高額な献金被害などが問題とされている世界平和統一家庭連合(旧統一教会)について、東京地裁は3月25日、国の請求を認めて教団に解散を命じる決定を出した。

世界平和統一家庭連合はHP上で「到底、承服できるものではありません」などとするコメントを出し、東京高裁への即時抗告を検討する意向を示した。

一方、旧統一教会による被害対策にあたってきた弁護団は「裁判所が深刻で膨大な被害の実態を正しく理解したものであり、高く評価する」などとする声明を発表した。

●過去の2件は最高裁で確定するまでに8カ月〜3年

統一教会をめぐっては、文部科学省が2023年10月、宗教法人法にもとづいて解散命令を請求していた。

解散命令が出たのはオウム真理教と明覚寺に続き、今回で3件目。ただ、地裁の決定に対して高等裁判所に不服申し立て(即時抗告)できる仕組みがあり、過去の2件では、最高裁で確定するまでに8カ月〜3年がかかっている。

被害対策に取り組む弁護団によると、仮に教団が解散しても、教団の財産を保全する具体的な手続きが規定されていないことから、被害者救済のための特別措置法の制定などを国に求めている。

宗教2世「喜ばしいはずなのに何の喜びもない」

解散命令が出たこの日、教団の問題に関わってきた弁護士や宗教2世らが記者会見を開いたり、声明を出したりするなどして、真の被害者救済と同様の被害が繰り返されないことを求めた。

これまでの約40年間、旧統一教会の問題に取り組んできた「全国霊感商法対策弁護士連絡会」の山口広弁護士は記者会見で「解散命令は決して宗教迫害ではない。節度ある宗教活動が実現されることで、宗教に対する信頼を取り戻すきっかけにしてほしいと心から願っています」と強調した。

会見に同席した宗教2世問題ネットワークのメンバーは「旧統一教会の元2世として、本日の決定はとても喜ばしいものであるはずなのに、何の喜びもなかった」と、まだ道半ばである実情を語った。

●弁護団が被害者や信者の相談窓口

全国統一教会被害対策弁護団」の川井康雄弁護士は「今回、解散命令が出たことで一般の方は教団の問題が一区切りついたと思われるかもしれないが、救済は本当にこれから」と話した。

同弁護団は「裁判所が多くの被害者やその家族の声に真摯に耳を傾け、深刻で膨大な被害の実態を正しく理解したものであり、高く評価する」「統一教会は本日の解散命令を重く受け止め、これまで甚大な被害を発生させたことを猛省すべきです」などとする声明を出した。

また、同弁護団は「引き続き、統一教会に関する相談をお受けし、全力で被害者救済に取り組んでまいります。現在信者である方も含め、ぜひ当弁護団にご相談ください」としており、相談窓口は以下の通り。

▼電話:03−6261−6653(平日午前10時半〜午後3時半)

▼相談フォーム:https://www.uchigai.net/#(365日24時間)

世界平和統一家庭連合「日本の信教の自由に大きな禍根を残す」

解散命令を受け、世界平和統一家庭連合はHPで「東京地裁決定に対する当法人の受け止めと見解について」と題する文章を発表した。

コメントの全文は以下の通り。

<本日、東京地裁は世界平和統一家庭連合に対する解散命令請求について、解散命令を認める決定を行ないました。誠に遺憾ではありますが、今回の判決内容を重く受け止めつつ、東京高裁への即時抗告を検討して行く所存です。

今回の決定は、誤った法解釈に基づいて出された結果であると言わざるを得ず、当法人としては到底、承服できるものではありません。

また、今回の決定は宗教法人法の法令違反に関して、これまで解散事由になかった「民法の不法行為」が含まれましたが、これは、民法上の不法行為が宗教団体の解散事由に該当するということに他ならず、日本の信教の自由、宗教界全体に大きな禍根を残すものと考えます。   決定の不当性についてはこの後、詳しくご説明いたしますが、日本の宗教を大きく揺るがすものとなることは間違いありません。

安倍元首相の事件以降、メディアやSNSなどを通じて当法人に対し誤った見方が非常に多く流布されました。これにより、当法人の信徒の人権が侵害されるケースも相次ぎました。今回の決定が原因で、国民の皆様や一般社会に当法人信徒への不当な差別等が起こることが無いよう、心より強くお願いする次第です。   当会は、1人1人の信徒の皆さまが日夜、誠実に教義を実践する宗教団体です。

信徒の家庭に生まれた信教2世の皆さまも、その7割以上が「家庭連合の2世に生まれて良かった」と主張しています。そのような宗教団体に対して解散命令を認める今回の決定がどれほど誤っているのか、その不当性を多くの国民の皆さまにも知っていただきたいと思います。>

旧統一教会に解散命令 宗教2世「根本的な解決にはほど遠い」 、教団「即時抗告を検討」