
アメリカで、本来は白いはずなのに、鮮やかなオレンジ色の色彩をまとったシロフクロウが発見されて話題になっている。
なぜこのフクロウはこんなあでやかな姿になっているのか?その理由について様々な憶測が流れている。
遺伝子変異説のほか、何かの塗料がついた説、はたまたフラミンゴのように食べた餌の色が発現した説など、様々な説が飛び交っているが、果たしてその真相は?
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鮮やかなオレンジ色のシロフクロウが発見される
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2025年1月、野鳥観察家で写真家のビル・ディラーさん[https://www.pixoto.com/billdiller]は、ミシガン州ヒューロン軍で奇妙な鳥を撮影した。それは鮮やかなオレンジがかった赤い羽根を持つシロフクロウだった。
最初にこの写真がSNSに投稿された時、「フェイクでは?」「誰かが色を塗ったのでは?」といった疑惑が起こり、投稿者を非難するコメントが寄せられたという。

だがその後、他にもこのシロフクロウを目撃・撮影した人々が現れて、世間の関心は「なぜ色のついたシロフクロウがいるのか」という疑問へと移っていった。
ネット上ではさまざまな説が提唱されたが、これと言った決め手となる有力な説はまだ現れていない
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シロフクロウとは、名前の通り真っ白い羽で覆われた大型のフクロウの仲間で、冬になると餌を求めて北極圏から亜寒帯まで南下する。
北海道にもたまにやってくることがあり、今回の個体が発見されたヒューロン郡では、この時期頻繁に見かけられるそうだ。
確かにかつては、鳥類学者たちが鳥たちの行動範囲を把握するために、スプレーペイントでシロフクロウに色をつけていた時代もあったそうだが、それは1960年代までのことだという。
もちろん現在では研究者たちが色をつけることは行われておらず、今回のミシガン州のシロフクロウに関しても、アメリカの連邦鳥類標識調査事務局およびシロフクロウの年間移動を研究しているNGOのProject Snow Storm[https://www.projectsnowstorm.org/posts/no-were-not-dyeing-owls-red/?fbclid=IwY2xjawJCQR1leHRuA2FlbQIxMAABHdZdva9-xQtnL_yd_xKNKvZW4-qBKgVse4tihmtEV83r4NkwbWdiPBBnEQ_aem_BKSamFKJo91mOu0-LTKmVQ]がはっきりと否定している。
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専門家は遺伝子変異説を提唱
鳥類の色彩について長年研究してきたミシガン州立大学のある研究者は、このシマフクロウのオレンジ色の模様は、環境ストレスによって引き起こされた何らかの遺伝子変異によって生じたのではないかと話している。
同大統合生物学部長のケビン・マクグロー教授によると、通常なら「ダウンレギュレーション(発現低下)」するはずの遺伝子が、環境に誘発されて発現した可能性が高いというのだ。
毒素や汚染物質、農薬、重金属汚染物質、酸化ダメージといった環境ストレス要因など、いくつか原因として思い浮かぶことはあります。
おそらくは何か特殊なものに晒されたのでしょうが、断言はできません。それは母鳥に起こったことかもしれず、母鳥からこの個体に伝わった可能性があるからです
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マクグロー教授は、遺伝子の異常が何であれ、この鳥のメラニン合成経路に関連していることはほぼ間違いないと説明する。
環境的な何かがフェオメラニン色素合成経路を活性化させ、この個体が赤みがかった栗色を過剰に発現するようになったのです
フェオメラニンは、黄色や赤色のメラニン色素の一種で、肌や髪の色を決定づける色素である。
さらにマクグロー教授は、シロフクロウがこういった色に変色したことで、大型の捕食動物に狙われやすくなったり、雪に覆われた冬景色の中で、獲物を狙うのが難しくなったりする可能性を指摘している。
写真家が確認したところ、本当に見事なオレンジ色だった!
野生動物写真家のジュリー・マガートさん[https://www.instagram.com/exposingnaturethroughmylens/]は、SNSに掲載されたこのシロフクロウの写真を見て、2025年2月初旬、自宅から約1,500km離れたミシガン州へと車を30時間走らせた。どうしても自分の眼で確認したかったからだ。
私はもう6年ほどシロフクロウを追いかけていますが、もしスプレーを浴びせられたというのなら、今までに目撃したことがあるはずです。これまで何百羽ものシロフクロウを見てきました。
30時間かけた甲斐があって、ジュリーさんは件のシマフクロウを発見し、見事撮影に成功した。彼女の写した写真はSNSで共有され、大きな反響を呼ぶこととなった。
- なんてゴージャスな鳥なんでしょう
- こんな色になった理由をぜひ知りたい!
- とても美しいし、この姿を見られてうれしいけれど、この珍しい色のフクロウを見せることの弊害は想像に難くない。科学者たちは捕まえて繁殖させようとするだろうし、ハンターたちはコレクションにしたがるだろうから
- 科学者は密猟者とは違うよ。科学者は動物たちを飼育下に置くより野生のままにしておく方が有益だと理解しているし、そうやって野生動物を搾取しようとする連中と闘っているんだ
- どうして動画がひとつもないの?
- AIが作ったみたいだ
- 人間による汚染が原因でオレンジ色になったんじゃないかという意見に心が痛む。おそらくそれが現実だろうし。この色のせいで、狩りをするのが難しくなるかもしれない。本当に美しいとは思うけど
- 難燃剤のような物質による汚れの可能性が高い。副翼羽(ふくよくう:尺骨に付着している羽。次列風切羽とも)に色がついていないのは、翼を折りたたむ際に隠れるからだ。つまり、このシロフクロウがどこかに止まっている時に色がついたと考えられる。さらにそれぞれの羽の模様には明確な境界がある。これは羽が重なり合っていたための、下にあった羽に色がつかなかったからだろう
- 有力なのは空港の除氷剤だと思う。もし遺伝的なものだとしたら、羽毛が完全にオレンジか白になる可能性が高い。写真を見ると、一部が白くて一部がオレンジになっているのがわかる。これは何かが飛び散ったように見える。それにシロフクロウは空港で過ごすのが大好きなんだ
- 何かに染まった時の特徴があるし、こんな色を発現させる遺伝子変異はない。変異っていうのは通常、色素を除去するもので、もともと存在しなかった色素を追加するものではないんだ。暗い色の色素が取り除かれて、赤く見えるようになることはある。でも白から色素を除去して赤くすることはできないよ。それに遺伝的なものなら、翼の下側や下半身にも現れるはずなんだ
- 遺伝的なものだっていう「専門家」は完全に間違っている。僕は鳥を含む野生動物のマーキングについて長年の経験があるけど、このシロフクロウは染色された鳥の特徴を全て備えている。飛んでいる写真を見ると、オレンジ色の羽の裏側が白くなっているのがわかる。遺伝によるものなら、羽の裏側にも色がついているはずだ
新たな写真から塗料がついた説が再浮上
ジュリーさんの投稿を見た人々からは、「美しい」という感想のほかに、「これは、何かの塗料がついたもの」という意見が寄せられた。遺伝子によるものだという「専門家の説」は間違いだというのだ。
そして2月下旬になって新たに撮影されたシマフクロウの写真から、どうやら「色が薄れてきている?」状態が確認された。
こちらの2枚を比較してみると、確かに鮮やかだった顔の赤~オレンジ色が消えて、すっかり白くなっている。

