
「さす九」とは、「さすが九州」の略語。「男尊女卑」の意識が根強いと言われる九州地方(出身者)を揶揄する言葉としてネットやSNSで広がりつつある。
実際に「さす九」とよばれるようなことは、過去・現在にかけて存在するのか。弁護士ドットコムニュースは、LINEを通じて、読者に「さす九」の体験談や考え、反論も含めて情報を募集したところ、たくさんの声が寄せられた。
そのほとんどは、生まれ育った九州地方の価値観に限界を感じ、県外や海外に出たという女性の体験だった。
ただ、そもそもこのような情報募集をすることだけでも、「九州出身者および九州在住者への誹謗中傷、侮辱と考える」という意見も届いた。
「うんざりする女性」と「問題に気づかないか気づこうとしない男性」という立場が浮かびあった。双方の理解は進むのだろうか。
●女性だけが土間で食事の世話を続ける〈読者のみなさまの「さす九」をめぐる体験談と反対意見を募集します〉
弁護士ドットコムニュースでは、3月上旬にこのようなメッセージをLINEで送り、読者の体験を募集した。また、他の地方でのエピソードも求めた。
そうしたところ、20代〜60代まで、九州出身の女性から、生まれ育った地域や親族の男尊女卑と捉えられる価値観が紹介された。
たとえば、福岡県出身の20代後半女性は、法事では「次男家」の女性だけが土間で給仕をさせられ、男性や「長男家」の女性が先にごはんを食べるといった体験が寄せられた。
【20代女性の体験談→】〈「九州脱出に成功!」福岡生まれ20代女性が、どうしても嫌だったこと ネットでは「さす九」に賛否〉
一方で、男性からは「さす九」という言葉を初めて知ったという感想や、そもそもアンケートを実施することに激怒する声も届いた。
●「九州男児は女性に優しいですよ」「九州出身者として怒りを感じ、不愉快極まりない」福岡県で生まれ育った「生粋の九州男児」だと称する50代男性は「九州男児は女性に優しいですよ。本当に女性を、大切にしてますよ」と強調する。「さす九」という言葉自体は知らなかったといい、長文で怒りをあらわにした。
「九州出身者として言葉にできないほどの怒り、憤りを感じており、不愉快極まりない」
「このアンケートの拡散は、九州出身者および、九州在住者への誹謗中傷・侮辱である」
この男性と同じように、「さす九」という言葉を知らなかった、あるいは「聞きたくない」という声も届いている。
「今さら『さす九』なんてありますか? 進学面では聞いた事もありませんし聞きたくもありません」(80代男性)
●問題にうんざりする女性、問題の存在を認識していない男性女性たちからは生まれ育った九州地方の地域の"男尊女卑"の価値観に苦しんだエピソードが寄せられた。
一方で、男性たちは「九州男児は女性に優しい」と語り、「さす九」について初耳だったと語る。
男女の間で会話が噛み合わないような状況の一端がみえてきた。問題が顕在化することから始めなければ、いつまでたっても「さす九」に苦しむ女性は消えない、とは言い過ぎだろうか。
当然ながら、男性であっても、同じような考えの人ばかりではない。
福岡県在住の30代男性は、父親のDVで両親が離婚し、母方に引き取られた経験があるという。「そちらの男性陣はとても優しい人たちでした」と振り返る。
「『さす九』があるかどうかで言えば、そういう家庭はあるが、そうでない家庭もあるため、家庭・人それぞれであるとしか言えません。『さす九』があるとしても、若年層はそうでもないかとは思います。九州でも偉そうな男は男女問わず嫌われるというのが僕の実感です」(この30代男性)

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