旧1万円札が使えない。偽札ではないのか――。こんな内容の投稿がX上で話題になっている。

投稿によると、旧札には偽造防止のための「ホログラム」が入っていなかったという。

しかし、実は、福沢諭吉の描かれた旧1万円札は「2種類」あり、ホログラムがなくても偽札とは限らないのだ。

発行元である日本銀行に両者の違いや交換の方法を聞いてみた。

⚫︎ホログラムも無く、機械にもはじかれる旧1万円札

投稿者は、海外の空港で両替した旧1万円札をパチスロで使おうとしたが、何度も機械にはじかれたようだ。

偽造防止のために使われている「ホログラム」も入っていないことに気付き、偽札ではないかと疑ったという。

戸惑う投稿者に対して、リプライには「初代諭吉」「2代前の旧札なのでは」といった声が寄せられている。

⚫︎福沢諭吉が描かれた旧1万円札は2種類ある

福沢諭吉の肖像画がデザインされた旧1万円札は、1984年から2007年まで発行されていたものと、2004年11月から発行されているもの(印刷は終了)の2種類ある。

ホログラム以外の違いについて、日本銀行発券局の担当者に尋ねたところ「全然違いますよ」と苦笑いされてしまった。

担当者に言われるままに両者をよく見比べてみると、ホログラムの有無以外にも、裏面のデザイン、透かしが浮かぶ円の形、全体的なレイアウト…。肖像画が福沢諭吉であること以外、「まったくの別物」だった。

発券局によると、2024年末で流通している1万円札は約115億枚。しかし、このうち何枚が旧1万円札かは公表していないという。

担当者は、どちらの旧1万円札も使用は可能としたうえで「偽造かどうか不安な場合は日本銀行の本支店もしくは一般の銀行に持ち込めば確認できる」とした。

これらの銀行では、渋沢栄一が描かれた新1万円札への交換も可能だという。

⚫︎偽札だと知った後に使用すると処罰される

もし仮に偽札だった場合はどうなるのか。

手に入れたときには本物だと思っていたお札が、偽札だとあとで気づいた場合、そのまま使ってしまうと、「偽造通貨拾得後知情行使罪」(刑法152条)という犯罪になってしまうので注意が必要だ。

刑法152条は以下のように規定している。

(収得後知情行使等)
第百五十二条 貨幣、紙幣又は銀行券を収得した後に、それが偽造又は変造のものであることを知って、これを行使し、又は行使の目的で人に交付した者は、その額面価格の三倍以下の罰金又は科料に処する。ただし、二千円以下にすることはできない。

「額面価額の3倍以下の罰金または科料(2000円以下にはできない)」という法定刑は、通常の偽造通貨行使罪(刑法148条2項、無期または3年以上の懲役。※裁判員裁判対象事件)と比べると、かなり軽い法定刑になっている。

これは本物だと思って手に入れたお札が「偽札だ」とあとで気づいても、その人自身も被害者であり、ついそのまま使ってしまうことをそこまで強く責められない、という理由によるものといわれている。

ただし、犯罪であることは明らかで、場合によっては、警察からあらぬ疑いをかけられることも考えられる。

たとえば、「最初から偽札だと知っていて入手し、使ったのではないか?」と、非常に重い罪である通常の偽造通貨行使罪の疑いで捜査対象とされかねない。

いろいろと面倒に巻き込まれることを避けるためにも、偽札だと気づいた段階で、すぐに警察に届け出たほうがよいだろう。

諭吉の1万円札、ホログラムなくても「偽札」とは限らない…実は「2種類ある」旧札、見分け方や交換方法は? 日本銀行に聞いた