
「一生に一度」の結婚式を台無しにされた。その原因をつくった新郎側の友人たちを訴えてやりたい。新婦から悲痛な相談が弁護士ドットコムに寄せられた。
披露宴の余興で、事故的ではあるが、出席者の女性が新郎の口にキスをしたというのだ。この出来事が原因で、数カ月たっても入籍できていない状況だという。
⚫結婚する新郎に抱きつき「さびしい」 幼馴染の女性が奪った唇相談者によると、披露宴で余興がおこなわれた。担当した友人たちの中に新郎の幼なじみの女性もいた。
余興で、友人たちは「プレゼントがあります」と言って、椅子に座らせた新郎を両側から挟んで、友人男性の一人と幼なじみ女性がキスすることに。
ただ、その際、突然のことに驚いた新郎が横を向いたので、幼なじみ女性と口と口でキスするかたちになってしまったそうだ。
これを目の前で見てしまった新婦は傷ついたが、幼なじみ女性からは笑いながら謝られ、友人たちからは謝罪はなかったという。
新婦側の家族の怒りは収まらず、その影響で入籍できていないという。それだけでなく、行き場のない怒りをぶつけて新郎と微妙な雰囲気になることもあり、新婦は涙を流す日々を過ごしたそうだ。
実は、式場側は、「余興のキス」を知った段階で、結婚式が大変なことになるので「やめたほうがいい」と止めていたそうだ。それでも愚かな行動に走った友人たちに新婦は慰謝料を求めることはできるのだろうか。幾野翔太弁護士に聞いた。
⚫キス1回の"お値段"はそこまでではないーー友人たちは式場側から止められていたのに披露宴でキスをしました。彼らに慰謝料を求められるのでしょうか
キスをした幼なじみ女性らに対して慰謝料を請求するためには、民法上、不法行為にあたる必要があります。その友人に新婦を傷つける意図や、不注意によって新婦を傷つけてしまったという状況が必要になります。
たしかに、結婚式という場で、ふさわしくない行動であると一般的には考えられると思います。
実際に裁判になれば、幼なじみ女性らの不注意(過失)を認定して、一定額の慰謝料を認定できる可能性もありますが、状況的には口にキスをするつもりはなかったようですし、慰謝料が認定されるとしても、かなり低くなりそうです。
⚫披露宴ムービーの「思い出」削除の慰謝料はーーさらに披露宴のムービーからキスシーンなどをカットしたことで、動画の仕上がりには不満が残ったそうです。その分についてはどうでしょうか。
動画がまったく作成できなかったわけではないので、DVD制作にかかる費用全額の請求をすることは困難だと思われます。
費用にかかった一定額を、損害として請求することはありうると思いますが、式全体に対して、余興部分は時間としては大きくないので、認められたとしても、その割合はやはり低いと考えられます。
【取材協力弁護士】
幾野 翔太(いくの・しょうた)弁護士
企業法務、一般民事、刑事事件など幅広く対応。大阪市立大学法科大学院修了、2018年弁護士登録。大阪市内の法律事務所を経て、東京スタートアップ法律事務所入所。大阪弁護士会所属。小学生の頃に見たドラマに憧れて弁護士を志望した。ミネラルショー(鉱物の展示会)巡りが趣味。
事務所名:東京スタートアップ法律事務所大阪支店
事務所URL:https://tokyo-startup-law.or.jp/

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