
この記事をまとめると
■インドの首都デリー市内の交通環境はカオス
■インドではクラクションが鳴り響き3車線の道路に5台が横並びになることも少なくない
インドの路上はカオスがすぎる
「新興国あるある」だが、都市部の交通環境はカオスなことが多い。繁忙時間帯を中心に激しい道路渋滞が日常的に発生している。これは、一度「マイカー」というものを手にすると、日常生活での移動手段がほぼ「マイカー一択」となることが大きい。朝夕の通勤ラッシュでは、路線バスや地下鉄などの公共輸送機関は日本と同じく車内がかなり混雑している。日本と同じく痴漢やスリなどの犯罪も多発しており、治安上の意味もあって、マイカー通勤やマイカーでの移動が頻繁となってしまうということもあるようだ。
そんな新興国のなかでもインドの首都デリー市内の交通環境はずば抜けてカオスであり、そしてアグレッシブなものとなっている。まずは街じゅうに鳴り響くクラクション。もちろん「クラクション=警笛」というように、危険に対しクラクションは鳴らすものとなるのだが、「自分(車両)がここにいるぞ」と知らせる意味でも鳴らしているようである。
インドのひとたちは良くも悪くもマイペース。日本人が周囲のひとへの配慮が行き届いているなどといわれるが、「ゴーイングマイウェイ」のインドでは、あまり周囲は気にしていないように見える。もちろん、四輪車、三輪車、二輪車、そして多くの歩行者が混在しているので、一般的なクラクションの利用シチュエーションも高まっているが、そのようななかであえて危険を避けるために、自分の存在についてクラクションを鳴らすことでアピールしているように見えた。さすがに深夜は鳴りやむと思いきや数が減る程度。朝になるとけたたましく鳴るクラクションで「朝が来た」として起きることも珍しくない。
仮に同一方向に3車線ある道路を走っているとしよう。しかし気がつくと横一列に5台並んでいることも珍しくない。大型バスやトラックも走ることができるような車線幅となっているのだが、とくに小型車の多いインドでは、隙間があれば3車線道路でも4台、5台とクルマが走っていることも珍しくない。前方に速度の遅いクルマがいてクラクションを鳴らすと、車線内でオフセットしてずれて、空いた隙間を走り抜けるというのも日常風景である。
速度の遅いトラックのリヤにはたいてい「BLOW HORN(クラクションを鳴らせ)」と書いてある。遅いクルマも慣れているようで、この面ではある意味「譲り合い」というものが存在しているように見える。
隣のクルマとの車間を空けるとバイクが突っ込んでくる
2025年1月に2年ぶりにインドを訪問したのだが、2023年に訪れたときと比べるとウーバー(ライドシェア)車両のフロントウインドウに飛び石の跡やひび割れが極端に減っていた。2023年にも利用したデリーと近隣市を結ぶ高速道路は、2023年に比べるとはるかに舗装がしっかりしていた。成長著しいインドでは、日本ほどとまではいえないものの、道路整備もそれなりに進んでいることを感じた瞬間であった。
信号待ちのときは前方車両との車間は「ほぼゼロ」というレベルにまで詰めるのも一般的。車間をあけておくと、そこを歩行者が通るようになり、信号が青になってもなかなか進むことができなかったり、二輪車はわずかな隙間を狙ってすり抜けを試みようとするのを防ぐためではないかと考えている。
あるとき、同一方向2車線の道路で乗っていたライドシェア車両が信号待ちをしていた。隣にも信号待ちをするクルマがいたのだが、「ドーン」という音とともに隣のクルマとの間に1台のスクーターがいた。肉眼ではとてもすり抜けできるような間隔が空いていないのに、スクーターがすり抜けを試みて失敗したようなのである。その後は殴り合いでも始まるのではないかといったレベルで、ライドシェアのドライバーとライダーが口喧嘩をはじめた。
地元在住の駐在員が「インド人は穏やかで、めったにケンカしないんですよ」との言葉が一気に消し飛んだ。日本ならクルマとスクーターを道路端に停めて物損事故の処理をするのだが、スクーターはそのまま走り去り、ライドシェアドライバーも気にする様子はない。「インドではそこはあまり気にしないみたいですよ」という前出の駐在員の言葉を思い出した。
ライドシェア利用時は後席に座るのが一般的なようだが、筆者はよりリアルにインドの道路や運転事情を体験したいので、いつも助手席に座るようにしていた。

コメント