
地方での空き家・古家投資は、情報不足や専門業者の少なさといった参入障壁が存在する一方で、都心部にはない魅力的な可能性を秘めています。広大な土地と割安な物件価格を活かせば、独自の再生戦略によって高い収益性を実現することも夢ではありません。本記事では、大熊重之氏の書籍『地方は宝の山! リスクを極限まで抑えて儲ける「空き家・古家」不動産投資』(日本実業出版社)より、地方の不動産投資におけるメリットとデメリットを概観し、事例から投資を成功させるヒントを探ります。
不動産投資における地方物件のメリット・デメリット
地方を開拓する際には大きなハードルがいくつもあります。
なによりもまず投資の情報が少ないことです。大手不動産サイトを見ても戸建賃貸情報自体が少ないのに、ましてや地方での戸建情報はさらに少なくなります。つまり、不動産売買のサイトだけでは、いい物件に出会うチャンスはほとんどないということです。また、地方の各エリアで大家業をしている仲間も少ないため、コミュニティーが存在していないというのが現実です(むしろ、自分でコミュニティーづくりをすることをお勧めします)。
さらに、専門の再生業者がいないことが大きなデメリットとしてあります。まだ地方では、それほど空き家・古家再生に詳しい業者がなく、多くは業者との関係づくりが優先されます。地方の空き家・古家投資は、これらのデメリットを受け入れながらの投資になります。
しかし一方、地方のメリットはいい物件がたくさん眠っているところです。敷地も建物も広い。その割に物件が安い。つまり、そうした広さを生かした再生ができるということです。
地方では駐車場の需要が高いので、余りの敷地があれば駐車場をつくると競争力のある物件に変わります。宮城県で駐車場がつくれるほどの広い庭のある物件で成功したTさんの事例です。
地方再生事例1:宮城県柴田郡柴田町船岡西
築年数:47年
販売時:540万円/取得時:170万円
工事費:350万円
家賃:6万8000円/利回り:15.7%
宮城県柴田町の船岡にある物件ですが、船岡というところは、大学や自衛隊の基地が近くにあり、戸建賃貸の需要がある場所です。相続物件だったのですが、売値が高くてなかなか決まりませんでした。不動産屋と何回も話し合って粘り強く金額交渉をした結果、170万円で買うことができました。
建物は5LDK、物置も付いていて大家族向けだと思いデザイン性を重視してリフォーム工事を始めました。襖(ふすま)で仕切ってあった大きな1部屋を2部屋にして合計6部屋へ修繕。もともと公共下水につながっていた水洗トイレでしたので、ここの修繕にあまりお金がかからなかったのが大きく利回りを取れた要因です。
そして、なんといっても魅力的だったのは車3台が停められる庭でした。建物の前が庭で、整備をすればもっと駐車場を広げられる状況でしたが、大きな木の根っこがたくさんあり、これを撤去するには費用がかかるため、そのままの状態で貸し出しました。
すると1ヵ月後、地元の土木会社から申し込みが入りました。社宅にしたいそうで、その際に庭を整備していいかということでした。私は躊躇なく合意、しばらく経って見に行ったら、木の根を抜いて整地し、砂利を敷いてきれいになっていて、さすが本職と感心しました。結果、車が6台駐車できるようになり、1人1台車が置けるようになったそうです。
このように、地方の物件は駐車場のスペースを広げることもやりやすく、その分、賃料アップにもつながります。入居した土木会社が庭をつぶして駐車場に変えてくれたので、Tさんはお金を出さずに広い駐車場を確保できたことになったのです。
この物件は社員寮として利用されました。Tさんと同じように、車が5台停められる物件を私も同じ宮城県で購入してみたところ、狙い通り社員寮として使いたいという申し込みが入りました。法人ということで家賃アップの交渉をしたところすんなり合意に至り、かなりの利回りアップとなっています。

ここでもう1つ、駐車場がない物件を安く購入し、近隣の駐車場を借りることで家賃がアップした例も挙げておきましょう。
築年数:56年
販売時:未公開/取得時:225万円
工事費:357万円(うち追加工事47万円)
家賃:6万8000円/利回り:14.0%
駐車場なしの案件でした。駐車場は月極9000円前後が相場で、工事中に近くのお寺で見つけた月極5000円(軽自動車限定3000円)の駐車場を契約しました。オーナーも攻めの姿勢で物件の追加工事を行い、物件+駐車場付きにして家賃アップにつながりました。
駐車場なしでもこういったやり方があるのだと勉強になりました。そこで、オーナーの話を聞いてみました。
「私は横浜在住なので関東の物件ツアーにいくつか参加したのですが、物件価格だけで500万円、リフォーム費用を含めると1000万円くらいしました。
しかし、岐阜の物件価格は225万円、リフォーム費用300万円を加えても、とても安価に感じました。入居が決まるかどうかが最大の心配でしたが、物件は岐阜駅に近く、金華山(きんかざん)の麓(ふもと)、城下町内、岐阜公園へ徒歩2分という好立地が決め手です。リニア中央新幹線の開通に伴い、名古屋経済圏が活発化すると予想されていますが、そうなると名古屋通勤圏(電車で約20分)の岐阜も活性化すると予想したからです」


大熊 重之
一般社団法人全国古家再生推進協議会理事長

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