福岡県筑前町の自宅で妻に対して性的暴行を加えたとして、中学校教員の男性が不同意性交等罪の疑いで逮捕されたと報じられています。

RKBオンラインなどによると、男性は4月23日夜、自宅で妻の両足をつかんで引きずるなどして抵抗できない状態にし、性的暴行を加えた疑いが持たれています。

妻が「無理やり性交された」と被害を届け出て、警察が証拠などを調べた結果、男性が関与した疑いが強まったそうです。

妻は以前、警察に対してDVの相談をしており、警察は男性に警告をしていたそうです。一方、男性は「同意の上で性行為をしました」と容疑を否認しています。

意外に思われる方もいるかもしれませんが、配偶者間の性行為であっても、不同意性交罪は成立します。具体的にどのようなケースで犯罪になり得るのか、解説します。

●夫婦間でも「不同意性交罪」は成立する

不同意性交罪の条文(刑法177条)は、「婚姻関係の有無にかかわらず」という文言をわざわざ入れることで、夫婦間であっても同罪が成立することを明示しています。

性的行為は個人の自由な意思によるべきものであって、夫婦間であっても不同意性交罪や、改正前の強姦罪強制性交等罪が成立しうること自体には特に争いはありませんでした。 (なお、もっと古くは否定説が通説であった時代もあります)

しかし、2023年の改正の際、このことを確認するためにあえて明示的に条文にこの文言を入れたと言われています。

本件では、両足をつかんで引きずるなどして抵抗できない状態にしたということですから、まずは「暴行」(刑法177条1項、176条1項1号)があるかどうかが問題となります。同条の「暴行」は、反抗を著しく困難にする程度のものである必要があります。

ただし、この暴行がないからといって、ただちに不同意性交罪が成立しない、というわけではありません。

改正前から、日常生活の中で上下関係を作り出し、その力関係の中で加害者による性的要求を拒否できない状態に追い込まれた場合、準強制性交等罪(改正前刑法178条)における「抗拒不能に乗じ」にあたると考えられていました。

改正後は、このように地位や関係性を利用し、被害者を逆らえない状態にして性交渉をおこなった場合、刑法176条1項8号の「経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること」に乗じたものとして、不同意性交罪が成立する可能性があります。

●配偶者間でない場合と比べて「立証のハードル」は高い

性交渉は夫婦間ではごく自然な営みです。長期間にわたり性交渉がないことは、場合によっては離婚原因となることすらありえます(京都地判昭和62年5月12日など参照)。

そうすると、配偶者の一方が「同意がなかった」として不同意性交罪の成立を主張した場合、配偶者間でない場合と比較して、同意がないことの立証は難しい傾向にあるといえそうです。

今回の事件の詳細はわかりませんが、妻がこれまでに警察にDVの相談をしており、警察が男性に警告をしていたという事情もあり、妻側で同意がないことが認められるだけの証拠を保全していたものと思われます。

夫婦でも「不同意性交罪」は成立する?妻「無理やりされた」逮捕された夫「同意の上だ」