
安価な偽造品を「相乗り出品」する業者への対応を怠ったとして、正規の医療機器販売会社など2社が、通販サイト「アマゾン」に対して計約2億8000万円の損害賠償をもとめた訴訟で、東京地裁が4月25日、アマゾンを運営するアマゾンジャパン合同会社に3500万円の賠償を命じる判決を言い渡した。判決後に原告側が会見して明らかにした。
原告は、パルスオキシメーターのメーカー「トライアンドイー」と、同社と独占的な販売委託を結んだ販売会社「エクセルプラン」(いずれも神戸市)。
原告側は、同日の会見で、東京地裁の判決について「アマゾンには適正なシステムを構築して提供する義務があると正面から認めた」と一部で評価した。
●10分の1の価格で偽造品が相乗り出品された判決のあった25日、訴訟を起こしたトライアンドイー社の代表取締役、藤井敬博さんと代理人弁護士が東京・霞が関で会見を開いた。
アマゾンでは同一の商品について複数の出品者による出品がひとつのページに掲載される「相乗り出品」の仕組みが導入されている。
原告によると、原告が正規のパルスオキシメーターを出品していたところ、「相乗り出品」を通じて複数の業者が10分の1程度の価格で同様の機器を出品した。
医療機器の販売許可を得ていない偽造品が販売されているとしてアマゾンに繰り返し対応を求めたものの、具体的な対応がとられないまま、商品の販売ページが削除され、原告の出品が取り消されたとしている。
偽造品を購入した消費者からは「中華品でした」「騙されてしまいました」などとレビューが書かれたが、相乗り出品の性質から、正規品の評価も同じレビューとしてまとめられる「レビュー汚染」が生じたという。
原告は、アマゾンは、適正なシステムを構築して提供する義務に違反していると主張し、賠償をもとめた。
●「一歩踏み込んだ判決」「いまでも無許可の偽造品が出品されている」東京地裁の判決は、販売会社のエクセルプランにのみ賠償を認めた。
原告によれば、判決は、同社の商品を合理的な理由なく出品停止にしたり削除したりしない義務を認めたうえで、免責せず賠償責任を認めた。また、販売業者から偽造品の申告をうけた場合に削除する義務があると認定したが、賠償責任は認めなかった。
相乗り出品者の販売資格や偽造品かどうかを確かめる義務は認めず、レビュー汚染によってメーカーの信用が毀損されたとの主張は認められなかったという。
原告代理人の染谷隆明弁護士は「相乗り出品それ自体を否定しているわけではなく、適正な運用を求めるもの」とし、今回の判決がプラットフォームの免責条項を一部で認めなかった点について「一歩踏み込んだ判決」と評価した。
原告の藤井さんは、アマゾンの対応をめぐって「どうして海外出品者のモラルにまかせ、出品可能にするのでしょうか。いまでも無許可の医療機器が出品されています」と批判。アマゾンの運用が適正なものになってほしいとの考えを示した。

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