
(スポーツライター:酒井 政人)
黒田が“日本人最高”の28分09秒18
66年ぶりに岡山で開催された日本インカレ(日本学生陸上競技対校選手権)。大会初日(6月5日)に行われた男子10000mは地元出身の黒田朝日(青学大4)が高速レースに持ち込んだ。
黒田にとってJFE晴れの国スタジアムは高校時代に3000m障害で活躍した思い出のグラウンド。「誰かについていくのは自分のなかでなかったです」と400mを67秒で入ると、1000mを2分48秒、3000mを8分29秒で通過する。この時点で先頭集団は6人に絞られた。
3800m付近でスティーブン・ムチーニ(創価大3)が前に出て、5000mは14分13秒で通過した。6000m過ぎに黒田が再び先頭に立つと、山口翔輝(創価大2)が集団から脱落。石丸惇那(創価大4)も遅れ始めた。
残り6周でムチーニがペースを上げると、安島莉玖(青学大2)がついていけず、トップ集団はケニア人留学生ふたりと黒田の3人に。そして勝負の行方はラスト1周にもつれ込んだ。
黒田はバックストレートで少し離されるも、地元の声援を力に最後の直線まで粘る。シャドラック・キップケメイ(日大3)が28分07秒94で連覇を果たして、ムチーニが28分08秒43で2位。黒田は優勝を逃したが、日本インカレでは歴代日本人最高タイムとなる28分09秒18を叩き出した。
2月の大阪マラソンで2時間06分05秒の学生記録を樹立した黒田。今大会がシーズン初戦で、「地元で応援してくれる方も多いので、いいところを見せないといけないと思って調整してきました」と話した。そして攻めのレースを披露すると、最後まで会場を沸かし続けた。
3位という結果については、「最後に自分の弱さが出てしまった。駆け引きの部分はもっと何かあるんじゃないかなと思います」と反省したが、「先頭で走る時間が長かったなかで、最後の勝負まで持っていけたのはある程度良かったかなと思います」と充実の表情を浮かべた。
今季は箱根王者・青学大のキャプテンに就任して、「自分は走りで引っ張るのが一番だと思うので、今回の結果は良かったかなと思います。マラソン練習をしてスタミナはついてきていると思うので、トラックシーズンでスピードを高めていきたい」と黒田。今後は日本選手権の5000mに照準を合わせていく。
安島が日本人2番も「自分は弱かった」
黒田朝日に続いてフィニッシュしたのが安島莉玖(青学大2)だ。28分35秒06で4位に入るも、「自分は弱かったなって感じました」と悔しさをにじませた。
安島は関東インカレの男子2部10000mで大幅ベストの28分19秒81で日本人トップ(4位)に入っている。そのときは「朝日さんがエースで、自分が準エース」と話していたが、日本インカレでは大先輩に勝負を挑んだ。
「朝日さんに最後まで食らいついて、ラストスパートで勝ってやろう、というレースプランを考えていました。正直、勝てそうな感じはなかったんですけど、勝てないから無理だという考えではなく、隙を突いて勝ってやろう、という気持ちでいたんです。でも、一番きついときにキロ2分50秒を切るペースになって、呼吸がきつくなりました……」
それでも他校の日本人選手に先着したが、本人の評価は厳しかった。
「自分としてはタイム、順位とも納得していないので、そこはどうでもいいかなって感じです。このままだと出雲駅伝に出走できなかったり、箱根駅伝は希望している往路ではなく、復路になる可能性もある。今後の練習でもしっかり上の方に絡んでいき、準エースじゃなくて、エースになりたいです」
青学大は遠藤大成(2年)が29分13秒59で8位に入り、トリプル入賞を果たした。5月の関東インカレでは折田壮太、小河原陽琉、黒田然ら2年生世代が活躍。駅伝シーズンでは熾烈なレギュラー争いが繰り広げられることになりそうだ。
創価大が2、5、6位のトリプル入賞
青学大と互角の戦いを見せたのが創価大だ。スティーブン・ムチーニ(3年)が黒田に先着して2位に入ると、石丸惇那(4年)が28分47秒86で5位、山口翔輝(2年)が28分53秒20で6位。トリプル入賞を達成したが、石丸は満足していなかった。
「前に黒田君と安島君がいました。箱根駅伝で戦わなきゃいけないチームの2人に負けたのは力不足を実感しています」
トラックシーズンでも走り込みは欠かしておらず、「自分も含めて箱根駅伝に重点を置いて準備しています。スタミナ強化のために月間走行距離の750~800kmをチームで共有して目指しています」と話す。
石丸は1年時から三大駅伝にフル参戦してきたが、今年の箱根駅伝は出走メンバーに選ばれず、悔しさを味わった。10000mはチーム2番目の28分21秒48のタイムを持っており、秋シーズンで「27分台」を目指すという。そして箱根駅伝の快走につなげるつもりだ。
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