
七海ひろき
俳優・声優・歌手として幅広く活動する七海ひろきが、4月16日に3rdアルバム『Crystal』をリリース。本作は昨年デジタルリリースされたTVアニメ『戦国妖狐 千魔混沌編』のエンディングテーマ「夜の隨」や5th Anniversary Song「Dearest」、植木豪プロデュースの新曲「Skyward」など新曲7曲を含む全9曲収録した。初回限定盤はMUSIC VIDEOやメイキング映像、そして七海ひろきがオリジナルキャンディ作りに挑戦する特典映像を収録したBlu-rayが付属する。インタビューでは、アルバム『Crystal』に込めた想いや、ラップに挑戦したアルバムリード曲「Skyward」の制作背景、アーティストデビュー6周年を迎える心境について、話を聞いた。【取材・撮影=村上順一】
嘘のない世界に引き込まれる
――『KINGDOM』(2020年4月)を取材させていただいたとき、「みんなが楽しく過ごせる世界」が欲しいとおっしゃっていました。昨年5周年を迎え、今、その欲求はさらに強くなっているのではないかと思うのですが、いかがですか?
大前提として、ずっと変わらずに思っているのは、ファンの皆さんや応援してくださる方々を楽しませたい、元気にしたいということです。それが歌、芝居、声優の仕事に関わらず、すべてを通じて楽しんでもらえたらいいなと思っています。
――アーティスト、シンガーとしての心境の変化はありますか。
より歌うことが好きになりました。歌うことが楽しくなったと感じたのは2年くらい前からです。最初は歌に苦手意識があったのですが、皆さんが楽しんでくれている様子を見て、私自身も「もっといいものを届けたい」という気持ちが強くなりました。アルバム『DAYLIGHT』(2023年10月)の時に、歌も舞台や芝居と同じように、1曲の中で起承転結をつけたり、物語性を持たせて没頭して歌うことで、お客さんを自分の表現の世界に引き込めるのでは? と気づいたんです。それが自分には合っていると感じました。
この5年間、さまざまなチャレンジをしてきましたが、試行錯誤の中で「この歌い方なら自分も気持ちよく歌えるし、きっと聴いてくれる人たちも楽しんでくれるのではないか、引き込めるのではないか」と思うようになりました。歌い方を追求する喜びを最近とても強く実感しています。そして、その経験を経て制作した『Crystal』のレコーディングでは、それを意識しながら歌うことがとても楽しかったです。
――歌に苦手意識があったんですか?
宝塚時代から歌は好きだけど苦手でした。そういう感覚がずっと自分の中にあって、それが表に出てしまうと、聴いている方にも伝わってしまいます。そうなると、どんどん硬くなってしまう。この約5年間アーティスト活動をしてきて、今では歌うことがとにかく楽しいし、歌の世界で何かを表現することがすごく好きになりました。その中で 「人の心を動かすものって何だろう?」とよく考えます。
――私も考えますが、答えがなかなか出ないんですよね。
そうなんです。もし答えが出たら、すごく楽なんですけど(笑)。舞台でも、アーティストとしての表現でも、私が強く惹かれるのは「嘘のない世界」なんです。歌が上手いか下手かではなく、本気で伝えたいという気持ちがこもっている歌に、私は心を動かされます。それは舞台も同じで、観ていて感動する瞬間は、作り物ではなく、本当の気持ちが伝わった時に、私は深く感銘を受けます。私も、そんなふうに人の心を動かせるアーティストになりたいと思うようになりました。
曲が光のようにリンクしていく感覚があった
――3rdアルバム『Crystal』が完成しました。タイトルに込めた想いは?
曲を並べてからアルバムのタイトルを決めたのですが、無色透明なものにいろいろな光が当たることで、違う輝きを放つようなイメージが、このアルバムにぴったりだと思いました。しかも、アルバムの発売月である4月の誕生石がクリスタルだったので、「もうこれしかない」と確信しました。
――初回盤のジャケットはモノクロですが、これも『Crystal』とリンクしているのでしょうか。
ジャケ写の一部にクリスタルのモチーフが入っていて、それが映えるようにしたいという思いがありました。全体的なトーンも『Crystal』をイメージさせるようなものにしたいよね、という話をしていたので、クリスタルをより輝かせるためにモノクロがいいなと思いました。
――収録曲もカラフルですよね。
「夜の隨」と「Dearest」がもともとあって、そこから「どんな曲を追加しようか?」と考えていきました。ライブでコール&レスポンスができる曲がほしいよね、とか話しながら作っていった結果、ジャンルにとらわれない、とてもバラエティ豊かな1枚になりました。
――ジャズテイストの「Knock down night」、とても七海さんに合っていると思いました。
ありがとうございます。過去にリリースした「Ambition」と「花に嵐」も少しジャズっぽい雰囲気で、自分でもすごく気に入っている曲なんです。こういった曲調は自分の声質と相性がいいのか、歌いやすいし、気持ちも込めやすくて。今回も『Crystal』の中にそういう曲が欲しいね、という話になって、この曲を選びました。……とはいえ、レコーディングは意外と苦戦した曲でもありました。
――次の「Magic of Love」への流れも印象的でした。
「Magic of Love」は、爽やかで気持ちがいいねと選んだものです。曲順を考える中で、カッコよいものから爽やかなもの、そして切なさ、心を揺さぶる曲へと流れていく感じがしっくりきたので、この配置になりました。
――3曲目の「SASSOU」は、ライブで盛り上がること間違いなしですね。
「SASSOU」は、私が歌うべき曲だというような感覚を受けた曲です。聴いた瞬間に「これは絶対に歌いたい!」となりしました。お祭りっぽい雰囲気があって、ライブではみんなに掛け声を入れてほしいです。ライブで絶対盛り上がると思うので、ぜひ覚えてきてもらえたら嬉しいです。
「Skyward」でラップに挑戦
――植木豪さんプロデュースによるリード曲「Skyward」。プロデュースにはどのような経緯があったのでしょうか?
