
食料品の値上げが止まりません。キャベツは平年の3倍、白菜は2.5倍と高値が続きます(1月20日の週、農林水産省)。“物価の優等生”のはずの卵も2024年初めに比べ12月は6割高になりました(JA全農たまご)。2025年1~4月に予定される食品値上げは6千品超にのぼり、値上げ率の平均は約18%です(帝国データバンク)。
なかでも米の高騰は家計への影響が大きいでしょう。昨夏には米がスーパーから消える「令和の米騒動」が起きました。最近は2024年産米がスーパーに並んでいるものの「5kg入りが以前より1千円高い」印象です。農林水産省によると、2024年12月の平均価格は2万4千665円(60kg)。前年同月より6割も高くなっています。
2024年産米が2025年になっても値上げが続く異常事態を受けて、農林水産省は1月31日、備蓄米の方針を見直しました。
備蓄米とは、10年に1度や2年連続の不作に対応できるよう100万tを目安に国が保管する米です。毎年20万tの米を買い入れ、保管期間の5年を過ぎたら飼料米などとして20万tを売却し、100万tを維持しています。
備蓄米の制度化は、記録的な長雨と冷夏、日照不足で米が大凶作だった’93年がきっかけでした。国はタイ米などの緊急輸入に至った「平成の米騒動」を教訓に’95年に法律を整備したのです。
国民が物価高にあえぐなか国の政策は乏しい ただ平成の米騒動は、翌1994年の新米が出回り始めると収束しました。国は昨年の米不足もそうなるものと高をくくっていたと思います。その証拠に、当時の坂本哲志農林水産相は備蓄米の放出を拒否し続けました。私は、裏でJA(農業協同組合)の米価を下げたくない意向が働いたとみています。
ですが30年前と違い、卸や外食・中食産業など米を使う多くの事業者がJAを通さず直接米の調達に動きました。結果、高値での買い付け競争になり、米価はますます高騰しました。そこでやっと、大凶作でなくても流通に支障の出る場合は備蓄米を放出できるように方針を変えたのです。
ただし、備蓄米の放出は一定期間後に政府が買い戻す条件つきです。流通量の増加は一時的なものであり、大きな値下がりは期待できず、家計の困窮は続くでしょう。
国民がこれほど物価高騰にあえいでいるのに、国の政策は乏しいといわざるをえません。行ったのは、低所得者世帯に3万円の支給と、3月まで期間限定の電気・ガス料金の補助。ガソリン代は「暫定税率の撤廃」などと掛け声だけで議論は進んでいません。
石破茂首相は1月24日の施政方針演説で「楽しい日本」を掲げました。首相には生活苦からレジャーやおしゃれなどの“楽しみ”を手放す人の姿が見えないのでしょうか。一刻も早く家計を救う経済対策に着手してほしいものです。

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