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 今回紹介する「すべるのきらい」は、靴下や手袋、玄関マットなどの裏に塗り、滑らないようにしてくれるアイテム。接着剤のような液体ですが、乾けばゴム状になるというものです。

 以前、連載記事で紹介した「プラスティ・ディップ」と似ていますが、こちらは水性というのが大きな違い。乾く前なら水洗いで落とせますから、準備も片付けも簡単で、より手軽に使えるというのがメリットです。

 また、内容量が70gと少ないですが、必要なヘラやテンプレートが付属しながら、900円を切る価格の安さも魅力です。

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 本来の用途は直接は工具と関係ないのですが、補助的に役立ちそうだと思い試してみました。具体的には、軍手への利用です。

 そもそもの話として、滑り止め付きの軍手は普通に売られていますし、何だったら、手のひらから指までゴムに覆われたグローブだって売っています。薄手のものがよければ、ニトリル手袋だってあります。

――わざわざ自分で滑り止めを付ける必要なんてないじゃないか? と思ってしまいますが、これが結構あったりします。

●“欲しいところだけ”滑り止めをプラス

 例えば、ネジを回す場合を考えてみましょう。滑り止めがあるとしっかり力を伝えられるため、固いネジを緩めたり、強く締め込むというときに役立ってくれます。

 しかし、ネジを緩めた後、外れるまで回し続けてる時や、この逆に、ネジを奥のまでくるくると締めていく時はどうでしょう。手のひらでドライバーのグリップを押さえつつ、指先でくるくると回しますよね。このとき、手のひら部分に滑り止めがあると、グリップが引っかかってうまく回転してくれません。無理に回そうとすれば、軍手がグリップに巻き取られてしまいます。

 もちろん、力加減をうまく調整すれば空回りするので問題ありませんが、たまに引っかかる感触があると、結構イラっとくるものです。こういう時は、「手のひらの滑り止めだけなければいいのに」と思ったりします。

 また、滑り止めのないふつうの軍手だと、指が滑って紙の説明書がうまくめくれないことがあります。基本的に滑り止めはいらないけれど、「指の先に少しだけ滑り止めが付いていればいいのに」というシーンも考えられます。

 これ以外にも、電動ドライバーを握る際に、指先の滑り止めがジャマになることもあるでしょう。

 そうです。「すべるのきらい」があれば、滑り止めを付ける場所を自由に決められるため、自分好みの作業軍手が作れるのです!

 実際に試してみましょう。

●塗って乾くのを待つだけだから超簡単

 使い方といっても、塗って乾かすだけというシンプルさなので、超簡単です。

 あえて難点をあげるなら、使用方法にある「液体ゴムを適量出す」がどんな量なのかわからないことでしょうか。イラストを見ると、明らかに過剰ですしね。そういえば、昔、プリントゴッコ(家庭用印刷器)でインクの量がわからなかったよな……みたいなことを思い出したりしました。

 速乾性はないため、足りなければ後から追加しても大丈夫。まずは、少な目に出して、どんな風に塗れるかを確認するといいでしょう。

 手順としては、テンプレートをあてて液体ゴムをのせ、ヘラでテンプレートの穴越しに塗る、というもの。テンプレートが薄いことからもわかる通り、液体ゴムを高く盛る必要はないのでサッと終わります。

 ただし、星形は角までしっかり塗るのが難しく、しつこく何度もヘラでいじっていると、液体ゴムがテンプレートの下に入り込んではみ出してしまいます。形があまりキレイにならなくても滑り止めの効果は変わりないので、あまり気にしないのがコツでしょうか。

 まず、テンプレートの穴ごとに十分な量の液を塗布。次に、ヘラで先端で角へと広げます。最後の仕上げに、ヘラで押し込むように伸ばす……という方法が、何度か試してよさそうだと思いました。

 手間はかかりますが、この方法だと角の抜けが少なくなりました。面倒であれば、星形ではなく丸形を使うほうがいいでしょう。こちらだと角がないので、最初からヘラで押し込むように伸ばすだけでOKです。

 乾くまでの時間は塗る厚みにもよりますが、大体3時間くらい。水性なので、テンプレートとヘラは余分な液体ゴムを拭き取った後、水洗いすればキレイになります。

●布などの繊維状のもの以外には使えない? 実験してみた

 説明には「繊維状の物ならなんでもOK!」とありますが、プラスチックなどには使えないのでしょうか。気になったので、アクリル板3Dプリンターの出力品(PLA)に塗ってみました。

 ちゃんと滑り止め効果も出ていますし、母材が溶けたりする様子もなく、問題なさそうに見えます。

 では、どうして繊維状の物に限定されているかというと、そうです、剥がれやすいのです。爪を引っかけて剥がしてみると、簡単に剥がれました。

 元々接着力は高くなく、繊維を絡め取り込むことでくっつくのでしょう。なので、プラスチックのような平らでスベスベしたものだと剥がれやすくなってしまいます。

 試しに皮手袋にも塗ってみましたが、表面の毛羽立ちくらいしか繊維状のものがないため、強めに引っ張ると剥がれてしまいました。

 布でも目の詰まったツルンとした感触のものは剥がれやすそうですね。

 これを逆手に取ると、プラスチックでも凹凸が激しいもの、網状になっているものであれば、剥がれにくくできそうです。3Dプリンターの出力品に使うなら、わざと底面にメッシュパターンを作っておくのもアリじゃないでしょうか。

アイディア次第で工作が便利になるかも

 今回は主に軍手の滑り止めとして考えてみましたが、作業用エプロンのポケット内側に塗って中身が滑り落ちないようにするとか、ベルトの滑りやすい部分に塗るなど、応用範囲はアイディア次第で広がります。

 また、剥がれやすいというのを理解したうえで、プラスチックや金属に使うのもアリ。滑り止めとしてではなく、剥がせる緩衝保護被膜、部品間の擦れを防ぐ保護材といった用途で使うのも面白そうです。

 個人的にやってみようと思ったのは、綿手袋。撮影対象に指紋を付けたくないときにはめている手袋ですが、指先が滑って困ることが結構あって……。あとでちょっとやってみようかな。

●お気に入りポイント●

・実売で900円以下と安い

・水性で扱いやすい。乾けば洗濯もOK

・滑り止め以外の用途にも使えそう

“ピタッ”と欲しいところにピンポイントで効く「すべるのきらい」を使ってみた