「ニコニコドキュメンタリー」の第1弾、第三者の視点から日韓問題を描いた「タイズ・ザット・バインド~ジャパン・アンド・コリア~」をテーマにした1回目の討論番組、「『世界から見た日韓問題』―タイズ・ザット・バインド エピソード1―」が2015年7月31日(金)22時から、ニコニコ生放送で配信されました。
本ニュースでは、同番組の内容を以下の通り全文書き起こして紹介します。
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※出演者=話者表記
角谷浩一氏(MC/ジャーナリスト)=角谷
松嶋初音氏(コネクター)=松嶋
青木理氏(ジャーナリスト)=青木
潮匡人氏(評論家・軍事ジャーナリスト)=潮
木村幹氏(神戸大学大学院国際協力研究科教授)=木村
津田大介氏(ジャーナリスト)=津田
辺真一氏(コリア・レポート編集長)=辺
平沢勝栄氏(衆議院議員・日韓議員連盟幹事)=平沢
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角谷:こんばんは。コネクターの角谷浩一です。
松嶋:松嶋初音です。
角谷:本当のことを知りたいということで、我がニコニコが総力を挙げてスタートさせた、その名も「ニコニコドキュメンタリー」。第1弾は国際的な第三者の視点から日韓問題を描こうというオリジナルのドキュメンタリー「タイズ・ザット・バインド~ジャパン・アンド・コリア~」、そのエピソード1がきのう放送されました。これについては今も書き込みがたくさんありますけれども、きのうのアンケートも大変厳しい結果が出ました。「どうも自分の知っている日韓の歴史と違う」とか、「ちょっと一方的な情報が多かったんじゃないか」とか、いろいろな声がありました。初音ちゃんは見て、どんな感じがしましたか?
松嶋:そうですね、韓国の方が観光で行かれている耳塚については正直知らなかったりとか、結構驚かされたりとか。「これはほんとに中立なものだな」というふうには、正直なところ私はあまり思えなかった部分があったりもしたので、皆さんはどう思っているのかなと感じました。角谷さんはいかがですか?
角谷:僕はほんの短い期間、87年から88年、韓国がオリンピックをやる直前のソウルに少し住んだことがあって、当時、韓国外大の日本語学科の学生にたくさん翻訳の仕事を頼んだりしていました。一生懸命仕事もやってくれるし、日本語も上手。その後必ず、当時は屋台をポジャマジャって言ったんですけど、その屋台でとにかく焼酎を一緒に飲むんですね。そうすると、必ずおばあちゃんから聞いた話というのが始まるんです。「でも、僕らほとんどこれから新しい時代をつくっていくのに、その話から進めないのはもったいなくないか」と、「いや、でもね」と。「じゃあ、君、どうして日本語学科になったの?」と聞くと、「それは角谷さん、ビジネスですよ」とこういう話になって、いろいろな問題があるなと。それが僕の経験は88年の話でした。それから、現在は2015年。日韓が国交正常化してから50年がたちましたけれども、今、日韓関係は決していい状態にはないという中で、ニコニコはドキュメンタリーとして最初にこの日韓問題を取り上げたわけです。ユーザーの皆さんも初めて見た映像や証言にショックを受けたり、「イギリス人という第三者から見るとこんなふうに見えるのか」と。それから、イギリス人というのはそんなに冷静なのかとか、いろんな思いもあったのかもしれません。
松嶋:そうですね。
角谷:さあ、それをどういうふうに感じたのか、きょうは専門家の皆さんを交えて、少しきのうの番組はどう見たらいいのか、どこがポイントなのか、こういったものを整理していきたいと思います。
松嶋:それでは、早速ゲストの方を紹介していきます。コリア・レポート編集長の辺真一さん。
辺:こんばんは。
松嶋:よろしくお願いいたします。
角谷:よろしくお願いします。
松嶋:続いて、神戸大学大学院国際協力研究科教授の木村幹さん。
木村:よろしくお願いします。
松嶋:よろしくお願いいたします。
角谷:よろしくお願いします。
松嶋:続いて、ジャーナリストの青木理さん。青木さんには今回、「タイズ・ザット・バインド」の日本語版監修をしていただいております。
