
会社員という縛られた働き方より、自分の腕1本で成果を出せるフリーランスの方が合っているという人も多いでしょう。フリーランスには会社員にないメリットがたくさんあるのは事実ですが、反面、厳しい面が多いという意見も。見ていきましょう。
フリーランスとして働く人の満足度は?
一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会が実施した「フリーランス白書2024」によれば、フリーランスとして働く満足度について、項目別に以下のような結果が出ています。
今の働き方に対しての満足度はどの程度ですか?
【全般】 満足…67.2% どちらでもない:23.3% 不満:9.4%
【就業環境(働く時間/場所など)】 満足…74.7% どちらでもない:17.6% 不満:7.7%
【仕事上の人間関係】 満足…71.0% どちらでもない:23.3% 不満:5.7%
【達成感/充実感】 満足…68.1% どちらでもない:23.7% 不満:8.2%
【プライベートとの両立】 満足…62.5% どちらでもない:25.1% 不満:12.4%
【スキル/知識/経験の向上】 満足…58.7% どちらでもない:29.7% 不満:11.6%
【多様性に富んだ人脈形成】 満足…33.9% どちらでもない:44.0% 不満:22.1%
【収入】 満足…30.9% どちらでもない:26.9% 不満:42.2%
【社会的地位】 満足…27.9% どちらでもない:41.4% 不満:30.8%
※出典:一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会「フリーランス白書2024」
「全般」では67.2%が満足と回答。項目別で見ると「就業環境」に満足している割合が74.7%とかなり多いことが見てとれます。働く時間は自分次第、わざわざオフィスに出向く必要がない……確かにこの辺りの満足度が高いことは納得がいきます。
「仕事上の人間関係(満足:71.0%)」や「達成感/充実感(満足:68.1%)」についても、上司や同僚との摩擦やストレスがないこと、自分のスキルで勝負できるという点などから、満足している割合が高いのではないかと推測されます。
一方、満足度が低いのが「多様性に富んだ人脈形成(満足:33.9%)」、「収入(満足:30.9%)」、「社会的地位(満足:27.9%)」です。限られた相手とのやりとりが多い、会社員などの肩書がないことで不便を感じる場面などもあるのかもしれません。
また、収入に満足している割合が30.9%という結果を見る限りでは、目指す収入を得るのはそう簡単ではないようです。もちろん不満=少ないとは限らず、満足度は主観であることは念頭に置いておく必要があります。
金銭面でいうとフリーランスにとって懸念になるのが公的年金が手薄であること。会社員や公務員と違って厚生年金がないため、受取額はかなり少なく、自分自身で老後資金を用意しておくことが必須となっています。しかし、思ったようにお金を貯められないケースもあるようです。
フリーランス歴30年以上、年金が少なすぎて老後が怖い…
フリーランスのデザイナーで年収約500万円ほどの56歳・Aさんは、近づく老後に対して不安を抱えています。
「自分の性格的に会社員は絶対無理だと思っていたんですよね。それで大学在学中からデザインの学校に通って、そこで知り合ったデザインの師匠にしばらくついて、ちょっとずつ仕事を貰うようになって。本や雑誌のデザインをフリーでやるようになったんです」
ピーク時には年収1,000万円が見えて、収入にも満足していたといいますが、それも一時的なものだったといいます。
「カリスマデザイナーとかではないので、どんな急ぎの仕事にもすぐ対応できるところが重宝されてきたタイプです。でも、新しい人も参入してくるし、単価も下がっています。去年はギリギリ500万円超えたけど、今年はもっと下がるんじゃないかな。体力も視力も落ちてきてるし、『フリーランスは一生仕事できる』なんていうけど、実際はなかなか厳しいですよ」
年収が落ちていく中で、老後資金についても不安が増しているといいます。
「フリーランスの年金は年80万円ぐらいだと思いますが、あまりに少ない。子どもの教育費とか住宅ローンで手一杯だったので、老後資金を十分に用意するところまで回らなくて。妻はパートをしてくれていますが、不安でしょうがないです」
年金の少なさに不安を抱えたAさんは、繰下げ受給による増額も検討したとか。
「5年で42%増えるっていうし、ネットで見た例だとめちゃくちゃ増えてたんですよ。ただ、僕の場合は元が年82万円だから、増額で年116万円ぐらい。月にすると9万6,000円ぐらいなんですよね。5年も待ってそれぐらいだと思うと、迷ってしまって」
長生きのリスクも怖いけれど、万が一何があるかわからない。そもそも仕事がなければ70歳まで繰下げると生活が厳しいかもしれない。Aさんは繰下げを「65歳になるまでは様子見」するとのこと。
「自分にはフリーという選択肢しかなかったと思うけど、会社員の安定感がいまさら羨ましくなったりします。いよいよ稼げなくなったら、バイトもしないといけない。長生きするのが怖いですね」
Aさんの場合、実際はさらに少ない…早めの対策を
厚生年金のないフリーランスや自営業者は、どれだけ稼いでいたとしても国民年金は満額で年81万6,000円(2024年度)。月にすると6万8,000円です。
ただ、Aさんには酷な事実があります。Aさんは大学在学中は年金保険料を支払っていなかったため、このままだと満額を受け取ることはできず、年75万円ほどになります。さらに、国民健康保険料や介護保険料なども引かれるため、手取りはさらに少なくなります。
フリーランスの仕事には波があり、年収のいい時がずっと続くわけではないため、余裕があるときにしっかりと貯蓄しておくこと、長く働くこと、副業、年金への任意加入(60~65歳まで)、iDeCoの利用など、とれる対策を早めに考えておくことが大切です。

コメント