
「私の会社には、業務時間外に、業績評価にかかわる勉強会があります。これは、サービス残業に該当しないのでしょうか」。このような相談が弁護士ドットコムに寄せられています。
相談者の会社には、業務時間外に「自主教育」と称した勉強会があります。この勉強会は「評価に関係しません」と明記されています。また、書籍・場所代・資格検定の費用など、給料以外の費用は会社が支払ってくれます。
しかし、この勉強会では出欠が取られており、業績評価の際に、勉強会への出席が考慮されているようです。
このような勉強会は、いわゆるサービス残業だとして賃金を支払わないのは違法ではないのでしょうか。大西信幸弁護士に聞きました。
●業務時間外の「勉強会」も、労働時間にあたる可能性がある──このような勉強会は、サービス残業にあたるのでしょうか。
企業によっては、従業員のスキルアップを目的として、業務時間外に勉強会を実施することがあります。
しかし、勉強会が自主的なものか、実質的に参加を義務付けられているかによって、労働時間に該当するかどうかが変わります。
今回のケースでは、会社側は「評価に関係しない」と説明しているものの、実際には出欠が取られ、勉強会への出席が業績評価に影響しているようです。この場合、形式上は「自主教育」とされていても、実質的に業務の一環とみなされる可能性が高く、労働時間に該当すると判断される可能性があります。
労働時間とは、使用者の指揮命令下にある時間を指します。勉強会が完全に自由参加であり、欠席による不利益が一切ない場合は、労働時間には該当しません。
しかし、評価への影響がある場合、従業員が「実質的に参加を強制されている」と感じる可能性があり、労働時間と判断される場合があります。この場合、会社が賃金を支払わないことは違法となります。
●これまでの勉強会の時間を「労働時間」として、賃金請求ができる可能性──今までの勉強会の時間分の賃金を請求できますか
労働時間に該当すると認められれば、未払い賃金として請求できます。
ただし、賃金請求には時効があり、2020年4月の労働基準法改正により、当面3年(将来的に5年へ延長予定)となっているため、早めの対応が重要です。
●業績評価を争う余地も──勉強会を欠席したことを理由として業績評価が下がった場合、この評価を修正するよう要求できるのでしょうか
業績評価の基準は会社の裁量に委ねられますが、評価制度が労働契約法違反となり、違法と判断される可能性があります。
特に、業務時間外の活動を評価基準に含め、実質的に残業を強要するような仕組みになっている場合、不当な評価として争う余地があります。
●証拠を整理した上で、是正を求めていくことを検討すべきこうした問題に対処するためには、出欠記録や評価基準の資料などの証拠を整理し、会社と交渉することが重要です。それでも改善されない場合は、労働基準監督署への相談や、弁護士に依頼して未払い賃金の請求や評価の是正を求めることを検討すべきでしょう。
【取材協力弁護士】
大西 信幸(おおにし・のぶゆき)弁護士
大阪府出身。平成18年3月立命館大学大学院法務研究科法曹養成専攻修了(法務博士)。平成19年9月新司法試験合格。平成20年12月大阪弁護士会登録(新61期)。平成21年1月〜23年12月大阪市内の法律事務所にて勤務弁護士、平成24年1月大西信幸法律事務所開設(代表弁護士)。労働問題のみならず、交通事故、借金問題、相続・離婚問題、刑事事件等、幅広く対応。所属:大阪弁護士会
事務所名:弁護士法人ラポール綜合法律事務所
事務所URL:https://rapport-law.com/

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