
アメリカのデラウェア大学で、昆虫を食材として扱うユニークな授業が行われている。講師はマイケル・クロスリー教授で、学生たちは実際に虫を調理し、味わいながら、食糧問題への新たなアプローチについて学んでいる。
この授業は、昆虫を持続可能な食資源ととらえ、その可能性を探るためのものだ。
本文では調理中の様子や、実際に食材として使用したゾウムシの幼虫が出てくることをあらかじめお伝えしておく。
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食べて学ぶ、昆虫食の実践授業
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デラウェア州ニューアークにあるデラウェア大学のマイケル・クロスリー教授は、農業昆虫学の専門家として、昆虫を“未来の持続可能な食料資源”として捉え、その可能性を学生たちと共に探っている。
その一環として行われている授業が、「Insects as Food(昆虫食)」だ。
授業の形式は、講義と実習を組み合わせた体験型で、昆虫の栄養価、生産コスト、環境負荷などを学ぶ理論編に加え、実際に調理し試食する実技パートが用意されている。
学生たちは、理論を「味覚」で体感しながら、先入観や食文化についても考えを深めていく。
今回の実習で作った食材は、東南アジアのヤシに生息するゾウムシの幼虫、サゴワームを使ったチリコンカンだ。
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サゴワーム(ヤシオオオサゾウムシ)は東南アジアなどでは一般的に食べられている昆虫だ。

また、今学期のメニューには「ピリ辛オオゲンゴロウのパスタサラダ」や、「クロアリのレモンスコーン」といった料理も登場した。
クロアリには「ギ酸」という成分が含まれており、これが柑橘類の皮のような酸味をもたらすという。「レモンの皮を入れる代わりにアリを使うようなもの」と教授は説明する。
こうした調理には、安全性やアレルギーの知識も必要になるため、事前に扱い方を学び、衛生管理にも十分な配慮がなされている。
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昆虫食に対する学生たちの反応
虫を食べると聞いて顔をしかめる人も多いが、授業に参加した学生たちの反応は意外にもポジティブだ。
クロスリー教授によれば、初めは驚きながらも、「案外いける」と好意的な反応が多いという。
ある学生は、「自分はチョコチップ入りのスコーンの方が好きだけど、この蟻のスコーンも意外とアリだった」と語る。
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昆虫は未来の主食になるか
世界人口が増加し、気候変動や水不足などの影響で食糧供給に限界が見え始めるなか、「昆虫を食べる」という選択肢は国際機関や食品業界でも注目されている。
昆虫は成長が早く、飼育に必要な水や飼料も少なくて済むため、持続可能なタンパク源としてのポテンシャルは高い。事実一部の地域では今も貴重なたんぱく源として食されている。
見た目の抵抗感はあるかもしれないが、形状がわからなければ、意外とおいしかったりする昆虫もありそうだよね。

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