業務効率化や生産性向上などを理由に、AI(人工知能)はさまざまな分野で導入されるようになりましたが、懸念点も少なくありません。その一つが、「人間ができる仕事が減ってしまう」という点です。これは、税理士の業務にも当てはまるのでしょうか。AIの進化により、将来的に税理士の仕事が減る可能性があるのかについて、税理士の丸岡政典さんに聞きました。

税務相談や代行業務は人の力が必要

Q.まず、税理士が主に行う業務の内容について教えてください。

丸岡さん「税理士法という法律があるのですが、そちらから業務内容を抜粋すると主に税務代理、税務書類の作成、税務相談の3つが挙げられます。まず税務代理は、納税者から依頼を受け、各種税務をこちらで代行するものです。税務書類の作成も同様で、税務署などに申告するための書類を作成します。

最後の税務相談は、書類作成や税金の計算などについて、依頼主が分からないことに関して回答やアドバイスを行うという形です」

Q.ネット上では「AIの発達により、将来的に税理士の仕事がなくなる」などといわれています。これは事実でしょうか。

丸岡さん「正しい部分もあり、正しくない部分もあるというのが答えでしょうか。やはり、人間よりもAIの方がミスも少なく、正確にこなしやすい業務というのもあります。簡単な書類作成や、集計・転記などですね。

書類作成や集計の自動化といったシステムなどはすでに存在しますし、税理士の業務にもそうした自動化システムが生まれたら、将来的に使われることもあるかもしれません。

ただし、AIにはできない、人間が手を加えなければならない業務というのも同時にあると思います」

Q.では、税理士にとってAIを活用することで負担が減る業務、AIだけでは実行が難しい業務はありますか。

丸岡さん「やはり、負担が減る業務としては定型的な集計や書類作成といった業務ですね。一方で、税務相談や代行業務は、臨機応変に対応しなければならないこともありますし、依頼主一人一人で対応すべき内容、やり方を変えなければならないこともあります。

個別に事情を抱えた人もいらっしゃるので、依頼主ごとに対応を変えたり、意見のすり合わせをしたりしながら業務を進めるといった、融通を利かせながら進めるのはAIの力では難しいのではないかと思います」

* * *

 近年、AIの技術進化が注目されていますが、AIにも得意な分野、不得意な分野があるということです。税理士を依頼する人の希望や悩みは千差万別で、そんな「人それぞれ」に対応できるのはやはり税理士の経験や専門的スキルによるものだからなのでしょう。将来的には、AIの得意分野である定型業務の自動化といった、AIをうまく使った業務分担が行われる日が来るかもしれませんね。

オトナンサー編集部

AIの進化で税理士は仕事を奪われる?