
幼い女児にわいせつな行為をしたなどとして、強制わいせつ、強姦未遂、児童ポルノ禁止法違反に問われた男性被告人の裁判の判決が3月13日、東京地裁であった。石川貴司裁判長は、懲役5年6カ月の実刑判決を言い渡した。
被害者は、被告人と家族ぐるみで付き合いのある家の子ども。事件発生から数年経ったが、犯行を撮影した動画をオンラインストレージにアップしていたことがきっかけで発覚した。(ライター・渋井哲也)
●被害女児たちとは家族ぐるみの付き合いだった裁判途中から保釈されていた被告人は判決当日、黒のメガネ、黒の長袖Tシャツ、カーキのチノパン、白のスニーカーで出廷した。おとなしそうな印象を受けた。
判決などによると、被告人の妻と、被害にあった女児AちゃんとBちゃん姉妹の母親は高校時代からの友人で、結婚後も家族ぐるみの付き合いを続けており、互いの家を行き来することがあったという。
被告人は、女児たちと一緒に寝ることもあり、そんな中で次のような犯行に及んでいた。
(1)2015年、自宅で女児Aちゃんの下着を脱がせ、その陰部と口に自身の陰茎を押し当てた
(2)2016年、被害者宅でAちゃんの下着を脱がせ、その陰部と口に自身の陰茎を押し当てた
(3)2018年、被害者宅で女児Bちゃんの陰部を手で触り、広げた
(4)2019年、被害者宅で女児Bちゃんの陰部を手で触り、広げた
(5)これらの行為をしている動画を撮影して、オンラインストレージに保存した
少し時間が経ってしまったが、オンラインストレージのサービス会社から警察に情報提供があり、一連の事件が発覚した。
●被告人は「強姦の意図はなかった」と主張した裁判では、起訴事実に争いはなかったが、未遂となった強姦の「意図」があったのかどうかが争点になった。
(1)の事件で、被告人はAちゃんの足を左右に開脚させて覆いかぶさり、Aちゃんの陰部に自身の陰茎を押し当てていた。2024年11月の被告人質問でこう答えていた。
「寝ようとして2階へ行くと、Aが寝ており、見ていたら、性的に興奮してしまいました。仰向けになっていたAの下着を脱がせ、自分の性器をAの陰部に押し当てました。
挿入する行為は絶対にしないです。なぜならば、挿入したらAが起きてしまいます。そうすると犯行が明るみになります。
Aの上に覆いかぶさっていたのは、仰向けのAに、自分の陰茎を押し当てたり、口にくわえさせるためです。
その場面をスマホで撮影をしました。撮影したのは、あとで見返して自慰行為をするためです」
(2)の事件についてもこう述べた。
「被害者宅に私たち家族が泊まりに行っていました。私は先に寝るために2階へあがりました。そこで寝ているAを見て、興奮してしまいました。
自分の陰茎をAの口や性器に押し当てました。そのままスマホで撮影をしました。このときも強姦や挿入の意思はありません」
●犯行動機は「性依存」「ストレス」「飲酒」被告人は、犯行動機として「性依存」「ストレス」「飲酒」をあげた。
「これまではインターネットで性情報を得ていました。それで性的興奮状態を求めていました。ストレスが悪化すると、自宅のトイレなどでも自慰行為をしていました」
「当時の会社の労働環境が問題でした。時間外労働も多く、何週間も休みはない状態が続いていました。深夜12時をまわってから帰宅することもあり、大きなストレスがかかっていました」
「三つ目は飲酒です。犯行当時、正常な判断ができていませんでした。この中で、最も大きな原因は性依存です。自分の精神的未熟さがいちばんの原因です」
●保釈中の受診で「性依存の診断」はされなかった被告人は裁判中に保釈されて、性依存に関する治療のために、2つのクリニックを受診した。しかし、いずれのクリニックでも性依存の診断はされなかった。
こうした点を考慮して、東京地裁の石川裁判長は「身勝手」と断じた。
Aちゃんに対する行為については「陰部に陰茎を押し当てているのは、性交の実行行為とみなすことができる。危険性を認識していたといえるため、強姦の故意が成立する」として、強制わいせつではなく、強姦未遂として認定した。
また、懲役5年6カ月の実刑判決とした理由について、AちゃんとBちゃんの母親が被告人の妻と友人関係であり家族ぐるみの付き合いだったこと、犯行の発覚を恐れて被害者が就寝中に実行をしたこと、そして動画のデータ81件を保存していたことを指摘した。
●「一生地獄の苦しみから抜け出せない」被害女児の母親は、意見陳述で次のように述べていた。
「被告人はおのれの性的な興味のために(娘たちを)道具にした。とても納得できない。生きている中で初めて殺意を覚えた。
娘たちがいつか性的道具にされたと気がついたとき、どうすればいいのかと考えると辛い。一生地獄の苦しみから抜け出せない。
元の生活に戻れないし、被告人を許すことはできない。実刑を望みます」

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