群馬県草津町の黒岩信忠町長(78)と肉体関係を持ったと虚偽の告発をしたとして、元草津町議の新井祥子氏が名誉毀損と虚偽告訴の罪に問われている裁判が5月15日、前橋地裁であった。

新井氏は被告人質問で、当時うったえた話が事実ではなかったと認めた一方で、「町長からの被害をなかったとするのは納得できない」と述べ、体を触られるなどの性被害を受けたという主張を続けた。

公判を傍聴した黒岩町長は「この期に及んでよく嘘が言えるなと思う」と話した。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)

名誉毀損は無罪を主張

新井氏は草津町の議員だった2019年、黒岩町長と性関係を持ったとする嘘の証言をライターに伝え、ライターは同年11月、その証言を盛り込んだ電子書籍「草津温泉 漆黒の闇5」(すでに販売打ち切り)を出版した。

黒岩町長は当初から一貫して否定し、同年12月に新井氏とライターを名誉毀損の疑いで刑事告訴した。

また、新井氏から強制わいせつの疑いで刑事告訴されたことから、2021年12月に新井氏を虚偽告訴の疑いでも刑事告訴。前橋地検が2022年10月、新井氏を起訴していた。

ライターの男性の刑事裁判が先に始まり、前橋地裁は2024年1月、懲役1年、執行猶予3年を言い渡した(その後確定)。

新井氏の裁判は2024年12月に前橋地裁で初公判が開かれた。報道によると、虚偽告訴罪については起訴内容を認め、名誉毀損罪については無罪を主張している。

●「ズルズルと嘘を重ねてしまったのが正直な気持ち」

この日の被告人質問は約3時間にわたって開かれた。

2019年に出版された電子書籍には、新井氏が「町長室にて黒岩信忠町長と肉体関係を持ちました」などと告白する文書が掲載された。

これらについて問われた新井氏は「記憶をたどって書いたが、他にも被害を受けたことがあったので、混同して書いてしまったんだと思います」と話した。

また、新井氏は黒岩町長を強制わいせつの疑いで刑事告訴した際、町長室で町長からキスされたり乳房や陰部を直接触られたりしたとうったえていた。

これについて検察官が「嘘だったのか?」と問いかけると、新井氏は「はい」と虚偽の告訴だったことを認めた。

「虚偽の告訴をして罪悪感はなかったのか?」と問われると、次のように述べた。

「たしかに内容は違うのかもしれないですけど、性被害にあって心の傷はありましたし、嘘の内容があることに迷うところがありましたが、自分の口からひっくり返すことができず、ズルズルと嘘を重ねてきてしまったというのが正直な気持ちです」

●体を触られるなどの性被害は受けたと主張

一方、当初「町長と肉体関係を持った」と虚偽の主張をしていた2015年1月の町長室での出来事について、「虚偽と言われるが被害にあったことは間違いない」と説明し、黒岩町長から体を触られたりスカートをまくられたりしたとの主張を展開した。

新井氏は町長室で黒岩町長と面会した際に会話を録音していたが、約1時間の音声データには性被害にあったことが明確にわかる内容は記録されていなかった。

この点に関して、裁判官から「声を出すなどの証拠を残そうと思わなかったのか?」と問われると、新井氏は「そのときはそういう考えが出ませんでした」と述べた。

また、別の裁判官から「虚偽告訴をしたことについて今はどう思うか?」と尋ねられると、次のように話した。

「事実と違うことをうったえて、いろいろな人にご迷惑をおかけし、真実に背いたことを申し訳なく思い真摯に受け止めています」

●黒岩町長「本当ならボイスレコーダーに大きな音が入るはず」

被告人質問を傍聴した黒岩町長は公判後、報道陣の取材に応じ、「私が彼女の体に触るなどすればボイスレコーダーに衣ずれ音などの大きな音が入るはずです。この期に及んで、よく嘘を言えるなと思います」と話した。

新井氏は今回の刑事裁判以外にも、黒岩町長から損害賠償を請求する民事裁判を起こされており、165万円の支払い命令が確定している。

草津町 虚偽告発の新井氏、刑事裁判で「性被害は事実」主張…黒岩町長「この期に及んでよく嘘を」