最初の頃に撮影された写真と比べると、まるで別鳥のようだ。いや、もしかすると本当に別の個体なのか?
そこでここへ来て、「やはり誰かが色を塗ったか、塗料や難燃剤、凍結防止剤を浴びてしまったのでは?」という説が有力となってきているようだ。
もちろん、多くの生き物たちの中には、白いシャチなどのように遺伝子のイタズラによる色の変異を持つ個体は存在する。だが今回のようなオレンジ色のシロフクロウは極めて珍しいのも事実である。
だが今回の個体に関しては、まだ結論は判明していない。
ジュリーさんもどちらの説を信じたら良いのか、確信が持てずにいるという。
今後誰かが真相を知ることになるかどうか、私にはわかりません。ただ私は、このシロフクロウを直接観察できただけでなく、(写真を)世界と共有できたことを光栄に思っています。これは一生に一度あるかないかのチャンスだったかもしれません
References: One-Of-A-Kind Orange Snowy Owl Leaves Scientists Scratching Their Heads[https://www.thedodo.com/daily-dodo/one-of-a-kind-orange-snowy-owl-leaves-scientists-scratching-their-heads] / How Did a Snowy White Owl Turn Orange & Red?[https://www.manuelahoelterhoff.com/home/2025/3/12/snowy-owl]
本記事は、海外で報じられた情報を基に、日本の読者に理解しやすい形で編集・解説しています。

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