
この記事をまとめると
■10年目を迎えた「オートモビルカウンシル」が2025年4月11〜13日に開催された
■イベントの目玉はカーデザインの巨匠ジウジアーロの来日と作品展示
10周年を迎えた「オートモビルカウンシル」
2016年から始まった「オートモビルカウンシル」が今年で10周年の節目を迎えて、4月11日から13日の週末に、幕張メッセで開催された。キャッチフレーズの「Classic Meets Modern and Future」を少しだけ意訳すると「旧車を通して現在や未来を知る」となるだろうか。東京オートサロンや大阪オートメッセのような熱気とは一線を画す、和やかな空気がこの会場には流れていた。
今回は3つの主催者テーマ展示が設けられた。なかでも最大の注目は、「世界を変えたマエストロ」と名づけられた、名匠ジョルジェット・ジウジアーロがデザインしたエポックメイキングな歴代モデルの展示。さらにご本人が来日してのトークショーも開催された。
並べられた10台は年代順に、1963年デビューのアルファロメオ・ジュリアスプリントGTからマセラティ・メラクSS、フォルクスワーゲン初代ゴルフ、BMW M1、いすゞのアッソ・ディ・フィオーリ、ランチア・デルタ、フィアット・パンダ、DMCデロリアン、イタルデザインのアズテックまでが20世紀の作品。そして、2020年に登場させたバンディーニ・ドーラという豪華な顔ぶれだ。いすゞのショーモデルは後に「ピアッツァ」として市販されている。
ジウジアーロ氏のトークショーは初日と2日目の2回に分けて開催。筆者が聴講した初日は、86歳という年齢を感じさせない元気な声で1時間近く熱弁を披露。ベルトーネ時代に手がけた東洋工業(現在のマツダ)のS8Pを久しぶりに見られてうれしかったことや、その後にギアに在籍した際に手がけたいすゞの117クーペが、ショーモデルを市販化に漕ぎ着ける「産みの苦しみ」を最初に知った、大きな転換点だったことを明かした。
主催者による「歴史を飾ったラリーカー展示」も魅力的だった。スイスの有名なコレクターによる収集から厳選された6台のWRCマシンは、由緒正しきワークスばかり。
モンテカルロラリー3連覇のミニクーパーSをはじめ、フィアットX1/9プロト、ランチア・ストラトスHF、フィアット・アバルト131ラリー、ルノー5ターボ、アウディ・クワトロというラインアップ。アウディを除く5台はもちろん2輪駆動のマシン。セリカやファミリア、ランエボにインプといった日本車が、まだ本格的な挑戦を開始する前の時代の懐かしい名車ばかりが並んだ。
国内自動車メーカーではトヨタ/三菱/マツダ/ホンダの4社が出展。各社共通のテーマとして「過去から見た未来」ということで、過去の東京モーターショーに出展したコンセプトカーを必ず1台は展示するというリクエストに各社が応えたカタチになった。
トヨタは1989年の「4500GT」を展示。さらにGAZOO RACINGのレストアやヘリテージパーツ供給などの取り組みもアピールしていた。
三菱は同じく1989年に出展した「HSR-Ⅱ」を最新のアウトランダーPHEVと並べて展示。HSR-Ⅱで提案していた技術が、アウトランダーで実用化されている進化の過程を示していた。
このイベントには積極的な姿勢が目立つマツダのブースでは、ベルトーネ時代のジウジアーロ氏がデザインしたマツダS8P(エスエイトピー)の存在感が光った。オールドファンには懐かしい、初代ルーチェのプロトタイプなのだが、ごく一時的に広島のミュージアムで展示された以外は今回が初めてのメジャーデビュー。
このS8Pは1964年に製作されたが、ルーチェは1966年にレシプロエンジン搭載のセダンが先行してデビューし、さらに1969年にルーチェロータリークーペがリリースされている。
会場内は右も左も伝説のクルマたちばかり
また、ホンダは歴代プレリュードの展示が中心だった。初代から東京オートサロンなどで公開されていた新型の6代目までを展示した。
なお、メーカーとしての出展はなかった日産だが、会場内には「ニッサンとイタリアンのクリエーション」というコーナーが主催者によって特別展示された。1960年のトリノショーで話題を呼んだプリンス・スカイラインスポーツは、天才と称されるジョバンニ・ミケロッティの作品。
1964年式のダットサン・ブルーバード1200DXは2代目モデルだが、このデザイン原案はピニンファリーナが提供したとされている。1985年式のマーチ・コレットも同じく原案はジウジアーロが手がけている。
さらに2018年から2019年にかけて、GT-Rとジウジアーロが率いるイタルデザインがともに50周年を迎えることを記念して、世界限定50台でリリースされたGT-R 50 by Italdesignも展示された。
インポーターからもポルシェやランドローバー、ケーターハムやマセラティという歴史あるブランドと、新しいところではBYDも出展。サプライヤーでは、日本ミシュランタイヤやオイルのフックスジャパンなどがブースを出していた。
もちろん、ヘリテージカーの販売会社も約20社が選りすぐった名車を展示。すでに「売約済み」というタグが掲げられた魅力的なモデルたちも含めて、来場者の垂涎の的となっていた。
また、タミヤのブースでは、1976年と1977年の2年間だけ参戦した6輪のF1マシンのタイレルP34を展示。1976年の第4戦スウェーデンGPではジョディ・シェクターが優勝し、パトリック・デパイエも続いてワンツーを達成している
そして、今回もっとも多くの視線を集めたのは、ランチアの名車の原型になったストラトスHFゼロだろう。デザイナーはランボルギーニ・カウンタックやミウラを手がけたマルチェロ・ガンディーニ。1970年のトリノショーに出展されたプロトタイプが今回、日本に初めて上陸した。
全長は3.58mで全幅は1.73mという数値だが、全高はなんと0.83m余り。もちろん市販車になった段階では改められたが、この高さで2名の乗員のスペースを確保していることに驚いた。しかも、このクルマは当時のWRCに出場していたフルビアHFのシャシーを利用しているとのことで、一時は不動車になったが、現在はレストアされて走行可能とのことだ。
今回、これらを見ることができたチャンスに感謝したい!

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