ヒップホップ系の曲は、数年前からいつか挑戦したいと思っていました。ただ、私はラップをちゃんとやったことがなかったので、「まだ早いかな…」と思って前回は見送ったんです。
――そうだったんですね。
『DAYLIGHT』のツアーが終わってから、舞台『サイボーグ009』や『東洋空想世界「blue egoist」』に出演した際、ヒップホップ系の曲をみなさんと一緒に歌う機会がありました。そういう機会が身近にあったことで、「今なら挑戦できるかもしれない」と思えて。そこで『サイボーグ009』でご一緒した植木豪さんに、「ヒップホップの曲を1曲プロデュースしていただけませんか」と、私から直接お願いしたところ、快く引き受けてくださいました。
――お話を聞いて、この曲がリード曲に選ばれた意味もわかりました。
自分の中で“挑戦の1曲”として、リード曲に選びました。ラップには初挑戦でしたが、豪さんのプロデュースなら、1曲目に「Skyward」を持ってきて、リード曲にしても問題ないと自信が持てたんです。私はいつも「チャレンジです」と言っている気がするんですけど(笑)、もうチャレンジすることは日常なんですよね。でも、「Skyward」みたいな挑戦は“今だからこそ”できたことだと思っています。
――ラップのスタイルで、参考にされたアーティストはいましたか?
ヒプノシスマイクさんです。アニメや舞台も含めて、よく聴いていました。
――植木豪さんからはどんなアドバイスがありましたか?
「七海さんは七海さんにしか出せないものを持っているんだから、人の真似をする必要はない」と言ってくださいました。豪さんがチームを信じているその姿勢に、器の大きさを感じましたし、自分よりも周りを信頼しているところが、とてもかっこいいなと思いました。そういう方にプロデュースしていただけて、本当に良かったと思います。
――歌詞を読んだとき、どんなことを感じましたか?
自分の気持ちが的確に表現されていて驚きました。私の思いを豪さんが汲み取ってくださって、それをもとに作詞作曲を担当してくださった田中マッシュさんが書いてくださったのだと思います。読めば読むほど、今の自分の心境にぴったりで。たとえば<青く輝いたまま>というフレーズを見て、豪さんにとって、七海ひろきは“赤い光”じゃないんだなって思ったりしました。
――例えば青い炎って、赤い炎より温度が高いですよね。そういうのもあるのかもしれないと思いました。
そうなんです。私は青い炎が好きなのですが、そういったことを話していないのによくわかるなと感動しました。また<君が潜んでいた闇に 光が差し込む 感じた眩しさに 怯えることはないから 共に歩いていこう>という歌詞は、自分が誰かに向けて言っているようでもあるし、光はみんなのことで、私がみんなに導かれているような感じもあるなと思いました。いろんな意味が重なっていて、とても深い歌詞だと思いました。
――ファンの方がこの歌詞を読んだら、きっといろんな感情を受け取ると思います。
そう思います。また、MVもすごくいいものができたので、ぜひ観てほしいです。今回はサビの部分で少しダンスも披露しています。豪さんに「この曲の振り付けをしてくださる方はいませんか?」と相談したところ、Gashさんをご紹介いただいて、振り付けをお願いしました。
――Gashさんにはどんなイメージを伝えたのですか?
