
広島弁護士会は5月15日、未成年後見における職務代行者の報酬等の補助施策の実施を求める会長声明を発表した。声明では、こども家庭庁に対し実施要綱の改訂を、広島県・広島市に対しては独自施策での補助を求めている。
背景には、親権者がいない未成年者や保護者による監護が適切でない場合の緊急対応として選任される「職務代行者」に対する報酬制度の未整備がある。
現在のこども家庭庁の児童虐待防止対策支援事業実施要綱では、未成年後見人の報酬補助は規定されているものの、緊急性の高い場面で選任される職務代行者の報酬については規定が「漏れている」状況だ。
●「報酬等の助成がないことは現場の選択肢を制約」と警鐘広島弁護士会は声明で、「職務代行者の役割は重要かつ負担が大きいにも関わらず、職務代行者の報酬等の援助が実施要綱に規定されていないことは、未成年後見人支援事業の本来の制度の趣旨に反し、援助対象に対する間隙が存在する」と指摘している。
さらに、「行政が緊急の必要性が認められる事案において職務代行者の選任を躊躇するようなことになれば、未成年者の生命・身体の安全が十分に図られないことになりかねない」と警鐘を鳴らしている。特に「児童相談所と保護者の意向が対立しているような事案」では「中立的な専門家を迅速に選任する必要が高い」として、「報酬等の助成の根拠規定がないことは、児童虐待防止のために活動する現場の選択肢を制約することになりかねない」と懸念を示した。
広島弁護士会はこの問題について、2021年10月にも同様の声明を発表していた。
また日本弁護士連合会も2024年1月に「子どもの権利保障のために、子どもが国費・公費で弁護士による法的支援を受けられる制度構築を求める意見書」を公表し、職務代行者の報酬について国庫・公費による対応を求めているが、「現在に至るまでこの点については盛り込まれていない」としている。

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