青木:監修したといっても、別に「こういうふうにつくれ」とか言ったわけじゃないんです。要するに、来たものの事実確認をすると。それで間違っているところは「間違っているんじゃないですか」っていうアドバイスをしたと。ただ、実を言うと、僕も見たんですけれど、最後の最後で結構ドキュメンタリーって変わっていったんですよね。だから、僕が最後の完成版を見ても、「あれ、ちょっと違うんじゃないの」っていうところがぽつりぽつりとあったんで、その話なんかもきょうはたぶん議論になるのかなという気はします。よろしくお願いします。
角谷:よろしくお願いします。
松嶋:よろしくお願いいたします。それでは、続いて自民党衆議院議員で日韓議員連盟幹事の平沢勝栄さん。
平沢:よろしくお願いします。
角谷:よろしくお願いします。
松嶋:よろしくお願いいたします。続いて、軍事ジャーナリストで評論家の潮匡人さん。
潮:よろしくお願いします。
角谷:よろしくお願いします。
松嶋:よろしくお願いいたします。そして、ジャーナリストの津田大介さんです。
津田:よろしくお願いします。
角谷:よろしくお願いします。
松嶋:よろしくお願いいたします。
角谷:1時間あまりの番組でしたから、いろいろな皆さんのポイントというのがあると思いますが、一番気になったところ、それから「ここじゃないの」というポイント、いろいろと感じているものがあると思いますから、順番に伺っていきたいと思います。青木さんから早速いきましょうか。
青木:ほかの方と意見は違うのかもしれないですが、僕は比較的客観的というか、非常に今の日韓関係を、どちら側にも比較的寄らず描いているなと、ドキュメンタリーとしてはなかなかすばらしいものなんじゃないかなと思いました。それがもしおかしいと言われるような言い方をするんであれば、僕がもう一つ付け加えるとすれば、恐らくグローバルスタンダードというか、別にイギリスが、ましてやBBCがグローバルスタンダードでもないんだろうし、例えば中国から見た場合はまた違うだろうし、アメリカもある意味当事者だからまた違う視点があるんだろうけれども、外国から見れば、ある程度日韓関係から遠い外国から見れば、こう見えるんだろうなというのは間違いないでしょうね。だから、そういう意味で僕らや韓国の人たちもこれを見るべきだろうし、「外国から見ればこうなっているんだよね」っていうものの材料としては、僕は非常に大切な材料を提示してもらったなという気はします。
角谷:そうなんですね。これは正しいとかいうよりは、イギリスがつくるとこういうふうになるというところ、それを材料に、僕たちはもう1回振り返りながら、日韓関係というのを当事者としてはどう感じるのか、少なくとも今までの日本のメディア、テレビや新聞や雑誌で書いてあることと随分違う視点があったと。そこをどうやって飲み込めるのかとか、乗り越えられるのかとか、そこがたぶんこの企画の大きなポイントだろうなと僕は感じて見ました。
青木:おっしゃるとおりだと思います。
角谷:じゃあ、木村さん、いきましょうか。
木村:先ほど「バランスがとれた」っていう話を青木さんはされたんですけど、僕自身はあんまり実はそうは思いませんでした。というのは、そもそもバランスをとるということそれ自身、あんまり意味がないのではないかという気がしていて、むしろそれよりも、これはやっぱ典型的なイギリスの視点だなという感じがしたんですね。例えば、アメリカのメディアであったり、他国がやった場合にはたぶん全然違うものになったと思うんです。例えば、「植民地支配の中において協力者もいた」なんていうのは、いかにもイギリス人が強調しそうなところですし、経済成長に関しても「植民地支配の中で日本が一つの役割をした」と、ヨーロッパ人はこういうことを言いたいよねというところが一つあって。もっと言えば、やはり自分の植民地支配の経験と重ねながら話をしているって部分が半分、もう一つは同じようにイギリス視点という意味では、イギリスも実は戦勝国なんですよね。そうすると、第二次世界大戦の部分のところになってくると急にジャッジが厳しくなるんですね。やはりここはイギリスの、戦勝国としての見方、植民地支配に関しては日本と同じ立場に立ってくれるんだけど、戦争の部分に関しては「日本は我々とは違う」という感じで押していくっていうのが。
角谷:勝ったところと負けたところの立場の違いがあると。
木村:そうですね。微妙なイギリスと日本の国際関係の中では、その当時、その当時の立場の違いって、わりときれいに出ていたっていうのが非常に印象に持ちましたね。
角谷:なるほど。そこも興味深い視点だと思います。辺さん、いかがでしょう?
