アルマ望遠鏡による観測で、約111億年前の初期宇宙に存在する“棒渦巻構造”を持つモンスター銀河のガスの分布と運動を詳細に捉えることに成功したと、国立天文台、名古屋大学東京大学静岡大学の4者が5月22日に共同発表した。

ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の赤外線観測と、今回の観測結果を組み合わせることで、同銀河が現在の宇宙に存在する棒渦巻銀河と酷似しつつも、その内部では激しくガスが吹き荒れ、一部は銀河中心に落ち込んで猛烈な星形成を起こしていることを解明した。

同成果は、国立天文台(NAOJ) アルマプロジェクトのファン・ショウ特任研究員(名大大学院 理学研究科 兼任)、NAOJの川邊良平名誉教授、名大 高等研究院 YLC教員/同・大学院 理学研究科の梅畑豪紀特任助教、東大大学院 理学系研究科の河野孝太郎教授、名大大学院 理学研究科の田村陽一教授、静岡大 グローバル共創科学部/同・大学院 総合科学技術研究科 理学専攻 物理学コースの斉藤俊貴准教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、英科学誌「Nature」に掲載された。

今から100億年以上前の初期宇宙には、天の川銀河の100倍以上の効率で爆発的星形成を行うモンスター銀河が数多く存在していた。現在の激しい星形成銀河の多くが銀河の衝突合体をきっかけとしていることから、初期宇宙のモンスター銀河も同様の過程を経て、ガス枯渇後には巨大な楕円銀河になると推測されてきた。

モンスター銀河は遠方にあること、活発な星形成で生じた大量の塵に覆われているため、可視光での観測が困難だ。そのため、銀河本体の形状や爆発的星形成のメカニズムは不明な点が多い。

しかし近年、JWSTの赤外撮像観測により塵の内部を見通せるようになり、立派な円盤構造を持つモンスター銀河が多数存在することが判明。その結果、一見すると普通の円盤銀河が、なぜ爆発的星形成を起こすのかという新たな謎が浮上した。

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(波留久泉)

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