足を揃え背筋を伸ばして座る日本の俳優と、ソファーにゆったりと座りリラックスした様子のハリウッド俳優。テレビ番組のインタビューシーンに見られるこの違いは、単なるマナーの違いなのでしょうか? ここでは『徹子の部屋』とアメリカのテレビ番組におけるインタビューの比較を手がかりに、その背景にある文化的な違い、そしてビジネスにおける1on1の課題について考察します。本記事は、小川隆弘、氏による著書『成果が出る1on1 部下が自律する5つのルール』(ごきげんビジネス出版 ブランディング)から一部を抜粋・再編集したものです。

フランクに語れない日本人

信頼感が低い上司への部下の態度

1on1で質問をすると、部下はそれに答えようと考えはじめます。関係が良好な上司・部下ですと、部下は率直に自分の考えを上司に話しはじめます。

ところが、部下にとって信頼感が低い上司だと、忖度し、気に入る答えを考えはじめ、自身の考えとは違う答えを話そうとする場合もあるのです。部下自身の考えをフランクに語ってもらうためには、上司・部下の信頼性を改善する必要がありますが、一朝一夕にはできません。チームが安全安心の場である必要もあります。いわゆる心理的安全性が高いチームですと、部下は上司に対して率直に意見を表現できます。

日米のインタビューに見るフランクさの違い

人が率直に語るか、忖度が先か。テレビ番組『徹子の部屋』(テレビ朝日系列)で見るインタビューとハリウッド俳優へのインタビューの違いから見ることができます。

徹子の部屋』に出演する俳優の多くは、行儀よく足を揃え、背筋をまっすぐにし、まるで面接に来たような座り方です。一方、アメリカのハリウッド俳優へのインタビューでは、ソファーにふんぞりかえり、足を組み、大きく手と脇を広げて、非常にリラックスしたスタイルを強調しています。

この差は、実は根深いものがあるのです。日本の場合、視聴者や司会者に対する配慮、気配りを強調しているように見えます。

ハリウッド俳優は逆です。昭和の日本人からすると、ハリウッド俳優のインタビューの姿は、「態度がでかい」「横柄だ」「礼儀を知らない」と感じてしまうことがあるのでは?

実際には、「私はリラックスして、素の自分を出しています。私は皆さんに対してオープンです。どんなことでも聞いてください」といった意図があるようです。つまり、アメリカではフランクさが重要だと考えられているとのことでした。

1on1の前提

日本の部下とアメリカの部下はコミュニケーションにおいて、おそらくこういう違いがあるのではないでしょうか。

1on1はアメリカから導入されているがゆえに、上司・部下がフランクに語る前提があると考えられます。上司に率直に語ることに慣れていない日本では、「やってもムダ」「やったことにしている」「何を話していいかわからない」など、いろいろな事象が起こっていると考えられるのです。

比較的若い日本の企業で1on1が受け入れられやすい理由にもつながります。日本でもZ世代などの若い社員ほど、オープンで率直な傾向があります。昭和の社員は、まわりへの配慮や忖度度は依然として高い傾向があるのです。よい悪いの問題ではなく、こういう傾向があることもおさえておきましょう。

小川 隆弘、

キャリアコンサルタントコーチ、研修講師

※本記事は『成果が出る1on1 部下が自律する5つのルール』(ごきげんビジネス出版)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。

(※写真はイメージです/PIXTA)