辺:ほとんど私自身は知っている事柄で、別に驚きに値しないんですけど、冒頭で耳塚の話が出てきましたでしょう。恐らく日本人はびっくり仰天したんじゃないかと思うんですね。なんで耳と鼻なのかと。戦国時代の日本では、合戦で手柄として首を取ってくると。だけど、朝鮮半島から首っていうわけにはいかない。それはもう大変な数、大変な重さで、船で運んでくるわけですから。それで手っ取り早く鼻、耳を削いで持ってきたという。そこら辺の説明っていうのが全くないから、「なんで耳と鼻なんだろう」って不思議がるかもしれませんけども、昔、戦国時代に日本はそうやって敵の大将なり、あるいは首を切って、それを持ってきて手柄にするというので、それでいわば大名になったり、いろいろ出世するという。それが冒頭で出てきて恐らく疑問に持たれた方がいらっしゃると思うんですけども、あれも結局、豊臣時代のほんの5、6年の、16世紀末のときですね。それで、よくアンケート調査、世論調査をしますよね。韓国では、一番嫌いな日本人でいつもトップに出るのが伊藤博文、その次にこの豊臣秀吉、そして朝鮮半島のシンボルの虎を退治した加藤清正っていう、この3人が韓国人からすれば気にくわない日本人ということになるんですね。じゃあ、みんなお侍さんが嫌いかというとそうではなくて、一番尊敬に値する好きなお侍は誰かというと、徳川家康なんですね。やっぱり徳川の300年間、一番日韓、日朝が。
角谷:関係がよかった。
辺:ええ、関係がよかったというようなことで、冒頭の耳塚の話が出てきて、豊臣秀吉が出てくるんですけども。私はイギリスが制作したということでふと思ったのは、先だっての明治日本の産業革命の遺産問題、世界登録遺産問題で日韓がガチンコしましたでしょう。恐らく日韓を除く残り19カ国、あれが仮に決選投票に持ち込まれたら、私は日本は勝てないなと。この映画を見て、まずそう思いました。外国では日韓の歴史はこういうふうにとらえられているんじゃないかなと。
角谷:制作者の価値観がヨーロッパの常識だというふうになっていれば勝てなかったんじゃないかと。
辺:はい、勝てないんじゃないかなと。そういう印象を持ちましたので、今回曲がりなりにも、若干双方いろいろ問題があるにせよ、適当なところで収まってよかったなというのをこの映画を見て実感しました。
角谷:なるほど、そういう見方ですか。平沢さん、いきましょう。
平沢:私はBBCの視点とかイギリスの視点っていうより、韓国の視点が圧倒的にこの番組の中に流れていて、その意味で言えば、かなり一方的な番組だなという感じがしました。それはスタートからして、例えば日本からすれば、確かに耳塚っていう歴史的事実はあった、ならば元寇はどうなんだっていうことだって言えるわけで。それから、慰安婦の方の証言とかいろいろ出てきましたけど、事実関係はほんとなのかなと、検証しているのかなと、ドキュメンタリーだったらこの辺をきちっとしなければおかしいじゃないかと。この中で一番私が興味深かったのは、博物館って独立記念館のことだと思うんですけど、昔刑務所で使われていたのが今は博物館になったというのが出てきますね。それで韓国の子どもたちがそこに行って、子どもたちが見て「日本が嫌いになった」とか、「日本ってこんなひどいことをしたんだ」とか、いろいろ言うわけですよね。これにパク・チョルヒさんっていう韓国のソウル大学の教授、彼は私の秘書をやっているんですよ。彼がコメントしていまして、要するに「この博物館というのは、史実に基づいて、事実に基づいてつくるべきだ」と、「こんな感情に訴えるようなことをやってはダメだ」と、まさにそれがすべてそうだと、今の日韓関係のすべてをあのひと言が私は言っているんじゃないかなと。要するに、パク・チョルヒさんが言っているのは、彼は韓国の教授ですよ。韓国の教授が韓国の子どもたちが行く博物館っていうのが「史実に基づいていない」と、「感情に訴えている」と、だからこの問題はおかしくなっちゃうんですよ。ちなみに、たしかアメリカにはホロコーストミュージアムがあったと思うんですけど、あれはまさに事実に基づいてつくっているんですよ。ところが、私が中国に行ってミュージアムを見ると、またオーバーもオーバー、もうひと言で言えば、見たらもう見られないような残虐な、蝋人形とか何かでつくってあるんですけど、こういう形でやる。それを子どもたちがみんなバスを連ねて見に来るわけです。それだったら、日本も反省はしなきゃならないですけれども、事実と違うようなことをどんどんやって、そして子どもたちにどんどんそういった意識を植えつけて。
角谷:恐怖を植えつけるような。
平沢:ええ、やるんで。その後それで友好だなんだって言ったって、なかなか難しいと私は思いますよ。ですから、そういったところで、やっぱり私はパク・チョルヒさんが言われたことは正しいなと、あのひと言に、今の関係についてもすべてが、尽きているんじゃないかなと私は思います。
角谷:この後議論しますけど、そうすると、平沢さんはある意味では、本当のボールは韓国側にあるんじゃないかって感じがしますか?
