
BBC Earth[https://www.youtube.com/@bbcearth/featured]の「Spy in the Wild」シリーズで、ロボットカメラプロジェクトを担当しているジョン・ダウナー・プロダクションズ[https://jdp.co.uk/]。
彼らは本物そっくりなスパイカメラを仕込んだロボットを野生動物の中に送り込み、彼らの赤裸々な日常を撮影するという、実験的なミッションを行っている。
今回彼らが企画したのは、リクガメ型のロボットカメラをチンパンジーの群れに潜入させるミッションだ。
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セネガルのジャングルにスパイ「亀」カメラが潜入
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今回のミッションの舞台となったのは、アフリカのセネガルにあるジャングルだ。プロジェクトチームはまず、ブッシュベイビーの姿を模したスパイカメラを、木のうろに置いて、周囲の状況を観察することに。
ブッシュベイビーは、くりっとした大きな目が特徴の小型霊長類だ。早速興味を持ったチンパンジーの群れがやってきて、ブッシュベイビーにご挨拶。

彼らはこのエリアに暮らしているチンパンジーのファミリーだ。ここでは親の愛と仲間同士の友情が、彼らの社会生活の基盤となっているのだ。
ここでチームは、リクガメの姿のスパイカメラを投入。怪しまれずにチンパンジーの群れに近づくにはうってつけのロボットだ。
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だがチンパンジーたちは「何かがおかしい」と感じたようだ。亀カメラとつついたり、遠巻きにして眺めたりと、少々困惑しているようにも見える。

亀カメラに夢中の5歳児チンパンジー
だが、この5歳のチンパンジーの子供は、どうやら好奇心に負けてしまったらしい。亀カメラへの興味は増すばかりだ。
そして近くで観察し続けているうちに、彼はこの亀カメラに愛着を持ち、自分のものにしたくなってしまったようだ。
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他の子供たちが亀カメラに触ろうとすると、怒って追い払うようになったのだ。

彼の独占欲はさらに強くなり、しまいには亀カメラを引き摺って、いつも自分が昼寝をしている「秘密基地」まで連れて行った。
そして仲間の目から隠すためか、それとも布団をかけてやるつもりなのか、亀カメラの上に木の葉をかぶせて覆ってしまう。
さらに亀カメラに寄り添い、抱っこして、一緒にお昼寝を始めたのだ。まるでお気に入りの枕やオモチャ、あるいはペットにするように。その様子からは、彼がこの亀カメラにある種の愛情を抱きはじめたようにも見える。
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その後も他のチンパンジーが亀カメラに近づくと、彼は怒って追い払い、また場所を移動し、の繰り返し。
地面を引き摺り、ゴツンゴツンとあちこちにぶつけて歩くものだから、亀カメラにしたらいい迷惑だ。しまいには落っことされ、ひっくり返ってしまいじたばた。
この後もこの5歳児は、仲間が亀カメラに近づくことを許さなかったようだ。
「独り占めしたい!」欲求に勝てなかった模様
そんな独り占めしたいお年頃のチンパンジーに、動画を見た視聴者からは「可愛い」という感想のオンパレード。さらにこんなコメントも寄せられていた。

特定の物に愛着を見せる行動は、他の動物たちの間で見られることも。例えばステンレスのボウルに執着する犬とか、ブランケットを放さない猫とか。
だがこれまで、チンパンジーが特定の物に対して執着や愛着、そして所有欲といった感情を抱くことがあるのか、はっきりとは知られていなかった。
チンパンジーは知能が非常に高く、人間に近い喜怒哀楽の感情を持ち、笑ったり仲間を気遣ったり、あるいは嫉妬したり相手の顔色を窺ったりもすると言われている。
今回のこのチンパンジーは、まるで子供がお気に入りのぬいぐるみを独り占めしたがるように、亀カメラを「自分だけのもの」にしたがっているように見える。
亀カメラに対するこのチンパンジーの行動は、彼らの持つ感情の奥深さを示す貴重な観察例となったようだ。

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