
「夫が私の不倫を周囲に言いふらしています」——。そんな相談が弁護士ドットコムに寄せられました。
相談者の女性は、10年前にも不倫し、夫に許されて夫婦関係を継続していました。しかし今回、2度目の不倫が発覚。女性は別居を望んでいるのに対し、夫は離婚を求めています。夫は、妻の過去と現在の不倫について周囲の人々に言いふらしているということです。
不倫された側であっても、不倫の事実を第三者に言いふらすことは法的に問題ないのでしょうか。名誉毀損が成立する可能性はあるのでしょうか。
●不倫の暴露は「名誉毀損」になりうる不倫をした側が悪いとしても、法的にはその事実を広く暴露することは、名誉毀損として民事と刑事両方で法的責任が生じる可能性があります。
名誉毀損行為は、刑法上は名誉毀損罪(刑法230条)にあたり、民事上でも不法行為(民法709条)として損害賠償責任が生じます。
刑法上の名誉毀損罪が成立するには、「公然性」「事実の摘示」「名誉毀損性」という3つの要件を満たす必要があります。「公然性」とは、不特定または多数の人が認識できる状態であること、「事実の摘示」とは具体的な事実を示すこと、「名誉毀損性」とは客観的に人の社会的評価を低下させることを指します。
周囲に言いふらすことは、公然性が認められる可能性があり、また、不倫の事実は一般的には社会的評価を下げる事実にあたるでしょう。
●「本当のことを言っているだけ」は反論になる?夫としては、「本当のことを言っているだけだ」と反論していることが考えられます。たしかに、「公共の利害に関する事実」で、かつ、「公益を図る目的」で「真実」であれば、違法性がないとして名誉毀損は成立しません。
しかし、一般人の不倫は、一般的に「公共の利害に関する事実」とは考えられず、「公益を図る目的」もないと思われるため、真実であってもそれを公然と暴露することは名誉毀損罪の成立は妨げられないでしょう。
民事上の責任についても同様です。
このように、配偶者の不倫の事実を不特定多数に言いふらすことは、名誉毀損にあたる可能性が高いです。
ただ、相談者の女性の場合、不倫問題や離婚問題も未解決のままのようですし、夫婦間のプライベートな問題でもあるため、まずは名誉毀損行為での法的措置に訴える前に、カウンセリングや調停などを通じた話し合いの解決を模索することも検討すべきでしょう。
【取材協力弁護士】
大川 雄矢(おおかわ・ゆうや)弁護士
旭川市での実務経験を経て地元神奈川に戻り活動中。債務整理、交通事故、相続、離婚から労働問題まで幅広い分野に精通している。神奈川県全域から東京都、さらには遠方にも対応。明るさと誠実さを大切に、依頼者一人ひとりの最善の解決を目指している。
事務所名:大川雄矢法律事務所
事務所URL:https://www.bengo4.com/kanagawa/a_14130/g_14132/l_582018/

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