
〈願いはもちろん今年もみんなが健康に過ごせますようにとお願いしました〉
小学6年生のとき、初詣で願ったことをこう綴った少年は四半世紀の後“死への案内人”へと変貌した。
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空き家の敷地内で変わり果てた姿で発見山形県警は5月13日、未成年者誘拐の疑いで岸波弘樹容疑者(36)を逮捕した。
「岸波は昨年6月頃から山形県内に住む女子高生とSNSのメッセージを使ってやり取りし、同年9月2日に山形市内で合流。車で連れ回したと見られています」(社会部記者)
昨年9月23日、女子高生は上(かみの)山(やま)市の山間部にある空き家の敷地内で変わり果てた姿で発見された。
空き家の所有者で第一発見者の男性が話す。
「草刈りをするため車で現場に行くと見知らぬテントが張られていた。クラクションを鳴らしても誰も出てこない。中を覗くと物凄い異臭がした。遺体のあった場所には今も草が生えてこないんです」
テントの側には使用済みの練炭が残され、遺体はすでに白骨化していたという。
SNSで自殺志願者を探し出し、自殺をお膳立て逮捕された岸波には複数の余罪がある。
「最初の容疑は昨年5月から6月にかけての20代男性と10代男性に対しての嘱託殺人未遂と自殺幇助。同年7月には10代女性への未成年者誘拐と自殺幇助未遂などの疑い、今年1月には20代女性への自殺幇助の疑い。今回を含め、計4回の逮捕歴があり、少なくとも4人の死に関わったものと見られています」(前出・記者)
SNS上で自殺志願者を探し出し、「一緒に自殺しませんか?」と誘うのが岸波の常套手段だった。
「自殺のお膳立てをして結局自分は死なず、被害者のキャッシュカードで現金を引き出したり、わいせつな行為にも及んでいた」(同前)
思い起こされるのは17年に発覚した「座間市9人殺害事件」だ。白石隆浩死刑囚はSNS上で「首吊り士」を名乗り、自殺願望のあった男女を毒牙にかけた。
ITジャーナリストの三上洋氏が語る。
「昔は自殺志願者が集うサイトがあったが座間事件以降、そうした人々はXに集まるようになっている。自殺は『432』と隠語でやり取りされており、検閲を免れている。プラットフォーマー側が思い留まらせる動画を流すなど積極的に防止策を講じる必要がある」
中学の同級生「誰とでも仲良く遊んで…」「弘樹君は祖父母とお母さんと住んでおり、お兄さんがいた。おじいさんはリタイアした後も近くの寺の手入れをするなど立派な人。お兄さんは葬儀会社に勤めていたようで数年前に『なにかあったらウチで』とチラシを持ってきた。お父さんの話は聞いたことがない」(近隣住民)
保育園卒園の際に作られた文集に、担任の保育士はこんな文章を寄せている。
〈おとうばんのしごとや、片付けなどをさいごまできちんとやるまじめさは、おじいさんゆずりかな? けっして、でしゃばらないけどみんな弘樹くんをたよりにしていましたね〉
中学の同級生が話す。
「色白で目が大きくて可愛らしい子でした。家庭環境は複雑だったようですが、誰とでも仲良く遊んでコミュニケーション能力が高かったです。部活はテニス部に所属していました」
パチスロなどギャンブルをしていた実家から程近い高校に進学した。しかし、同級生の間でも近況を知る者は少ない。
「地元には残っていたようですが、就職先などを知っている人はいない。同窓会でも姿を見かけなかった」(同前)
別の同級生はこう話す。
「彼はパチスロなどギャンブルをしており、福島市内のパチンコ店で働いていた時期があると聞いたことがあります」(同店責任者は「勤務していたかはお答えを差し控えます」と回答)
実家に住む岸波の祖母に話しかけたが、「失礼します」と多くを語らなかった。
警察はこのほかにも余罪があるものと見て、岸波の犯行の全容を慎重に捜査している。
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【厚生労働省のサイトで紹介している主な悩み相談窓口】
▼いのちの電話 0570-783-556(午前10時~午後10時)、0120-783-556(午後4時~同9時、毎月10日は午前8時~翌日午前8時)
▼こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556(対応の曜日・時間は都道府県により異なる)
▼よりそいホットライン 0120-279-338(24時間対応) 岩手、宮城、福島各県からは0120-279-226(24時間対応)

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