
この記事をまとめると
■2輪用と4輪用ヘルメットは見た目は似ていてもそれぞれ特徴がある
■4輪用は万が一に備えて難燃性素材が用いられている
■2輪用のヘルメットは法律で使用できる条件が定められている
同じヘルメットに見えるけど……?
モータースポーツファンであれば、著名なドライバーやライダーをヘルメットのペインティングだけで見わけることができるだろう。人気ライダーや伝説的ドライバーともなれば、レプリカヘルメットがオフィシャルに発売されるほど憧れのアイテムともなっている。
そんなヘルメット、目の部分だけが開いているフルフェイス型や、顔全体がむき出しのジェット型、お椀を逆さにしたような半キャップ型などさまざまな形状が存在している。
4輪モータースポーツにおいては、サーキットではフルフェイス型、ラリーなどではジェット型が主流という印象もあるだろう。
そして、意外かもしれないが、ヘルメットは2輪用と4輪用で共通ではなかったりする。なぜなら4輪用ヘルメットには、難燃性が求められるからだ。
4輪用ヘルメットは基本的にモータースポーツで使用されるもので、厳しく安全性が求められる。そして2輪と最大の違いが、4輪においては車両火災が起きたとき、すぐに離れられないという点だ。
フォーミュラカーであっても、GTマシンのようなハコ車であっても、フルハーネスのシートベルトをしているドライバーは火を出したクルマから脱出するのに大なり小なり時間がかかる。そうしたシチュエーションを考慮して、4輪用ヘルメットの内装材には難燃性のある素材が使用される。
また、4輪用のフルフェイス型ヘルメットでは視界を確保するための開口部が、2輪用のフルフェイス型ヘルメットより小さくなっている傾向にあるが、これも車両火災におけるやけどの被害を抑えるためのデザインといえる。
さらに、最近の4輪モータースポーツでは頸部や頭部を守るためのHANS(FHR)の装着を義務付けているカテゴリーも多く、4輪用として開発されているヘルメットはHANSとつなぐアンカーを装着する前提でのデザインとなっていることも多い。
2輪用のヘルメットの特徴とは
なお、街なかでは原付スクーターなどに乗っているライダーが装着していることの多い半キャップ型だが、いまでは4輪モータースポーツで使用されることはない。
そもそも半キャップ型ヘルメットの多くは、公道での使用についても排気量125cc超の軽二輪より大きなバイクでは推奨されていない。
日本では公道で使用する2輪用ヘルメットの安全基準を示すものとして「SG」マークが知られており、工業規格としてのJISにもヘルメットに関する規格がある。このどちらにも排気量125cc以下(原付バイク)用ヘルメットという限定された規格が存在している。
原付バイクだから安全を軽んじていいというわけではないが、速度が限定される原付バイクであれば「ひとまず、これでOK」という軽めの規格を用意することでユーザーの出費を抑えようということだろう。
つまり、軽二輪以上のバイクに乗るのであれば、125cc以下限定規格ではないSGやJIS規格を満たしたヘルメットを選ぶべきだ。また、日本国内においては、国の定めた安全基準を満たしていることを示す「PSC」マークをつけていないヘルメットを乗車用として販売することは禁止されている。
4輪モータースポーツ用ヘルメットは、公道を走る2輪用ヘルメットではない。このような規格を満たしていないため、バイクの乗るときに使うことが推奨されるといえば、答えはノーとなる。
ただし、2輪のヘルメット装着義務を定める道路交通法においては以下のような文言で条件を定めているが、規格について明言されているわけではない。
1)左右、上下の視野が十分とれること。
2)風圧によりひさしが垂れて視野を妨げることのない構造であること。
3)著しく聴力を損ねない構造であること。
4)衝撃吸収性があり、かつ、帽体が耐貫通性を有すること。
5)衝撃により容易に脱げないように固定できるあごひもを有すること。
6)重量が二キログラム以下であること。
7)人体を傷つけるおそれがある構造でないこと。
こうした条件を満たしているのであれば、SGやJISといった規格に合致していないヘルメットであっても使うこと自体は道交法違反とはいえない。PSCマークのないヘルメットについても販売が禁じられているだけで、使用はユーザーの自己責任となっている。
実際、アメリカン系バイクに乗っているライダーには半キャップ型ヘルメットをかぶっているケースもまま見受けられる。大型バイクを乗るのに125cc以下の原付用ヘルメットをかぶっていてもヘルメット着用義務違反といえるわけではないのだ。
その意味では、4輪用ヘルメットでバイクに乗っているからといって法律的に違反だとはいえないだろう。ただし、4輪用として最適設計されたヘルメットは、バイクに乗る際に問題ないといえないのも事実であり、けっして推奨されることではない。

コメント