平沢:私もそう思いますね。
角谷:なるほど。ありがとうございます。潮さん、いきましょう。
潮:第三者的な視点に立とうとしているという努力の形跡は私も感じました。しかしながら、見ていて正直、1人の日本人として反発や疑問という感情がふつふつとわいてきたと。それはいくつかの重要かつセンシティブな論点について、今平沢先生がおっしゃったとおり、どちらかといえば韓国側の視点に立っているということではないのかと、どうしても思わざるを得ないという場面がいくつもあったというふうに思いますし。仮にそこが日本人の偏見だと、そこから見てそう見えるだけだというふうに100歩譲ってそうだとしても、木村先生がおっしゃったように、イギリスの視点が必ずしも客観であると、第三者であるということにはならない。そこは第二次世界大戦において、ご指摘のとおり、連合国、戦勝国であるイギリスの視点で仮に描かれていたのだとすれば、敗戦国である日本の、私は日本人であるという前提でこれを見るわけですので、反発の感情を抱くというのは自然な流れになるんじゃないかというふうに思います。特に一番最後のほうに、現在の問題について、安倍政権についても描かれていましたけれども、例えばヒトラーと同視するとか、あるいは戦前の日本に戻そうとしているといったような描写は、決して価値中立的であるというふうには私は思えないというふうに感じましたし。現在の問題を、このドキュメンタリーが描いていないことで挙げれば、産経新聞の前ソウル支局長が、私に言わせれば不法に起訴され、現在も公判が維持されているといったような問題についてはスルーしているということについても、疑問を感じました。仮にそこに意図があるんだとすれば、私は非難に値する編集ではないかと思います。なぜなら、報道の自由という日韓及びイギリスを含めた文明の社会が拠って立つべき共通の基盤が崩されているときに、そこで第三者、価値中立というようなことは理論的にもあり得ないということではないかというふうに強く疑問に思いました。
角谷:そうすると、やっぱりちょっと韓国側に立っているというだけじゃなくて、日本の情報が少ないということで、韓国の情報が多い感じがしちゃうということですか?
