芥川龍之介は「ぼんやりとした不安」にとらわれて1927年に自殺しました。芥川龍之介の作品はよく国語の教科書に掲載されていますね。また、長い顔の顎に手をやったあの写真を覚えている人も多いでしょう。それにしても芥川龍之介はなぜ自殺したのでしょうか?

芥川龍之介片頭痛では!?

芥川龍之介の遺稿から発見された『歯車』は現在では彼の晩年の傑作とされています。この作品では、主人公がさまざまな幻を見ます。激しい頭痛に苦しめられ、視界に半透明の歯車が現れるのです。この主人公の苦しみには芥川自身が投影されているとされています。

実際、芥川龍之介が激しい頭痛にさいなまれていたことが分かっています。歯車の「幻覚」も実際に見たようで、頭痛と幻覚に苦しめられた彼は、ついに「ぼんやりとした不安」にとらわれて自ら死を選んでしまったのです。

ですが、芥川龍之介のこの病状を現在の視点で判断すると病名は何でしょう?

お医者さんでなくても、頭痛外来に通ったことのある人ならすぐ分かるのではないでしょうか。恐らく——片頭痛ですよね。

■歯車は「閃輝暗点」では!?

片頭痛は、心臓の拍動と共にズキンズキンと激しい痛みがある頭痛です。また、片頭痛には、吐き気や光に対する過敏反応(羞明といいます)といった症状を伴います。また、片頭痛はその前触れのように、視覚異常、嗅覚異常などが現れることがあります。

この頭痛の前触れに「閃輝暗点(せんきあんてん)」というものを見ることがあるのです。これは、ギザギザ、トゲトゲの幾何学模様の光が視界に現れるという一種の視覚異常です。

どんな形状かは個人差があるのですが、ギザギザした円形上の光が明滅して現れたりします。これが、まさに芥川龍之介が見た「歯車」ではないでしょうか。歯車が現れ、それが消えると頭痛がやって来る、としている点も片頭痛の症状に当てはまります。

筆者も閃輝暗点を見たことがあります。何の知識もなかったら幻覚を見ていると思ったかもしれません。芥川龍之介が見た「歯車」は「幻覚」ではなく、誰にでも起こり得る病状の一つだったのです。

現在では「頭痛」について科学的な究明が進んでいます。また、頭痛外来があるぐらい頭痛は一般的なことだと分かっています。片頭痛の痛みを和らげる薬もあります。もし、芥川龍之介が現在の頭痛外来に通院することができていたら、彼は自殺しないで済んだかもしれません。

(高橋モータース@dcp)