
三重県亀山市の新名神高速道路で、青い乗用車が逆走して、避けようとした別の乗用車に後ろの車が追突するなど、計4台が絡む「玉突き事故」が起きた。
報道によると、この事故で4人が病院に搬送されたが、いずれも軽傷という。逆走車は別の乗用車2台と接触したあと、そのまま走り去ったそうだ。
言うまでもなく、高速道路の逆走は非常に危険だ。この車は事故後少なくとも10キロは逆走したとみられるという。運転手は罪に問われるのだろうか。
●高速道路を逆走した責任高速道路を逆走した場合、「通行区分違反」となる(道路交通法17条、同119条1項6号/3カ月以下の懲役または5万円以下の罰金)。
ただし、行政罰として違反点数が2点、反則金が9000円(普通車の場合)となっており、反則金を納めた場合には刑事罰は科されない(反則金制度)。
●逆走によって交通事故が発生した責任逆走は、「通行禁止道路を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為」(自動車運転死傷行為処罰法2条8号)にあたると考えられる。
そこで、人を負傷させた場合は15年以下の懲役、人を死亡させた場合は1年以上の有期懲役(※原則として最大20年まで。刑法12条1項)となる。
ただし、同法は故意犯であるため、逆走の故意(逆走していることの認識・認容)が否定される場合には、自動車運転過失致死傷罪(同法5条、7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金)となる可能性もある。
●逆走の際に別の乗用車に接触した責任逆走の際に別の乗用車に接触した場合、交通事故であり、報告義務が生じる。(道路交通法72条1項後段)
したがって、そのまま立ち去って報告をしなければ、同義務違反となる(同119条1項17号、3カ月以下の懲役または5万円以下の罰金)。
また、人が負傷している場合には救護義務も生じる。こちらは怠れば10年以下の懲役または100万円以下の罰金となる(同117条1項、2項)。
ただし、救護義務が生じるためには、人の死傷の認識が必要と考えられている(最大判昭和40年10月27日など)。
この認識は、人が死傷したことを明確に認識していなくてもよく(いわゆる「未必の故意」)、事故の具体的な態様、車両の損傷状況から推認される衝撃の大きさや音の大きさ、車両が人と衝突した事実や被害者に対する認識、事故後の加害者の言動などから総合的に判断されると考えられる。
なお、民事上の不法行為責任(民法709条)も負うことになり、損壊した車の修理費用や、負傷した被害者の治療費・慰謝料等を賠償する責任を負う。

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