潮:恐らく正確に計算したりすると、両方の言い分を同じ長さで紹介しているじゃないかということになるんだろうと思いますが、しかし、例えばこの意見が日本の代表なのかという疑問は、個々のお名前は挙げませんけれども、正直そういうことも含めて私は疑問に感じました。
角谷:なるほど。津田さん、どうでしょう。
津田:耳塚の話も、あれを見て知っていたっていう人もいたし、僕は知らなかったんで、正直僕は驚きました。そういうところも含めて、番組としてはおもしろく見させていただきました。ドキュメンタリー、僕も好きでいろいろ見るんですけど、大まかに分けるとやっぱり2タイプあるかなと思って、対象者にすごく深く入り込んで、すごく関係がものすごく近いところまでになって、そうじゃないと撮れないような映像を撮るような、ある種ニュージャーナリズム的な視点で対象と一体化するようなドキュメンタリーみたいなのもあれば、もう一つは徹底的に対象者っていうのを、取材対象を突き放して、俯瞰した視点から撮るもの、その俯瞰した視点をずっと撮っていくと、突き詰めると、「結局、お前は何から目線なんだ」みたいな感じの、取材した対象者全部から怒られるみたいな、そんなドキュメンタリーもあるわけで。乱暴にその2タイプに分けると、今回は後者だったかなという感じはします。戦勝国であるイギリスの視点から、韓国と日本、「両方いろいろ歴史的な経緯もあるでしょう」と、「もめる歴史的経緯はあるけれども、どっちもどっちなんじゃないの。いつまでもくだらないことで争っているんじゃないよ」的な、ちょっと冷や水を浴びせられるような、そういう番組だったようにもちょっと思うんですよね。先ほど僕が個人的に思ったのは、平沢さんがやはり韓国の視点が多いんじゃないか、それは多分実際の取材の分量なんかを見てもそうだったなというふうにエピソードものは思いますけど、ただ、やっぱり日韓問題を語る上での構成の難しさというか、それがこのドキュメンタリーの構成にもあらわれていたかなと僕は思っていて、それだけセンシティブな論点というのがたくさん、潮さんもおっしゃいましたが、たぶん価値中立みたいなものはあり得ないんじゃないかって話もあったんですけれども。
角谷:なるほど(笑)。
津田:ただ、僕は同時に思ったのは、確かにコメントとかを見ていても、「韓国寄りじゃないか」っていうコメントはあったんですけど、ただ同時にやっぱり今までこういうドキュメンタリーで見られなかったようなコメントもあったと思うんですね。例えば、すごくセンシティブな論点について、韓国人の口から、「確かにいろいろもめたけれども、しかし韓国もちょっとやり過ぎだってところもあるんじゃないか」っていうような発言もあって、すごい言葉は選んでいましたけど。でも、そういった発言って、たぶんすること自体で韓国のメディアからものすごく叩かれるような、そういうような状況がある中でかなり踏み込んだ発言っていうのが僕はあったと思うし。そう考えてみたときに、じゃ、価値中立はあり得なくて、でもこのまま議論は平行線でいいんですかっていったときに、やっぱり何らかの新しい対話は始めなきゃいけないっていうフェイズにあるのかないのか、それを少し進めるっていう意味では、ボールを投げる一つの対話の手がかり、少しでも今まで交わらなかったところが、「少しここら辺がもめているんですね、少なくともここから始めるんじゃないですか」っていう手がかりを探る上では、僕は一ついい仕事になったんじゃないかなというふうには思いました。
角谷:各位からいろいろ伺うと、「なるほど、1時間の番組でこれだけいろんな見方があるか」と思うと、やっぱりいろんな声がある、でもこの議論ができないから問題だと思うと、それからある意味では、無難につくろうとすれば、比較するつもりはないけれども、国内のメディアがつくるとどうしてもあっちの顔を立てて、こっちの顔を立ててなんていうふうにつくっているよりは、意外と踏み込んだことがやっぱり琴線に触れると。そこがもしかしたら、自分たちの知っていることと知らないことが混在することで、今までの番組とは違うものを見たから反応がいろいろあるのかなという気もします。少しきのうの整理をしようと思います。
松嶋:そうですね。
青木:その前に1個だけ、ルール違反かもしれないんだけど、ニコニコのスタッフに許可を得たんでちょっとだけ解説を加えると。最初、僕もさっき言った事実監修ということで、最初のやつから見ていたんですよ、3回ぐらい見たのかな。だんだん変わっていくんだけど。その過程で、実は最初はもうちょっと韓国側の主張のほうが多かったんですよ。それをニコニコ側から「もうちょっと日本側の立場をきちんと入れてください」っていうことをやって、最終的にはああなっているんですよ。だから、むしろもうちょっと韓国寄りだった。それに関しては、やっぱり最初の話の繰り返しになっちゃうんだけれども、木村先生がおっしゃったように、戦勝国であるイギリスの視点っていうのは、確かにそういうのはあるんでしょう。ただし、日本でもない、韓国でもない、イギリスから見るとそう見えるんだということは、繰り返しますけれども、踏まえないと。それをいくら僕らが「いや、そうじゃないんだ」、もちろん事実じゃないことは「そうじゃないんだ」って言うべきだけれども、「いや、その見方は間違っている」とか、「韓国側に寄り過ぎているじゃないか」っていくら言っても、イギリスっていうある意味、ヨーロッパでもいろいろな立ち位置があると思うけれども、イギリスっていう国から見ればそう見えたんだということは踏まえないと。
