齢を理由に断られてしまう
失業まであと3ヵ月。年金は減額となり、「働かなくても大丈夫」といえる状況ではない。焦り、憤り、怒り……いろいろな感情が押し寄せてきます。
――この国は終わっているよ。真面目に働いてきたとしても年金で生きていけないんだもん
年齢的にもいつまで働けるかわかりません。ただ生きていくために、次の仕事を必死に探しているといいます。
[参考資料]

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