
2年前、酷暑の影響で野菜の価格が高騰していた際、スーパーでの視察に同行していた岸田総理。その横で懸命に説明していた青いスーツの女性こそ、元総理補佐官の矢田稚子氏。
矢田稚子氏のキャリアは、一般的な政治家や官僚の道筋とは大きく異なる。パナソニックの労働組合幹部としてキャリアを歩んだ後、2016年に民進党公認で参院比例区から立候補し、初当選。その後、国民民主党に移籍し副代表を務めたが、2022年の参院選で惜しくも落選。その後、彼女は会社員としてパナソニックに復職した。
しかし、そんな矢田氏に突如舞い込んだのが、総理補佐官の就任要請だった。元野党議員、しかも「民間人」としての経験を持つ矢田氏が選ばれたことは政府内でも大きな話題となり、「異例の抜擢」として注目を集めた。
矢田氏が担当したのは、賃上げや雇用といった労働者に直結する課題。特に岸田総理、さらに石破総理とともに、働く世代や若者、そして女性たちの未来を明るくするための政策提言に取り組んできた。
「未来ある若者・女性が『この地域に残っていきたい』『地元に戻りたい』と、そう思える地域社会を作っていかなければならない」と語った矢田氏、「官邸の異分子」として、さまざまな提言を行ってきたが、今年3月突然の退任が決まった。国会議員、そして総理の補佐役として見てきた政治の世界はどのようなものだったのか。
クローゼットは“青”だらけ?“一旦卒業”宣言後の悩み

矢田氏のイメージカラーは“青”。クローゼットを埋め尽くす“青色のジャケット”について、矢田氏は以下のように語った。
「特に参議院って女性議員が多いため、参議院になる時に、イメージカラーを決めようということで決めた。最初、青色のジャケット自体が稀でいろいろな人に声をかけて、見かけたらとにかく連絡してもらい、どんどん買い揃えていったため20着近くある。今は、黒とかグレー、紺色のスーツを一生懸命買い揃えている」
野党の議員だった矢田氏が異例の抜擢となった経緯について、矢田氏は以下のように振り返った。
「青天の霹靂。当時、会社に復帰する準備を進めていたが、会社に官邸から『補佐官に…』と電話があった。会社側も断る理由もないし、あなたがしてきたことが生かせるのであれば、受けてみてはどうかと」
「参議院時代、自転車で通っていたので、自転車で通わせてくださいと話をしたら、やめてくださいと言われた」
野党出身であることの官邸内での「アウェイ感」はなかったのか。
「入ったのも初めてなら、ここはどこだと言って見学から。官邸にいる人は与党の方なのでアウェイ感があった。就任した時に全議員の部屋(720人)を回って挨拶したが、岸田総理にも驚かれた。野党の人には、裏切り者といったようなことを言われたこともあった。ただ、参議院の時に一緒に活動していた与党議員の先生方が、ちょうど副大臣クラスに就任されたり、副官房長官になられた方もいたため、すごくよくしてもらった」
官邸に入ったからこそできたことについて、「1年半で38カ所の現場を回る」「賃上げや雇用問題についての現場からの課題提起」などをあげた。また、その他の功績として「女性の働き方の違いによる生涯賃金の差」といった、政府初のデータを複数公開している。
激務!政治家の一日 “母”と“政治家” 二足のわらじ

政治家としての一番の大変さについて、「労働環境として本当に過酷すぎる。自分が雇用担当や働き方改革を担っているが、子育てしている女性たちが入っていくのは並大抵のことじゃないと実感した。忙しいにもほどがある」と矢田氏は語る。
「正直、コロナに救われた(夜の懇親が全てなくなった)と思っている。朝から高校生の息子の食事を3食作る。その後は委員会、国会見学対応、来客対応で、質問も作らなくてはならない。小さい政党だと全部自分でやる。週4回質問していたこともある。そう思うと、本当に過酷で寝れない」
高校生の息子への食事作りについて、作り置きが基本とした上で「日曜日の午後3時からと決めて作り置きしていた。そこで10何品ぐらい作って冷蔵庫に入れておき、そこから弁当に詰めたり、夜のご飯にしたり、そういう生活をしていた」と当時の苦労を振り返った。
また、“過酷な選挙”についても、矢田氏は以下のように語った。
「普通の選挙区の人は、駅で朝~夕方、一番子育てや家事が忙しい時間帯に立っているが、全国比例は、全国に自分の名前を売っていかなれけばならない。なので私の場合は、全国の電気産業のある拠点を1年半で1500拠点、工場、営業所といったところを中心に回った」
「飛行機に100回以上乗り、新幹線も100回以上、距離にして地球4周半。その間も、息子がいるため、3日に1回は家に帰らざるを得なかった。例えば青森まで行き、次、秋田と2週間かけて回るところを、途中で1回帰り、3日後また行くというように余計に大変だった」
(『ABEMAヒルズ』より)

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