角谷:そう、そこは前提にしておいてもらいたい。中立とか、ドキュメンタリーの公正さというふうになると、少なくともそういうふうなものがイギリスからでき上がってきたんだってところからこの議論は始まらないとしょうがないので。この番組がダメなんだっていう話になったら、これは頼んだ意味がないんですね。ほとんど。もっと言うと、木村さんの視点によって、「そうか、イギリス人が考えると、こういう視点が入って見えるんだな」っていうこと。でも、その視点は少なくとも日本人には今ないと。少なくとも研究者以外、専門家でなければそういう視点では見ないと。だからこの視点が入っていてつくられると、こんなふうにつくられるのか。辺さんがおっしゃったように、ユネスコで話し合うときに、もしこの制作者の感覚がヨーロッパの常識だとしたら、「たぶん決選投票なら通らなかったよ」っていうのは、そこがある意味ではヨーロッパの常識だったり、日本の常識とは違うけど、ヨーロッパにはこの価値観が当たり前に通用しているかもしれないっていうことを知ることも一つの情報かなと。それも努力が、もしかしたら日本側のアピールが足りないことなのかもしれないし、そんなことがここでもうちょっと深く議論できればいいと思っております。
松嶋:はい。では、きのうの放送後お寄せいただいたメッセージをいくつかご紹介します。今のお話とちょっとかぶるかもしれませんが、ニコニコネーム、アラカブさんからいただきました。「この動画は韓国の主張ばかりで、日本の主張が少ないように思いました。そして、日本批判ばかりのような気がします。これではさらに反日、反韓が進むのではないでしょうか」。
今お答えいただいたような感じもしますので、続いてのメールに行かせていただきたいと思います。ニコニコネーム、レッドフォックスさんからいただきました。「見もしないで批判することはよくないと思って最後まで見たその感想。韓国人の言い分だけを聞いて、検証もしないで真実と決めつけて、日本人に悪人のレッテルを貼ろうとしている番組だけど、韓国が海外で垂れ流している捏造だから目を背けて放置してきた結果だということを重く受け止めなければならない。「うそを100回繰り返せば真実になる」、これは韓国のことわざだけど、国際社会においてはそれは正しいということを教えてくれた動画」。
角谷:そういう意味では、イギリスに頼んだことがこんなに今大騒ぎになっているとは想定してなかったんですけど。
松嶋:(笑)
角谷:だけど、一方で皆さんの指摘のように戦勝国であるということ、戦勝国側から見ると日本はどういうふうに見えているのかということ。それから、いわゆる帝国主義の中での植民地政策というのが、イギリスのやってきた植民地政策と日本の植民地政策の違いがあるとか、いいところ、悪いところがあるとか、いい植民地政策の成功例をイギリスだとするならば、日本はどうだったのかという見られ方をしたんじゃないかとか、そんなことはもしかしたら番組の中に随所に垣間見えているのかもしれない。そこは僕はつまびらかにわかりませんけれども。ただ、きのうの書き込みの中でおもしろいのがあったのは、「いろんな国にこういう番組をつくってもらったら、いろんなことがわかるんじゃないか」と。確かにおっしゃるとおりで、今度はもしかしたら、今も書き込みがありましたけど、じゃあドイツがつくったらどんな番組になるのかとか。
松嶋:そうですね。
(つづく)
◇関連サイト
・[ニコニコニュース]「『世界から見た日韓問題』―タイズ・ザット・バインド エピソード1―」全文書き起こし(1)~(5)
http://search.nicovideo.jp/news/tag/20150731_「世界から見た日韓問題」―タイズ・ザット・バインド エピソード1―?sort=created_asc
・[ニコニコ生放送]「世界から見た日韓問題」―タイズ・ザット・バインド エピソード1― - 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv227558581?po=news&ref=news
・ニコニコドキュメンタリー - 公式サイト
http://documentary.nicovideo.jp/
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