古代の津波をイメージした画像

 北海道でこれまででもっとも古い津波の痕跡が発見されたそうだ。それはどこか懐かしい輝きを放つ「琥珀」だ。

 日本の産業技術総合研究所久保田彩博士らによると、大量の琥珀を含んだ白亜紀初期の深海堆積物は、1億1600万~1億1400万年前に津波が起きたことを示す証拠であるそうだ。

 琥珀は樹液が固まってできたものだ。したがって深海の琥珀ももともとは陸上にあった。ところが当時起きた津波によってさらわれ、海の底に沈んだと考えられるのだ。

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琥珀に刻まれたミステリアスな炎状構造

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 大昔に起きた津波の痕跡は、なかなか見つかりにくい。それによって変形する海岸線や残された堆積物を、嵐などによるものと区別するのが難しいからだ。

 そこで久保田博士らが注目したのは、北海道北部の「下中川採石場」にある1億1600万~1億1400万年前(白亜紀初期)の深海で形成された「シリカ堆積物」だ。

 ここにはなぜか琥珀が豊富に含まれているのだが、それらを蛍光イメージングで分析したところ、ミステリアスな「炎状構造」が発見されたのである。

下中川採石場の堆積物に含まれる大量の琥珀/Credit: Scientific Reports (2025). DOI:10.1038/s41598-025-96498-2

琥珀は大昔の津波によって海にさらわれた

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 琥珀は大昔の鳥のヒナ恐竜の血を吸ったダニなど、太古の記憶をとどめていることでよく知られている。久保田博士らによるなら、この炎状構造もまたもっとも古い津波の記憶であるという。

 琥珀の材料である樹脂は、空気に触れているとすぐに固まるが、水の中では柔らかいまま保たれる。

 下中川採石場にある大量の琥珀もまた水中にあり、しばらく固まることがなかった。炎状構造はそのおかげでついたものである可能性が高い。

 このことから、久保田博士らは、その琥珀はまだでき始めのうちに津波によって海にさらわれ、やがて泥に埋もれて保存されたのだと推測している。

 こうした琥珀以外にも、同じように海へと運ばれた陸上起源の堆積物は、津波のような古代の大規模かつ破壊的な現象を解明する手がかりになるとのことだ。

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 この研究は『Scientific Reports[https://www.nature.com/articles/s41598-025-96498-2]』(2025年5月15日付)に掲載された。

References: Amber in the Cretaceous deep sea deposits reveals large-scale tsunamis[https://www.nature.com/articles/s41598-025-96498-2] / Ancient amber may contain traces of tsunamis[https://phys.org/news/2025-05-ancient-amber-tsunamis.html]

本記事は、海外の記事を基に、日本の読者向けに重要なポイントを抽出し、独自の視点で編集したものです。

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