
広末涼子さんが入院先の病院で看護師を蹴るなどしたとして傷害の疑いで逮捕勾留され、被害者との示談が成立し釈放された。そんな中、注目を集めているのが医療従事者に対する「ペイシェントハラスメント」、“ペイハラ”だ。現役の看護師の女性がその現状を以下のように語った。
【映像】「腕をかまれて痕が残り…」(現役看護師Aさん・女性)
「私が経験したのは認知症の患者さんで、採血や点滴をしようとした際に手を叩かれたりだとか、蹴られたりということは結構日常的にあること。他には夜間でせん妄になってしまっている方にお食事を提供したらお食事を投げつけられてしまった」(現役看護師のAさん、以下同)
「私の周りの方だと認知症の方に何か処置をしようとして腕を噛まれてしまって、跡が残った。実際にちょっと感染症みたいになってしまった方もいた。人の口の中にはいっぱい細菌があるため、何かしらの感染症になるリスクはある」
そんなハラスメント行為を行う患者「モンスターペイシェント」に対して、はたして医療現場ではどのように対応すれば良いのだろうか。医療機関からの相談を受け付ける弁護士は以下のように述べた。
「正当な事由がなければ診療に応じなければいけないという義務のことを『応召義務』と言う。モンスターペイシェントの診療を断ろうと考える場合は、その『応召義務』に違反しないかどうか。つまり正当な事由があるかどうかというのを検討する必要がある」(咲くやこの花法律事務所・木曽綾汰弁護士、以下同)
医師法の「応召義務」によって、線引きが難しいモンスターペイシェント。毅然とした態度で、医療機関側の主張をしっかりと伝えていくことが大切だという。しかし、実際の現場ではそうはいかないと現役看護師のAさんは語る。
「暴力を振るわれる方は大体の場合は症状としてそうなってしまっている方がほとんどで、その場合は『仕方ないよね』というところで終わってしまう。何か体に傷が残ったり、心に傷を負ってしまったりしたとしても、なかなか声が上げづらい風潮がある」
この状況に弁護士の佐藤みのり氏は以下のように分析する。
「医療現場だと刑事事件にしてやろうという意識で臨むのがなかなか難しくて、ハードルが高いのかなとは思う。被害届をなかなか出せないのは、医療現場特有の問題がある。患者さん自身に精神的な不調があったり、認知症を患っていたりすると、『その人本人のせいではないよね』と、この行為自体は困るが、責任を問うていくのが難しい」
出禁や診療拒否はできる?

「モンスターペイシェント」に対して出禁や治療拒否という対応をとることはできるのか。佐藤氏は以下のように述べる。
「医療機関の場合、応召義務というのがあり、『命を守るために診療してください』と依頼が来たら拒否できないというのが原則になっている。ただ、正当な事由があれば拒否できるため、ペイシェントハラスメントがある、これが正当な事由に当たるのかどうかは、法的な判断になる」
正当な事由が認められ拒否できた例はあるのだろうか。
「例えば、“診療方針に従わない”というのがある。お医者さんは『こうやって病気を治していきますよ』と言っているのに、『いや、それは嫌なんだ。私はこの薬が欲しいと』と言って、一方的に自己判断で薬の処方を求めてくること。また、手術をしたときにその説明を求めてきて、病院側はちゃんと説明しているのに納得しないでどんどん大きな声になっていって、『帰ってください』と言われているのに帰らないで居座ってしまうことなど。そうなると、信頼関係が破壊されているということで、診療の拒否も可能になる」
法整備する場合のアプローチは?

ではペイハラに対しての法整備を検討する場合、どのようなアプローチが良いのだろうか。佐藤氏は以下のように説明した。
「今はちょうど(法整備が)進んできている。東京都はこの4月からカスハラ禁止をきちんと条例の中に定めた。東京都が出すと『カスハラっていけないんだ』とか、ペイハラも含めて『どういうのがペイハラやカスハラになるの?』と、みんなが興味を持ってくれるきっかけにはなると思う」
「(条例だと)罰則はない。“どこからがカスハラか”が微妙なため、罰則に馴染まない部分もある。一般的にカスハラを禁止する罰則を設けるのは難しいかもしれないが、一部悪質な行為については今の法律でも十分罪に問える。そうして悪質なケースは毅然と対応していくことも大事だ。(法整備を検討する場合は)従業員を守るという形で事業者の義務として整えていくのが良いと思う。実際、厚労省も案を示していてその方向で変わっていくと思う」
(『ABEMAヒルズ』より)

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