
厚生労働省から令和6年の『賃金構造基本統計調査』の結果が発表され、最新の会社員の給与事情が明らかになりました。今回は新卒社員の平均給与に注目してみていきましょう。
賃上げの流れにのり、新卒社員の平均給与も上昇
厚生労働省『令和6年賃金構造基本統計調査』によると、新規学卒者(未就業入職者のうち新卒の者)の平均給与は23万5,200円。昨年から1万0,800円上昇しました。
男女別にみていくと、男性が23万8,000円、女性が23万2,000円。会社員の男女間の給与格差(男=100)は75.8。新卒社員の段階では、そこまで明確な給与格差は生じていません(参考記事:『47都道府県「会社員の平均給与」最新ランキング!1位「東京」と47位「宮崎」の酷すぎる格差。「実感なき賃上げの実情」が明らかに』)。
また学歴別にみていくと、「高卒」が19万7,500円、「大卒」が24万8,300円、「院卒」が28万7,400円。同じ新卒社員でも学歴による給与差は明確です。ちなみに大卒新入社員の平均給与は昨年から1万1,000円上昇しています。
さらに企業規模でみていくと、「従業員10~99人企業」の大卒新入社員の平均給与は21万7,800円、「従業員100~999人企業」で22万8,900円、「従業員1,000人以上企業」では24万7,800円。その差、3万円。平均給与で学歴間の給与格差をみていくと、大学の給与を100とした際、高卒は月収で74.8、年収で73.7。院卒は月収で128.8、年収で136.0。新卒の段階ではそれほど大きな格差ではありません。長い長い会社員人生のなかで格差は拡大し、大きくなっていくことがわかります。
業種別にみていくと、最も平均給与が高いのは「鉱業、採石業、砂利採取業」で27万9,400万円。対して最も低いのが「複合サービス業*」で21万0,600円。新卒1年目であるものの、すでに7万円弱の給与差が生じています。
*信用事業、保険事業または共済事業と併せて複数の大分類にわたる各種のサー ビスを提供する事業所
一方で業種別に全年代の平均給与をみていくと、最も高いのは、「電気・ガス・熱供給・水道業」で43万7,500円。「金融業、保険業」が41万0,600円、「学術研究、専門・技術サービス業」が40万1,800円と続きます。一方で最も平均給与が安いのが「宿泊業、飲食サービス業」で26万9,500円でした。最終的に高給を目指すのであれば、新卒時の給与に加えて、そのあとの上昇幅にも注目することが重要です。
都道府県別に「大卒新入社員の平均給与」をみていくと
大卒新入社員の平均給与について、都道府県別(男女計)にみていきましょう。トップは「群馬県」で28万4,500円。続く「滋賀県」は26万6,700円。「愛知県」「千葉県」「東京都」と続きます(参考記事:『【ランキング】47都道府県「大卒新入社員の平均給与」2025…男女計・男性・女性<令和6年賃金構造基本統計調査> 』)。一方で最も安いのは「鳥取県」で21万9,400円。続く「徳島県」は22万0,500円。「宮崎県」「北海道」「沖縄県」と続きました。
【都道府県別「大学新規学卒者の平均給与」上位5、下位5】
2位「滋賀県」266,700円
3位「愛知県」257,200円
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43位「沖縄県」222,800円
44位「北海道」222,700円
45位「宮崎県」222,700円
46位「徳島県」220,500円
また前年からの増加率で比較すると、トップは「群馬県」で前年から5万5,400円増、割合にして124.2%を記録。続いて「長崎県」が前年から3万5,700円増の117.2%。「岐阜県」「栃木県」「青森県」と続きました。一方で増加率が低かったのは「秋田県」で、前年から2万0,800円減の92.2%。全9道県が前年割れとなりました。
今回、大卒新入社員の給与では「群馬県」が前年から大きく伸ばし、47都道府県でトップになりました。平均給与を引き上げたのは建設業。2023年21.7万円から2024年31.5万円と大幅増を記録しています。これが調査企業に限定したものなのか、それとも群馬県全体の傾向なのか、次年度の以降の結果に注目する必要がありそうです。
いずれにせよ、大企業を中心に「初任給アップ」のニュースを耳にしますが、その流れに最ものっているのが「群馬県」という意外な結果になりました。帝国データバンクのまとめによると、2025年4月入社の新卒社員の初任給を引き上げる企業の割合は71.0%。引き上げ額の平均は9,114円。その背景には物価高騰や最低賃金の上昇に加え、人材確保の競争激化があります。その流れは全国的であるものの、実際は地域差があることがわかります。
また新卒新入社員の給与分布をみていくと、大卒においては中央値が24万1,100円。下位25%で22万3,100円、下位10%で20万6,600円。一方で上位25%で26万1,700円、上位10%で29万0,900円。スタートラインは同じでも、上位10%、下位10%では、すでに月収で8万円強、単純に12倍すると、年間で100万円以上の差が生じていることになります。
「仕事はお金じゃない」とはいうものの、転職理由の調査では常に「給与」がトップ争い。「働く以上やはりお金が大切」というのが本音です。そのようななか、新卒の時点ですでに埋めるのが難しいほどの格差が生じているという事実に、どこか諦めを感じてしまうのも現実です。
[参考資料]

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