ファストフード店やカフェ、牛丼店などの飲食店に行ったときに、レジ前や券売機前が混雑していて順番待ちの列に並ばなければならず、イライラした経験がある人は多いと思います。一方、こうした店の中には、スマホで商品を注文できるサービスである「モバイルオーダー」を導入している店があります。このサービスを使うと、列に並ばずに料理を受け取ることができるため、非常に便利です。

 ところで、レジ前が混雑していてもモバイルオーダーを使わずに順番待ちの列に並ぶ人もいるようで、SNS上では「なぜ使わない?」「モバイルオーダーの方が楽じゃない?」「モバイルオーダーを使わずに行列に並ぶのが謎」といった声が上がっています。

 飲食店がモバイルオーダーを導入するメリットや、店内が混雑していてもモバイルオーダーが意外と使われない要因などについて、飲食店専門経営コンサルタントの成田良爾さんが解説します。

セキュリティー面に不安を感じる可能性も

 飲食店側がモバイルオーダーのサービスを導入する大きなメリットは、深刻な人手不足への有効な対策になることです。モバイルオーダーは、注文や会計を客自身が行うため、その分、人手不足を補うことが可能で、比較的少人数のスタッフで店舗を運営できる可能性があります。

 また、モバイルオーダーのサービスの中には、多言語機能が付いているものもあり、外国人が自身のスマホで注文やオンライン決済をすることが可能です。その場合、飲食店に外国語を話せるスタッフがいなくても外国人の利用が見込めるため、近年はインバウンド対策としても注目を集めています。他にも、「オーダーミスが減る」「機会損失を減らす」など、モバイルオーダーのメリットは多岐にわたります。

 飲食店側のデメリットとしては、やはり導入コストがかかることです。また、客と会話をする機会が減るため、客とのコミュニケーションを重視する飲食店では、業務上支障が出る可能性があります。

 店舗の利用者側にとって、モバイルオーダーは待ち時間を短縮できたり、オンライン決済がスムーズにできたりするので非常に便利と言えます。また、注文時にスタッフを呼ぶ必要がなく、人と接したくないときにはよいかもしれません。

 一方、飲食店に行くと、レジ前に順番待ちの行列ができていても、モバイルオーダーを使わずにそのまま列に並ぶ人も見受けられます。これについては、いくつかの要因が考えられます。

 まず、「モバイルオーダーの便利さを知らない」「知っていても、利用登録の方法や使い方が分からない」など、モバイルオーダーのサービス自体が意外と認知されていない可能性が考えられます。

 また、モバイルオーダーは基本的にスマホで決済をするため、利用にはクレジットカード情報などの個人情報の登録が必要です。そのため、利用登録が面倒だと感じる人やセキュリティー面で不安を感じる人も一定数いるのではないでしょうか。また、現金払いの人は基本的にモバイルオーダーを利用できません。

 店によっては、モバイルオーダーの利用時は有人レジで行っているポイント還元などの特典が受けられない場合があり、ポイントを少しでも多くためたい人はモバイルオーダーにあまり利便性を感じない可能性があります。

 このほか、料理のカスタマイズやアレルギーなどのNG食材に関する相談ができないなど、サービスが手薄になることも要因だと考えます。

 深刻な人手不足や原価高騰などの厳しい経営環境の中で、効率よく運営できるモバイルオーダーサービスにかかる期待は大きくなっています。もし飲食店がモバイルオーダーのサービスをより普及させたい場合は、利用者側から見て、「便利で簡単で損をしない(得する)システム」の構築が必要だと私は考えます。

オトナンサー編集部

飲食店のモバイルオーダーが意外と使われない理由とは?