「カッコよくて、印象に残る振りでお願いします」とリクエストしました。そうしたら、本当にカッコよくて、振付を覚える段階では少し難しいけど、一度覚えてしまうと体が勝手に動くような振付で、とても嬉しかったです。
「あなたは私の道標です」と伝えたい
――アルバムの最後を締めくくる「Dearest」は七海さんご自身が作詞をされていますが、どのような想いを込めて書かれたのでしょうか。
「Dearest」は5周年コンサートで披露した楽曲です。ファンのみんなに向けて、今の自分の気持ちをそのまま曲にしたいと思い、初めて作詞に挑戦しました。楽曲は、いつもバンドでキーボードを弾いてくれている西村奈央さんに書いていただいたのですが、こんなに素敵な曲に自分で歌詞をつけられるなんて、と嬉しい気持ちでいっぱいになりましたが、実際に書き始めると、思った以上に苦戦してしまって。
――想いが溢れてしまったのですね。
はい。気持ちが強すぎて、あまりにも重くなりすぎると曲としてどうなんだろう…と悩んだり。でも、軽い気持ちではないので、そのバランスをすごく考えました。伝えたい言葉はたくさんあるけれど、どの言葉をどこにはめるのか、文字数との兼ね合いもあり、本当に時間がかかりました。
――七海さんらしさがある歌詞になっていますよね。
ありがとうございます。デビューミニアルバムは『GALAXY』というタイトルだったり、宇宙や星をテーマにした曲も歌ってきたので、そこに少し寄せながら、想像をふくらませていった結果、たくさんの言葉が生まれてきました。宝塚時代に出会った方々もいれば、退団後に新しく出会った方々もいます。そのすべての方に対して「あなたは私の道標です」と伝えたい。みんなが私の道標であり、私もみんなの道標でありたいという想いを込めています。お互いの道を照らし合えるような、そんな存在でいたいと思いながら書きました。そして、これまでの感謝と、これからの未来への想いも込めました。
――タイトルの「Dearest」も素敵ですね。
宝塚在団中に開催したディナーショーのタイトルが「Dearest」だったんです。そのオマージュと言いますか、その頃から“みんなが最愛の人”という気持ちで、何年経ってもそれは変わらないという想いから、「Dearest」にしました。
――5月10日、5月31日、6月1日に開催される『One-man LIVE773“Crystal”』は、どのようなライブになりそうですか。
ライブでは、音源とはまた違った“生”の良さを感じていただけるように、がむしゃらさや本気で取り組む姿をしっかり届けたいと思っています。最近は「心の距離が近く感じられるライブ」を目指しているので、そういう意味でも、親しみやすさを大事にしたいです。いい意味でラフに、温かくてフランクな時間にしたいと思っているので、ぜひ遊びに来てください。
(おわり)
作品情報
七海ひろき 3rdアルバム『Crystal』 2025年4月16日(水)発売 予約:https://773.lnk.to/Crystal_CD
【初回限定盤】CD+Blu-ray
税込6,050円(税抜5,500円)/KICS-94198
【通常盤】CD only
税込3,630円(税抜3,300円) /KICS-4198
【7seas+ファンクラブ限定盤】初回限定盤+特典(七海ひろきぬいぐるみ)
税込9,680円(税抜8,800円)
※7seas+ファンクラブ限定盤の詳細・ご注文は、
7seas+へログイン後「GOODS」より確認。https://7seasplus-fc.com/
■CD収録内容 ※初回限定盤・通常盤共通
1.Skyward 作詞/作曲/編曲:田中マッシュ
プロデュース:植木豪
2.夜の隨 作詞/作曲/編曲:松本明人
3.SASSOU 作詞/作曲/編曲:賀佐泰洋(SUPA LOVE)
4.BuZZ 作詞/作曲/編曲:廣中トキワ
5.Not Over 作詞/作曲/編曲:ARAKI
6.Knock down night 作詞/作曲/編曲:槇島隆人(SUPA LOVE)
7.Magic of Love 作詞:町田トシユキ(Blue Bird’s Nest) 作曲:五戸力、町田トシユキ(Blue Bird’s Nest) 編曲:日比野裕史(Blue Bird’s Nest)
8.曖昧 作詞/作曲/編曲:槇島隆人(SUPA LOVE)
9.Dearest 作詞:七海ひろき 作曲:西村奈央 編曲:Soft Boiled Rockers
「Skyward」Music Video & Behind The Scenes
「夜の隨」Music Video & Behind The Scenes
「Crystal」ジャケット撮影 Behind The Scenes
七海ひろき オリジナルキャンディ作り!
ライブ情報
One-man LIVE773“Crystal”
【東京】2025年5月10日(土)新ニッショーホール
(1)開場:13:00/開演:13:45
(2)開場:16:00/開演:16:45
【福岡】2025年5月31日(土)スカラエスパシオ
(1)開場:15:00/開演:15:45
(2)開場:18:00/開演:18:45
【大阪】2025年6月1日(日)大阪国際交流センター 大ホール
開場:15:45/開演:16:30
■チケット料金 全席指定:12,000円(税込)
詳細はこちら ▸ https://nanamihiroki-artist.com/news/2025/0116_03.html
プロフィール
宝塚歌劇団を退団後、キングレコードよりアーティストデビュー。
以降、話題作のメインキャストや舞台主演を多数務め、声優としては、 TVアニメ「マッシュル-MASHLE-」
アビス・レイザー役や、「烏は主を選ばない」浜木綿役、「戦国妖狐」千夜役。
俳優としては、「舞台 『刀剣乱舞』 禺伝矛盾 源氏物語」歌仙兼定役、舞台「サイボーグ009 」 009 /島村ジョー、
ミュージカル「七色いんこ」七色いんこ役。
初主演ドラマ「合コンに行ったら女がいなかった話」ではイケメン男装女子の蘇芳役に抜擢され大きな話題を呼んだ。
現在は声優、俳優、アーティストなど多方面で活動中。

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