
イギリスの郵便サービス「ロイヤルメール」が、新たな切手セットを発表した。英国の神話や伝説をテーマにした興味深いデザインが注目を集めている。
スコットランドのネッシーや、コーンウォールの妖精ピスキー、伝承『ベオウルフ』に登場する巨人の怪物、グレンデルなど全8種だ。
ロイヤルメールは「これらの切手を通じて、英国の豊かな神話の伝統を伝えたい」としており、2025年3月27日から販売が開始される。
では詳しく見ていこう。
英国に伝わる神話と伝説がテーマとなった切手セット
ロイヤルメール(Royal Mail)はイギリスの郵便事業を担う企業で、日本の「郵便局(ゆうちょ)」に相当する。
1516年に設立され、かつては国営だったが、2013年に民営化された。現在も郵便配達や記念切手の発行などを行い、英国文化の発信にも貢献している。
そして新たに発表された切手セットのテーマは「神話と伝説」だ。
全部で6種の切符には、英国各地に伝わる伝説や神話に登場する人物や、怪物、謎生物が、切手という小さなキャンバスに見事に収められた。
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デザインを手がけたのは、ロンドンを拠点に活躍するアーティストのアダム・シンプソン氏。マニアにはたまらない見事な構図となっている。
1.ベオウルフとグレンデル
古代英語の叙事詩『ベーオウルフ(Beowulf)』に登場する英雄ベーオウルフと怪物グレンデルの戦いが描かれている。
『ベーオウルフ』は8~11世紀頃に成立したとされる物語で、現存する最古の英語文学とされる。
スカンジナビアの伝説を基にしており、デンマークの王を救うために戦士ベーオウルフが怪物グレンデルを倒し、その母とも戦う英雄譚だ。
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2.ネス湖の怪物、ネッシー
スコットランドのネス湖に棲むとされる巨大な未確認生物、ネッシー。1933年に最初の目撃証言が報じられて以来、多くの写真や映像が公開されてきた。
しかし、その存在を裏付ける決定的な証拠はなく、UMA(未確認生物)の代表的な存在として世界的に知られている。

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3.コーンウォールのピスキー
イングランド南西部コーンウォール地方の伝承に登場する小さな妖精。人々をいたずらで困らせる存在として知られるが、時には迷子を助けることもある。
ピスキーはケルト文化の影響が強い地域に伝わる精霊で、アイルランドのレプラコーンと似た特徴を持つ。コーンウォールでは今でもピスキーにまつわる祭りが開かれる。

4.ブローデュウェッド
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ウェールズ神話『マビノギオン』に登場する女性で、魔法によって花から作られた存在。夫のルーを裏切り、恋人と共に彼を殺そうとするが失敗し、フクロウの姿に変えられてしまう。
ウェールズ語で「ブローデュウェッド」は「花の顔」という意味があり、彼女の物語は裏切りと運命の報いを象徴している。

5.ブラック・シャック
イングランド東部ノーフォーク州やサフォーク州に伝わる巨大な幽霊犬。
真っ赤な目を持ち、姿を見た者には不吉な出来事が起こるとされる。特に1577年、サフォークの教会で起こった事件では、雷と共に現れたブラック・シャックが人々を襲い、教会の扉に爪痕を残したと伝えられる。
この伝説は『ハリー・ポッター』シリーズの「黒い犬グリム」のモデルになったとも言われている。

6.セルキー
スコットランドのオークニー諸島やシェトランド諸島に伝わる神秘的な生物。普段はアザラシの姿をして海の中で暮らしているが、陸にあがるときは「アザラシの皮」を脱いで人間と化すると言われている
セルキーの伝説は、人間と海の生き物との関係を象徴する物語として語られ、民謡や映画にも影響を与えている。

7.グリンディロー
イングランド北部のランカシャー州やヨークシャー州に伝わる水辺の精霊。青白い肌と細長い手を持ち、川や池の近くで遊ぶ子どもを水中に引きずり込むとされている。
グリンディローの伝説は、子どもが危険な水辺に近づかないようにするための戒めとして生まれたとも考えられている。

8.フィン・マックール
ケルト神話に登場するアイルランド神話の英雄で、戦士団フィアナの指導者。巨人のような力を持っていたとされる。
レンスター国のバスクナ一族の生まれで、生来の名はディムナだったが、金髪で肌が白くて美しいことからフィン(色白の意)と呼ばれるようになった。
最も有名な伝説のひとつが「巨人の道」にまつわる話だ。
ある日、フィン・マックールはスコットランドの巨人ベナンドナーと戦うことになる。アイルランドからスコットランドへ渡るために海に石を並べて橋を作るが、スコットランドに着くと敵が予想以上に巨大なことに気づく。
恐れをなしたフィンは妻の機転で赤ん坊に変装し、ベナンドナーは「この赤ん坊の父親がこんなに大きいなら、フィンはどれほどの巨人なのか」と驚き、逃げ帰った。そして橋を壊し、その名残が「ジャイアンツ・コーズウェイ」として残ったとされる。
スコットランド側には、フィン・マックールに関連する「フィンガルの洞窟」がある。
スコットランドのスタッファ島にあるこの洞窟は、アイルランドのジャイアンツ・コーズウェイと同じ六角形の玄武岩柱でできており、かつては2つが繋がっていたと考えられている。
18世紀の詩人ジェームズ・マクファーソンが、アイルランドの伝説を元に「フィンガル(Fingal)」という名の英雄を描いたことで、この洞窟がその名で呼ばれるようになった。
19世紀には作曲家メンデルスゾーンがこの洞窟を訪れ、『フィンガルの洞窟 序曲』を作曲するなど、文化的にも大きな影響を与えている。

切手が語る物語
ロイヤルメールの広報担当者デイビッド・ゴール氏は、「地域ごとの伝説は、地元のランドマークや建築物と同じくらいその土地のアイデンティティの一部だ。今回の切手は、英国文化の魅力を改めて感じさせるものになった」とコメントしている。
デザインを手がけたシンプソン氏もまた、「これらの切手をきっかけに、人々が神話や伝説について話し合ったり、興味を持って調べたりするきっかけになれば嬉しい」と語る。
8種セットで13.20英ポンド(2.567円)、購入はロイヤルメールの公式ホームページ[https://shop.royalmail.com/myths-legends-stamp-set]から受け付けている。
References: Shop.royalmail.com[https://shop.royalmail.com/myths-legends-stamp-set]
本記事は、海外の記事を基に、日本の読者向けに重要なポイントを抽出し、独自の視点で編集したものです。

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