高齢化と過疎化が深刻な日本において、総務省令和5年度版「過疎対策の現況(概要版)」によると、全国で894の市町村が過疎地域に指定されています。その一つ、福岡県うきは市(2024年時点人口約2万7000人)は、高齢化率が36%を超える典型的な超高齢化が進む山村です。本稿では、大熊充氏の著書『年商1億円!(目標)ばあちゃんビジネス』(小学館)より、うきは市の現状を具体例として、日本の地方が共通して抱える課題を考察します。

送迎ボランティアで聞いた、過疎地域に住む高齢者たちの本音

1年8ヵ月で『ジーバー』が出動した数は数千回! 約200人の地元のじいちゃんやばあちゃん定期的に利用してくれていました。

福岡県うきは市で立ち上がった高齢者向けの無料送迎ボランティアサービス

「最近、調子はどうですか?」

「移動の他に困ってることはないですか?」

「仕事がない? じゃあ仕事があったら働きたいですか?」

「どんな会社だったら入りたいですか?」

そういうやり取りを地道に続けて、エリアごとに集計も取りました。すると、70歳までは働ける場所がある。でも、75歳から上になると雇ってくれる会社は皆無。75歳以上の高齢者は自営業以外の職には就けないという現状が見えてきました。

働く場所がない。車もない。だから外に出かけなくなった。

「ここ1週間で今日はじめて大熊くんと話をしたわ」

「久しぶりに人と会ったよ」

「うちの近所の〇〇さん、じつは孤独死でね……」

「もう、早く死にたいわ」

そんな胸が締め付けられるような声があっちでもこっちでも聞こえてきました。まだコロナ禍前だったにもかかわらず、みんな家でじーっとして、誰とも話してない。そんな人がめちゃくちゃ多かった。

見えてきたのは「地域の衰退」と「高齢者の孤立」

浮き彫りになったのは、うきは市の高齢者たちの貧困と孤立です。

何しろ市の人口は減る一方。ピーク時から4割減りました。子どもが減って高齢化が進んで、所得なんて全国の低所得水準圏の下から数えた方が早いほど。自然や食べ物が豊かだし、白壁の街並みのような観光財産もあるけれど、観光客が来ても地元にお金は落ちないんですよ。

人口は半減する、収入も少ない。賑わっているお店はあるけれど外から来た企業だったり、外資系だったり。わずかな観光収入もそういう企業が持っていっちゃう。地方の田舎によくあるパターンです。

僕の目にはふるさとがどんどん衰退していっているように見えました。『ジーバー』をやっていた頃は、そんな地元を少しでも良くしたいという気持ちがあったんです。結局、『ジーバー』の活動は1年と8ヵ月、コロナの感染症が拡大する前まで続きました。

手のひら返しされたボランティアサービス

コロナ禍こそ『ジーバー』の出番だと思っていたのに、「こんな時に年寄りを車に乗せて連れ出して!」とお叱りを受けました。マスコミであんなにもてはやされたのに、手のひらを返したように社会の悪者になってしまった。

しかもボランティアが当たり前になると、利用していたじいちゃんやばあちゃんたちも、だんだんわがままになってくるんですよ。「遅い!」とか「態度が気に入らん!」と理不尽に怒られることも増えてきて「なんだかなぁ」って思うことも増えました。

まあ、僕らの出費はガソリン代くらい。当時は1日走っても2、3,000円かな。毎日の飲み代をガソリンに当てるつもりでやったらいいじゃん、って仲間と話していたんです。

じいちゃん、ばあちゃんに喜ばれている実感もあったし。何しろ燃えていました。高齢者と若い人の懸け橋になろう、世代間のつながりを作っていこうって。

大熊 充 うきはの宝株式会社 代表取締役

(※画像はイメージです/PIXTA)