●「終の部屋」で起こる「天女の呪い」の事件の謎
不動産物件で起こる奇々怪々な事件の謎を解決していくフジテレビ系ドラマ『問題物件』(毎週水曜22:00~)。26日に放送される最終話(※FODで先行配信中)は、「終の部屋」で起こる「天女の呪い」の事件の謎を解いていく。

○自分の命はもうわずか…元家政婦・えみちゃんが登場

犬頭光太郎(上川隆也)が姿を消してから1か月が経った。犬頭がいなくなってからというもの、若宮恵美子(内田理央)は、外出するようになった室長の大島雅弘(宮世琉弥)とともに調査依頼に取り組んでいたが、一件の解決に1か月もかかり、片山芳光(本多力)からはこのままでは販売特別室の存続も危ぶまれると嫌味を言われる始末。そして、有村次郎(浜野謙太)もまた犬頭がいなくなったことに悲しみを募らせていた。

ある日、大島家の近くで年配の女性がバイクに轢(ひ)かれそうになるところを目撃した恵美子。助かったその女性は、3年ほど前まで雅弘のお世話をしていた元家政婦の薦田恵美子・通称「えみちゃん」(浅野ゆう子)だった。えみちゃんは自分の命がもうわずかだと考え、雅弘を一目見ようと大島家を訪れていた。

その理由は、えみちゃんの住んでいるサービス付き高齢者向け住宅“アストラ”の中にある「終の部屋」が原因だった。まずは203号室、次に303号室、そして403号室と、次々に住人が心不全で亡くなっているという。「天女の呪い」のせいだと言われているのだが、503号室に住むえみちゃんは、次に自分にお迎えが来るのではと恐れていた。恵美子と雅弘は、2人で協力して調査をすることに。

アストラに訪れた恵美子と雅弘がスタッフの津島誠(渋谷謙人)と西茉由香(星乃夢奈)の話を聞いていると、ある人物が現れる。

○雅弘が心を許す2人の恵美子

今回の調査対象は、雅弘の元家政婦のえみちゃんが住む住宅。小さい頃の雅弘を知るえみちゃんは今もなお、大島家への想いは強い。当時の話をし、部屋には雅弘が描いた落書きや絵が飾られていた。そんな彼女から父の本当の想いを聞き、驚く雅弘。恵美子、有村に影響され意識が変わった雅弘が、さらにえみちゃんの話に凛とした表情も見せるようになり頼もしくも感じる。

ところで、恵美子とえみちゃん。雅弘を温かく見守り、雅弘も心を許しているのが、くしくも同じ名前だというのが分かりやすくも面白い。また、「あの人物」も登場。最後までちょっとしたシーンでクスっとさせられる。

●「頼れる人には頼ってお互いにできないことを補っていけばいい」
神出鬼没でつかみどころのない犬頭の行動に、はじめは振り回されていた恵美子と有村。しかし独自の手法で次々と問題を解決していく頭の切れの良さと、その存在感はあまりに大きく、「またな」という言葉を最後に姿を消したことに、すっかり意気消沈する。それでも事件を解決しようと試みる取り残された「ワンチーム」。恵美子の風貌や言動は探偵風で「レッツゴーです!」「見えた!」とすっかり犬頭口調だ。一方でインパクトの強い有村の影響からか、いつしか雅弘の話し方が有村に似てきて……そんな個性豊かなワンチームに最後まで目が離せない。

その犬頭だが、冷静な表情で事件を解決し、恵美子には時として「全然違う!」と厳しくダメ出しする反面、カニとエビのモノマネモーニング娘。を踊るなどユーモアあふれる姿もあり、まさに終始「予測不能」な人物だ。一方で雅弘に対しては、「お疲れ様でございます」とリスペクト感あふれる柔和な表情を見せる。

また、体が不自由なことを恐縮する雅弘に対して、“人と暮らしている犬は食事や散歩なども人間に頼りっきりだが、それは犬だけではなく、人にも誰しもできることとできないことがあり、頼れる人には頼ってお互いにできないことを補っていけばいい”と語る。この言葉には雅弘だけでなく、こちらまで勇気づけられる。

このように、全話を通してバラエティに富んだ表情や言動の緩急とギャップ、そして「犬の生まれ変わり!?」とまで思わせる愛嬌があるが、強烈な犬らしいしぐさや行動がごく自然なのは、さすが様々な役を演じてきた上川の器用さと引き出しの多さだと改めて感服する。

そこに、決して華やかではないが、鮮やかで色とりどりの華を添えたのが、内田演じる恵美子だ。ひたむきで真面目がゆえに、犬頭とは違う意味で「予測不能」な行動も多いが、かといって決して周りに不快感を与えることもなく、親しみやすく柔らかい雰囲気を醸し出し、温かく包み込んでいく。

2人のシーンは、最終回を迎えてしまうのが惜しいくらい、見ていて心地良いバランスであり、ナイスバディだった。

○「人だろうと犬だろうと、大切なことは共通している」

犬頭の犬ファーストの発言も最後まで健在。犯人に「言語道断だ!」と言い放つシーンでは、恵美子も思わず「そこ?」とあっ気にとられる。しかし、犬目線で語ってきたことには常に「人だろうと犬だろうと関係なく、大切なことは共通している」というメッセージが込められていた。自分の正体を知りたいと踏み込んでくる恵美子にも「そんなことはどうでもいいのではないのか?」と言いたいのではないのだろうか。

そして忘れてはいけないのが犬太(コラレ)の存在だ。雅弘の心のよりどころだけでなく、いつしか恵美子の話し相手にも。出てくるだけでホッとさせられる存在で、恵美子ではないが、意見を求めたくなるのも納得する。きっと語らずとも全てを分かっているのだろう。

そもそも犬は人間より視野が広い。我々も「犬目線」に高さをちょっと落として、一歩下がった立ち位置から周囲を冷静に見てみると、犬太のように見えてくることがあるのかもしれない。そして犬頭が語る「本当に大切なこと」に気付くことができるのでは。そんなことを考えながら見る犬頭の「ラストメッセージ」には思わずグッとくるものがある。
(佐々木順子)

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