
東京都足立区の江蔵智(えぐら・さとし)さん(67)が生まれた際に他の赤ちゃんと取り違えられた事件で、東京地裁が都に対して生みの親を調査するよう命じた判決を受け、小池百合子知事は4月25日、「都として控訴しないことを決断した」と発表した。
江蔵さんは弁護士ドットコムニュースの取材に「すみやかに調査して、細かく報告してほしい」と話した。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)
●江蔵さん「都への不信感は消えない」東京都の小池知事は4月25日の定例記者会見で次のように述べ、江蔵さんの生みの親を調査することを明らかにした。
「長年にわたって江蔵さんが苦しんでこられた状況、心情、察するに余りある。江蔵さんの育てのお母さまもご高齢でいらっしゃいます。
取り違えを生じさせた都として、今回の判決を受け入れ、控訴しないことを決断しました。
都はこの判決を尊重して調査を実施します。調査にあたっては対象となる方々の個人情報の取り扱いに万全を期すとともに、それぞれの方の心情に配慮した丁寧な対応を行っていく」
江蔵さんや代理人弁護士たちは都に控訴しないよう要望していたが、この日の小池知事の発言を受け、すぐに調査を実施することを求めた。
江蔵さんは弁護士ドットコムニュースの電話取材に対し、「大変うれしいが、この20年間の東京への不信感は消えません。これから東京都がどれくらいの人員を使って調査をするのか。速やかに調査して、報告を細かくしてほしい」と求めた。
●46歳で親とのDNA不一致が判明江蔵さんは1958年4月10日ごろ、東京都墨田区にあった都立墨田産院で生まれたとされていて、46歳の時に実施したDNA鑑定で両親と一致しないことが判明した。
出生時に別の親の元に生まれた新生児と取り違えられたことについて、2004年10月に東京都に対して損害賠償を求めて提訴。
東京地裁、東京高裁ともに取り違えがあった事実が認定されたが、生みの親に関する情報を得られることはなかった。
そこで2021年11月、東京都に対して生みの親について調査する義務があることなどを求めて東京地裁に提訴していた。
東京地裁は今年4月21日、江蔵さんの生みの親が締結した「分娩助産契約」には出産医療機関が調査を尽くす義務が含まれると判断し、東京都に調査の実施を命じた。

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